この季節になると、あちこちで菊を見かけるようになり、
そのたびに思うのは、菊作りに丹精していた父のこと。
父は倒れるまで、年がら年中庭で土や菊をいじり、
顔はいつも真っ黒に日焼けして、
ごつごつした手はどれだけ洗っても、いつも爪先には土。
そして誰よりも立派な、菊を咲かせていました。

写真のような、懸崖(けんがい)仕立ての小菊や
顔よりも大きな、見事な大輪の菊、
1本の菊を五重塔に仕立てたものなどを丹精しては、
何度も展示会で金賞を取ったと聞きました。
そしてその菊を、町役場などに寄付していたと。
その頃のわたしは、菊にはあまり興味がなく、
「ふうん、良かったね」と答える程度だったけど。
父が菊を作れなくなった今更になって、
父の菊が無性に見たくてたまらない。
どれだけ見たくても、どこを探しても
父の菊はもう、どこにもない。
どうしてもっと、父が元気なうちに、
誇らしげに、受賞の報告をしてきた時に、
飛んで帰って、見ておかなかったんだろう。
もっとたくさん、写真に撮っておかなかったんだろう。
父の手が、こんなに白く、柔らかになってしまう前に。
そのたびに思うのは、菊作りに丹精していた父のこと。
父は倒れるまで、年がら年中庭で土や菊をいじり、
顔はいつも真っ黒に日焼けして、
ごつごつした手はどれだけ洗っても、いつも爪先には土。
そして誰よりも立派な、菊を咲かせていました。

写真のような、懸崖(けんがい)仕立ての小菊や
顔よりも大きな、見事な大輪の菊、
1本の菊を五重塔に仕立てたものなどを丹精しては、
何度も展示会で金賞を取ったと聞きました。
そしてその菊を、町役場などに寄付していたと。
その頃のわたしは、菊にはあまり興味がなく、
「ふうん、良かったね」と答える程度だったけど。
父が菊を作れなくなった今更になって、
父の菊が無性に見たくてたまらない。
どれだけ見たくても、どこを探しても
父の菊はもう、どこにもない。
どうしてもっと、父が元気なうちに、
誇らしげに、受賞の報告をしてきた時に、
飛んで帰って、見ておかなかったんだろう。
もっとたくさん、写真に撮っておかなかったんだろう。
父の手が、こんなに白く、柔らかになってしまう前に。