夜な夜なシネマ

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『ONODA 一万夜を越えて』

2021年10月23日 | 映画(あ行)
『ONODA 一万夜を越えて』(原題:Onoda)
監督:アルチュール・アラリ
出演:遠藤雄弥,津田寛治,仲野太賀,松浦祐也,千葉哲也,カトウシンスケ,井之脇海,
   足立智充,吉岡睦雄,嶋田久作,伊島空,森岡龍,諏訪敦彦,イッセー尾形他
 
10月の3週目は一度も劇場へ足を運びませんでした。
職場あるいは家から近い劇場では観たい作品の上映がなく、
観たかった本作は梅田か西宮まで行かねばならず。
で、3週目は毎日直帰してプロ野球中継を観るのに専念し、
休日にTOHOシネマズ西宮にて3本ハシゴ、1本目に本作を鑑賞しました。
 
横井庄一さんと小野田寛郎さん。
どちらも戦争が終わったことを知らずに赴任地で何十年も潜伏生活を送っていた人。
横井さんはアメリカ領グアム島に、小野田さんはフィリピンのルバング島に、
ふたりとも30年近くいましたが、小野田さんのほうがちょっと長い。
 
そんなに長く終戦を知らずにいるなんて、頭おかしいんじゃないの。
正直なところ、本作を観るまでそう思っていました。ごめんなさい。
 
太平洋戦争末期の1944(昭和19)年。
陸軍中野学校二俣分校で遊撃戦の特殊訓練を受けていた小野田寛郎。
フィリピンのルバング島に赴任した小野田は部下を率いて情報を収集。
ひとり、またひとりと部下が何らかの形で命を落としてゆくなか、
上官から「降伏も玉砕も絶対にするな」と命じられていた小野田は、潜伏生活を続けるのだが……。
 
仲野太賀演じる青年が島でキャンプしようとしているシーンから始まります。
予備知識なしに観に行ったものだから、彼が若かりし頃の小野田さんかと思いました。
するとどうも様子が違う。仲野太賀はこのあと終盤まで登場しません。
小野田さんは実際にこのように、青年・鈴木紀夫さんによって発見されたのですね。
 
鈴木さんについては鑑賞後に調べました。
作品中の台詞にあったように、バックパッカーだった彼はこの時点で世界50カ国を周り、
「野生のパンダ、小野田さん、雪男」の順に探し歩いていたのだとか。
 
監督はフランス出身のアルチュール・アラリ。
日本人キャストにこだわったそうな。
そのおかげで、妙な日本語イントネーションの「日本人風」俳優はいない。
小野田と共に過ごす3人、演じる役者がみんな芸達者。
 
青年期の小野田を演じるのは遠藤雄弥。成年期は津田寛治
小野田さんが鈴木青年に発見されたのは1974(昭和49)年ですが、
その2年前まで小野田と共に潜伏生活を送っていた部下の小塚金七役は、
青年期を松浦祐也、成年期を千葉哲也が演じています。
 
小塚としょっちゅう喧嘩していた島田庄一にカトウシンスケ。
島田は潜伏を始めて約10年後に銃撃を受けて亡くなっています。
最も若い赤津勇一に最近非常によく見かける井之脇海
20歳になるかどうかという年齢でこんな日々を送っていたとは。
彼は潜伏生活5年目の頃に隊を離れ、終戦を知ったようです。
 
また、小野田が忠誠を誓った上官・谷口役にイッセー尾形
谷口から降伏するな、玉砕も許さない、何年経とうがそこにいろ、
必ず迎えに行くからと言われてひたすらそれを守った小野田。
上官の命令がこれほどのものだったと思うとやるせない。
 
潜伏生活がこれだけ長いのに、そのわりには小野田も小塚も綺麗なんです。
そこだけはものすごくフィクションだなとは思いますが、
もしもゲッソリ薄汚く描かれていたら、見ていられなかったかもしれません。
 
小野田さんは日本に帰国して2014(平成26)年までご存命でした。
長寿だったのは私たちの救いに思えます。
幸せでしたか。やっぱり訊いてみたい。

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