『ストップモーション』(原題:Stopmotion)
監督:ロバート・モーガン
出演:アシュリン・フランチオージ,ケイリン・スプリンゴール,セリカ・ウィルソン=リード,ステラ・ゴネット,トム・ヨーク他
十三の第七藝術劇場へサポート会員の更新に寄った折、何も観ないで帰るのももったいない。
ちょうど都合の良い時間に上映があった本作に即決。満席に近い客の入りで驚く。
実写とストップモーションアニメの融合で描かれたサイコホラーで、これが長編デビューとなるロバート・モーガン監督はイギリス出身。
またひとり、変な監督が出てきました。この客入りも納得のキワモノ。
エラは、ストップモーションアニメ界のレジェンドと呼ばれる女流監督スザンヌの娘。
関節炎で手が上手く動かなくなった母親に代わり、彼女の新作の制作をエラが手伝っている。
エラのことを「私のパペット」と呼び、本当に操り人形のごとく動かそうとするスザンヌ。
彼女の思い通りにエラが造作できなければ罵声を浴びせ、エラのストレスは増すばかり。
そんなあるとき、スザンヌが倒れて昏睡状態に。
母親を憎む気持ちさえ生まれていたエラだが、最期の作品を完成させる義務が自分にはあると考える。
実家で作業を進めようとすると母親の影がちらついて落ち着かず、恋人のトムが管理する部屋を借りることに。
いずれ解体される予定のためにほぼ誰も住人のいない建物の一室で、スタジオとして利用するにはもってこい。
必要な道具をすべて運び込んでストップモーションアニメを完成させようとしたものの、物語をどう進めるべきかわからない。
困惑するエラの前に現れたのは、同じ建物の住人とおぼしき少女で……。
母親の操り人形でいることがあんなにも嫌で、自分にだって映画を撮れると思っていたのに、
いざその母親がいなくなってみると何も進められず、自分にはアイデアというものがなかったのだと思い知らされます。
造作には長けていても、誰かの指示がなければ動けないエラ。
突如として現れた少女は奔放そのもので、エラが作った人形を雑に持ち上げるし、
ずっとチューチュー吸っているパックジュースを飲み干すとそこらにポイッ。
不愉快にさせられてばかりなのに、少女の頭の中は創造性に満ちていて、次々と物語の続きが出てきます。
少女の話を聴かなければ制作がはかどらないから、ついつい少女を招き入れてしまう。
「普通」に造作するエラに対して少女は駄目出し。
死体処理に使うロウを用いるように言われてその通りにすると、今度はそれにも駄目出し。
冷蔵庫の傷みかけた生肉を使えと言い、さらには狐の死骸を使うように言い出します。
森で拾った動物の死体なんてすぐに虫が湧くでしょうけど、そこはファンタジーゆえそうはならないのが救い。
だけど描写がなくても虫がたかるシーンを想像してしまうし、死臭まで漂ってきそうでゲーッ。
少女が現実にいるのかどうかすらわかりません。たぶんいない。
そしてあの少女は、母親の言いなりになることなくアイデアを溢れ持ちたかったエラ自身なのかなとも思う。
どんどん正気を失い、自分の造作物の幻影を見たり、リアリティを求めて自らの体を傷つけたり。
凄まじくグロくなっていくから、もともとはこういうのが苦手な私は直視できず。
でも面白かったと言わざるを得ません。ポスターに描かれているのはこのシーンでしたか。
全然気づかなかったのですが、主演のアシュリン・フランチオージって、
『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』(2024)でキアラを演じていた女優なのですね。
嫌なものを観ちゃったなぁ。面白いのが困る。