幾人かのミュージシャン(結構いるな)の新譜がとても気になります。
コンテンポラリーなジャズ・ピアノに革新を続けるブラッド・メルドーはその一人で、ジョン・ブライオンとのコラボレーションによる、全曲オリジナルの作品がでました。室内管弦楽団をバックにジョシュア・レッドマンがラインを作るという注目作です。
アルバムはゆったりとした感じで始り、即興のソロの連続というよりは、良くアレンジされた連作のようです。
2曲目、いかにもメルドーの曲という感じで、振り返る昨日があり、足元を見つめる今日があり、まだ開かれない明日があるというような演奏で、曲名はすべてメルドーのホームページに書かれている散文詩の一節になっています。
アルバムに人生を全て映すことは不可能でしょうが、そんなちょっと辛気臭さとHightway Riderというアメリカらしさの兼ね合いがこのアルバムではないでしょうか。
JAZZとして聴くより、POPの流れとして聴いていると凄くいいねというような聞き方です。
4曲目“Highway Rider ”ちょっと沈んだピアノが美しく、とてもジャズ的な演奏、トリオはメルドートリオでしっかりした人たちが、このようなことをするととても美しい形の演奏になるのです。
ジョン・ブライオンとのコラボは2002年の「ラルゴ」に引き続いてですが、この年月で歩いたメルドーの距離を感じて、私はこちらの方がずっとあっています。
このアルバムを聴いていて思い出したのが、フランク・シナトラがPOPSのBOB GAUDIOとJAKE HOLMESの曲を歌った「Watertown」というアルバムです。こちらもアメリカのホーム・タウンでの人生を歌ったトータルアルバム、町を出て行くもの、そして帰る所あることを、アメリカ人は強く意識するようです。
メルドーの2枚組み2枚目は演奏がジャズ感まして、3曲目ジョシュアが吟遊詩人みたいにメロディを綴ります。4曲目はバラードのドラミングに、目を見張ります。
でもこのアルバムの狙いは細かいテクニックではないですよね。
思い浮かんだシナトラのアルバム「ウォーター・タウン」のジャケットはこのようなものです。
このタウンから人生をはじめて又帰ってくるのです。
LPのジャケットにはこんな写真があり、まるでダイアリーなのです。
メルドーのアルバムからは離れてしまいましたが、帰ることが出きるホーム・タウンを持っているのですね。
Highway Rider / Brad Mehldau
Brad Mehldau(P,Pump Organ,Syn,Orchestral Bells)
Joshua Redman(Ts,Ss)Disc One2,5,7 Disc Two1,2,3,5,8
Larry Grenadier(B)
Jeff Ballard(Ds,Per)Disc One1,2,5 Disc Two1,2,4,6,8
Matt Chamberlain(Ds,Per)Disc One2,3,4 Disc Two1,2,3,8
Orchestra(Dan Coleman,Conductor )
Rec. February 16-28, May 12-19, 2009, CA (Nonesuch 518655)
Disc 1
1 John Boy
2 Don't Be Sad
3 At the Tollbooth
4 Highway Rider
5 The Falcon Will Fly Again
6 Now You Must Climb Alone
Disc 2
7 Walking the Peak
8 We'll Cross the River Together
9 Capriccio
10 Sky Turning Grey (For Elliott Smith)
11 Into the City
12 Old West
13 Come with Me
14 Always Departing
15 Always Returning