夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『八犬伝』

2024年11月06日 | 映画(は行)
『八犬伝』
監督:曽利文彦
出演:役所広司,内野聖陽,土屋太鳳,渡邊圭祐,鈴木仁,板垣李光人,水上恒司,松岡広大,
   佳久創,藤岡真威人,上杉柊平,河合優実,栗山千明,小木茂光,丸山智己,真飛聖,
   忍成修吾,塩野瑛久,神尾佑,磯村勇斗,大貫勇輔,立川談春,黒木華,寺島しのぶ他
 
イオンシネマ茨木にて、前述の『トラップ』の後に。
 
原作は言わなくてもわかる、滝沢馬琴の古典『南総里見八犬伝』を下敷きにした山田風太郎の同名伝記小説。
監督は『ピンポン』(2002)が懐かしい、“鋼の錬金術師”シリーズの曽利文彦。
 
人気作家・滝沢(曲亭)馬琴(役所広司)は、『八犬伝』の物語を書こうとしている。
それは、里見家の呪いを解くため、8つの珠に引き寄せられた8人の剣士たちが戦いに挑む物語。
友人の浮世絵師・葛飾北斎(内野聖陽)に取っかかりを話して聴かせると、その面白さに驚く。
挿画を北斎に頼みたいのに、北斎はその場で描いた絵を破いてしまい、絵は若い者に任せよと言う。
北斎は決して絵をくれはしないが、彼の絵をひとたび見ればイマジネーションが湧き、馬琴の筆が進む。
 
長期連載が始まり、次に行く前に必ず北斎に話してみせる馬琴。
『八犬伝』は巷で大人気となるが、馬琴の目に異変が起き、徐々に見えなくなる。
医者になった自慢の息子・鎮五郎(磯村勇斗)も体調を崩し、馬琴の代筆も叶わず。
続いて妻・お百(寺島しのぶ)までもが病に伏してしまう。
 
『八犬伝』の完成は無理かと思われたとき、娘(嫡子の嫁)・お路(黒木華)が自分に書かせてほしいと言い出す。
しかしお路は無学。文字など書けるはずもなく……。
 
本作は上記の「現実」の場面と、馬琴が描く「虚構」の場面の2本立てで進行します。
 
8人の剣士を演じるのは、渡邊圭祐鈴木仁板垣李光人水上恒司松岡広大、佳久創、藤岡真威人、上杉柊平
里見家を呪う玉梓役が栗山千明。呪いを解くための珠を授ける伏姫役が土屋太鳳
ヒロイン的な役目の浜路を河合優実が演じています。
馬琴と北斎が芝居を観に行けば、そこには中村獅童尾上右近が舞台にいて。
その芝居を書いた劇作家・鶴屋南北を演じるのは立川談春。渡辺崋山役の大貫勇輔がよかった。
 
考えてみれば玉梓も気の毒ですよねぇ。
一旦首を斬られかけて、やっぱり斬るのやめとくわと言われて、結局斬られるって。
優柔不断な男のせいで死に至ったら、恨まずにはいられないでしょう。
 
なかなかダイナミックで、時代劇が苦手でも楽しめそうな時代劇エンターテインメントでした。
ちょっと風呂敷を広げ過ぎな感があるのは否めないけれど、キャストを楽しめばいいと思います。
 
『八犬伝』と聞くと、反射的に昔NHKで放送されていた『新八犬伝』の曲を歌ってしまう。
「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌 いざとなったら玉を出せ 力のあふれる不思議な玉を」、ヤーッ♪

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『ヴェノム:ザ・ラストダンス』

2024年11月05日 | 映画(は行)
『ヴェノム:ザ・ラストダンス』(原題:Venom: The Last Dance)
監督:ケリー・マーセル
出演:トム・ハーディ,キウェテル・イジョフォー,ジュノー・テンプル,リス・エヴァンス,
   アラナ・ユーバック,ペギー・ルー,スティーヴン・グレアム,アンディ・サーキス他
 
先月末の先行上映期間中、休日出勤帰りにレイトショーにてIMAX版を鑑賞。
 
第1弾の『ヴェノム』(2018)、第2弾の『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2021)、どちらも面白く観ました。
この間、トム・ハーディってエディ・ブロック役以外に出演した作品ってあったっけと頭をひねる。
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021)にもエディとしての出演でしたしね。
と思って調べてみたら、『ザ・バイクライダーズ』(2023)という作品があるようですが、公開は今月末らしい。
あ、そういえば『カポネ』(2020)に出ていましたね。
でもアル・カポネよりも断然エディ・ブロックのイメージが強くて。
『チャイルド44 森に消えた子供たち』(2014)の頃はもっといろんな役を演じていたと思うのですけれど。
今は首の太いガニ股の彼しか思い浮かばない(笑)。
 
さて、本作を観る人は皆さんご存じかと思いますが、
トム・ハーディ演じるエディ・ブロックは、何の因果か地球外生命体“シンビオート”に寄生されます。
ヴェノムと名乗るそれはいたって凶暴で、人間の脳味噌を喰らう生き物。
宿主の意思に関係なく自分が出たいタイミングでヴェノムは登場するから、
エディはコントロールできずに大変な事態が生じます。
 
おかげでニューヨーク市警のマリガンが事件に巻き込まれて死亡。
エディは警官殺しとして追われる一方、シンビオートの中でヴェノムだけが有する能力があるらしく、
シンビオートの創造主“ヌル”が手下を使ってヴェノムを捕らえようとします。
 
ほとんどの時間が逃げるエディとヴェノムに費やされるわけですが、映画ネタがいっぱい。
『テルマ&ルイーズ』(1991)だったり、『レインマン』(1988)だったり、
「俺はトム・クルーズか」てな台詞にはヴェノムが「トム・クルーズなら泣き叫ばない」と応じたり。
また、馬に取り憑いたヴェノムに引きずられるようにエディが走らさせるシーンでは
クイーン“Don't Stop Me Now”がかかってものすごく可笑しい。
 
エイリアンを一目見たい一家の主をリス・エヴァンスが演じていたり、
ペギー・ルー演じる行きつけのコンビニのおばちゃんチェンが富豪になっていたり、
エディとヴェノムの捕獲に躍起になる軍人役をキウェテル・イジョフォーが演じていたりと、キャストも楽しい。
 
こんなにもヴェノムの見た目は気持ち悪いのに、見慣れたのか愛着が湧き、
エディとの別れが近づくととても寂しく切ない気持ちになりました。
これで終わりだと思っていましたけれど、寝そうになるほど長い長いエンドロールの後にゴ○○リ登場。
えっ、まだ続編があるんですか。

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『破墓/パミョ』

2024年10月29日 | 映画(は行)
『破墓/パミョ』(英題:Exhuma)
監督:チャン・ジェヒョン
出演:チェ・ミンシク,キム・ゴウン,ユ・ヘジン,イ・ドヒョン,キム・ジェチョル,キム・ソニョン,キム・ジアン他
 
シアタス心斎橋にて。
 
2024年公開の韓国映画の中でトップの興行収入を記録したばかりか、
韓国映画史上でも6番目に高い興行収入という大ヒット作品。
英語タイトルの“Exhuma”は「接続する」の意なのだそうです。
チェ・ミンシクユ・ヘジンが出演しているというだけでもう面白そう。
 
巫堂(=シャーマン)のファリム(キム・ゴウン)は、裕福な韓国系アメリカ人の一家から依頼を受ける。
生まれたばかりの赤ん坊が一時も泣き止まなくて医者もお手上げのため、見てほしいと言われる。
依頼主の話では、代々男たちが謎の病に悩まされ不幸に見舞われているらしい。
 
ファリムが弟子のボンギル(イ・ドヒョン)と共に調べ、原因が先祖のだということを突き止める。
カネになりそうな話だが、シャーマンの力だけではどうすることもできず、
たびたび一緒に金儲けをしてきた地官(=風水師)のサンドクと葬儀師のヨングンに声をかける。
 
依頼主の案内で問題の墓を訪れると、山頂の眺めの良いところにただひとつの墓。
大金持ちの割には質素すぎるし、墓には名前すら入っていない。
丹念に墓を見たサンドクは険しい顔をしてこの依頼は受けられないと言う。
娘の結婚式で金が入用なサンドクをファリムとヨングンが説得し、なんとか受けることに。
 
おそらくとても邪悪なものがこの墓には居る。
墓からを取り出すと同時にお祓いをおこない、棺はすぐに運んで火葬すると決める。
本来は棺を開けて丁寧に供養するところ、依頼主は開棺を禁じるのだが……。
 
凄く面白かったのですが、何が起きてこうなったのかを私は一度では理解しきれていません。
何が誰に取り憑いて、何が怨霊をここに縛り付け、誰から守っているのか。
歴然としているのは、日本の「鬼」がいかに怖いものかということ。
あまたの霊を祓う韓国のシャーマンでも日本の鬼だけは祓えない。
日本の鬼には近づくだけで殺されてしまうそうです。
 
ちゃんと理解するためにもう一度観たいけれど、やっぱり怖いなぁ。
と言いつつも観に行ってしまいそうな。
 
私の「ホラーは苦手」はいったいどこへ!?

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『ハヌ・マン』

2024年10月21日 | 映画(は行)
『ハヌ・マン』(原題:Hanu-Man)
監督:プラシャーント・ヴァルマ
出演:テージャ・サッジャー,アムリタ・アイヤル,ヴァララクシュミ・サラトクマール,
   ラジ・ディーパク・シェッティー,ヴィナイ・ラーイ,ヴェンネラ・キショール他
声の出演:ラヴィ・テージャ
 
前日になんばパークスシネマで『花嫁はどこへ?』を観たばかりなので、
期せずしてボリウッドの連チャンになりました。
 
本作は今年1月に本国インドで封切りとなり、大ヒットを飛ばしたテルグ語作品とのこと。
主演のテージャ・サッジャーはなかなかのイケメンだけど聞いたことないと思っていたら、
本作のヒットによってインド全土にその名前を知られた俳優なのだそうです。
 
多神教のヒンドゥー教の中にあって三大神と言われるのはシヴァとブラフマーとヴィシュヌ。
そのうちシヴァ(破壊神)の化身と称されているのがハヌマーンであり、
古代インドの叙事詩“ラーマーヤナ”で活躍する猿の将軍でもあります。
 
冒頭に登場するのは“スパイダーマン”になることを夢見る少年マイケル。
自分はスーパーヒーローになれると信じて疑わないマイケルは、空を飛ぼうとして当然失敗、骨折。
父親は激怒し、優しい母親からも人間にはそんな能力は備わっていないと諭される。
スーパーヒーローになるには親が邪魔。マイケルは家に火をつけて両親を殺す。
 
数十年後、マイケルは世間の悪を叩く謎のダークヒーローとして跳躍していた。
銀行強盗現場にどこからともなく現れては犯人たちを容赦なくぶっ殺してその場を去る。
いささか行き過ぎとも思える行いだが、すっかり世間の人気者に。
少年時代に助けたいじめられっ子シリが科学者となり、マイケルの装具と武器を開発している。
 
場面は変わって南インド、バスさえ来ない山奥の村。
昔の因習が受け継がれ、最も力を持つ者が「殿様」と呼ばれ、殿様に逆らうことは許されない。
なくならない上納システムに異議を唱える女性ミナクシが傷つけられそうになり、
彼女に想いを寄せる青年ハヌマントゥは腕に覚えもないのに敵に襲撃をかける。
 
ミナクシはなんとか逃げおおせたものの、ハヌマントゥは大怪我をして崖から転落。
しかし海の中でハヌマーンの血から生まれたとされる輝石に触れ、不思議な力を宿す。
 
その輝石を太陽の光にかざせば、あり得ないほどの力を得ると知ったハヌマントゥ。
殿様とその一味に戦いを挑んで圧勝。
今度はハヌマントゥが殿様になるはずが、この村に殿様など要らぬ、
選挙で正しい指導者を選ぼうと言う彼に村人たちは拍手喝采を送る。
 
一方、スーパーヒーローになるための力を求めるマイケルは、動画でハヌマントゥのことを知る。
これこそが我が求めるものだと、村の支援をすると偽ってヘリコプターでやってくるのだが……。
 
ボリウッドのご多分に漏れず、158分の長尺。
最後が少し長いかなとは思いましたが、眠くはなることはなく。
最初はマイケルが主役だと思っていたので、村に場面が変わったときには意味がわからず。
そうしたら、マイケルより可愛いハヌマントゥが主演になって嬉しい気分。
そりゃねぇ、オッサンを見るよりもイケメンを見るほうが楽しいに決まっている。
 
ハヌマントゥを親代わりとなって育ててきた姉アンジャマ役のヴァララクシュミ・サラトクマールのカッコイイこと。
椰子の実も武器になるんですね(笑)。
 
まさか158分で完結しないとは思わないじゃあないか。来年続編公開らしい。
えーっ。長い。観るけど。(T_ T)

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『花嫁はどこへ?』

2024年10月20日 | 映画(は行)
『花嫁はどこへ?』(原題:Laapataa Ladies)
監督:キラン・ラオ
出演:ニターンシー・ゴーエル,プラティバー・ランター,スパルシュ・シュリーワースタウ,チャヤ・カダム,
   サテンドラ・ソニ,ギータ・アグラワル・シャルマ,ラクナ・グプタ,バスカー・ジャハ,ラヴィ・キシャン他
 
なんばパークスシネマにて、前述の『リトル・ダンサー』の次に。
 
インドのトップスターであり、日本でも『きっと、うまくいく』(2009)が大ヒットしたアーミル・カーン
彼が脚本を発掘して、『ムンバイ・ダイアリーズ』(2010)のキラン・ラオに監督を託した作品。
アーミル・カーンが絡んでいるだけで、良い作品というのは保証されたようなもの。
 
時を同じくして結婚した2組のカップル。
一方は新郎ディーパク、新婦プール。もう一方は新郎プラディープ、新婦ジャヤ。
それぞれ親族の住む村へ帰るべく同じ列車の同じ車両に乗り合わせるが、
花嫁の衣装と背丈があまりに似すぎているうえにベールをかぶっていたものだから、
ディーパクが降りる際に手を引いたのはジャヤだった。
 
自分の夫が降りてしまったことに気づかなかったプールと、
自分の妻が連れて行かれたことに気づかなかったプラディープ。
プラディープが降りる段になると、ついてくるはずのジャヤがいない。
行方不明のジャヤを探しはじめるプラディープ。
プールもそこで初めてディーパクとはぐれたことに気づく。
 
新郎新婦の到着を待ちわびていた村では、ディーパクが連れてきた花嫁のベールを外してビックリ。
これは誰!? プールじゃないよ。いったいプールはどこへ行ったの!?
ディーパクは慌てて友人たちと共に警察に届け出に向かうのだが……。
 
約20年前という設定で、女に学歴など必要なし、男に従っていればいいという時代。
インド映画を観ているとままあることで、今はどのくらい意識が変わっているのかわかりません。
 
ディーパクとプラディープ、その親族も同様の考えの持ち主ではあるけれど、
前者は妻のことをこよなく愛し、大切にしようと思っているのに対し、
後者は妻の持参した財さえあればあとはどうでも良いというとんでもない奴。
その親も親で、嫁を人として扱う気はありません。
 
最初のうちは、ディーパクに誤って連れて来られたジャヤの行動が怪しすぎて信用できません。
プラディープがモラハラDV夫であることは間違いない。だけど、ジャヤの企みはなんなのか。
それがわからないからこそ、わかったときの爽快感。
 
また、ジャヤと対照的に、女はこうあるべきものと思い込みそれを幸せに思っていたプールが、
世話になる屋台で自立していく姿がとてもいい。
女は夫の名前を呼ぶことが許されないなんて驚きですが、みんな当たり前に思っているのですね。
 
悪徳警官だと思っていたら、すっかり彼にオイシイところを持って行かれて泣きそうに。
アーミル・カーンの目に狂いなし。みんな観て観て!

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