アラン・パスクァに詳しい人から、このアルバムのことを聞いて実はアメリカで売っていないか期待して行ってきたけど、日本のショップで買いました。
最近メンデューサのアルバムで演奏しているパスクァを聞いた時も、いつもパスクァだとわかる音、そしてフレーズでした。
今度は小さい頃から敬慕した、ビル・エバンスの捧げるソロ・アルバムです。
全部で11曲、マイルスのNardis以外にスウェーデンのトラッド1曲とオリジナル1曲、他8曲がなじみの大小があってもB・エバンスの曲になります。
パスクァのみずみずしい感性は、いつまで経っても青年のようだと感じているので、その調子で聞き始めました。パスクァの「Solo」というアルバムが大好きなので、その感じに浸ればいいやとおもっていましたが、ちょっと感じが違う、いままでにないことないので戸惑います。
最初に車で聞いたのですが、ピアノの音が普段と違う感じ、エレピで弾いているような感じで、硬質なところもあります。
パスクァには基本的に全幅の信頼を寄せているので、私の耳がおかしいのか、納得しないといけません。
ですからblogは一日休んで、まずは音から考えます。
パスクァのアコーステックな手元にあるアルバム、1994年の「Milagro」から2010年の「Standerds2」までのアルバム9枚と、この「Twin Bill」を比較します。
最初の2枚は別にして、「Live at Rocco」から「Standerds2」まで、大学のコンサートライブを除いた5枚でミキシングとマスタリングしているのがほぼRich Breenという人、これらのアルバムでパスクァの音に親しんできたのでした。このRich Breenという人は、ついこの前聞いた、ヘイデンの「Rambling Boy」もメンデューサの「Night On Earth」もてがけているエンジニアで凄い実力者です。
今度のアルバムではMixedをパスクァ、マスタリングはDan Garciaという人でそこが変わっています。
その為だろうかと家で少しはましなスピーカーで聞いてみました。確かにタッチも、ハーモニーも違っています。そして聞いているうちに、これらの変化がとても意図的だったと解ってきたのです。ミキシングもマスタリングもはたまたピアノのタッチも変えてそれが今度のアルバムでした。
ビル・エバンスを皆さんはどのように聞かれるのでしょう。お酒をのみながら聞き流すようなスタイリシュな感じでもきけますが、エバンスの張り詰めたソロ・パフーマンスもあるのです。
このアルバムの高音域で弾かれるちょっと硬質な音を聞くと、エバンスのそんな姿が思い浮かびます。
高音でのエバンスのタッチの硬質さと緊張感、パスクァがピアノをオーバーダブしながら、エバンスと対峙するのです。
2曲目、美しい"Nardis”を、もっと美しい“Nardis”へ、エバンスの部分を聞きながらパスクァを聞くというTwin Bill(ダブル・ヘッダー)を経験するのです。
こうやって、最初戸惑った始まりは、パスクァが考えたことを想像しながら、私の中に定着して行きました。
安定したハーモニーの上に強いタッチでメロディを弾く3曲目“Time Remembered”もエバンスを感じながら、パスクァの存在が解り始めたのです。
後はこの二人が、一人はエバンスのタッチやフレーズ思いながら弾くピアノ、もう一人はそれをバックアップする隠れたピアノ、この妙を楽しむことになりました。
そうなってくると、パスクァを聞くということも、エバンスを意識するということも気にならなくなり、曲の流れがとても心地よくなります。
4曲目のおなじみ“Gloria's Step”やちょっとハードに始まる“Funkallero”など、エバンスが生きていたらなんて事までは言いませんが、妖精エバンスがいたら聴いてほしい。
そうやって7曲目が“Take Me Out To The Ballgame”野球ひっかけてありますが、パスクァはそうとう野球がすきなんでしょうね。ジャケはいかにも野球好き、バットのモデルまでこだわっています。
最後の2曲はこのアルバムのタッチは変えずに、でもパスクァらしい演奏、10曲目がスウェーデンのトラッド、とても慈しむように弾くのにはもちろん訳があって、アルバム「Solo」の少し前から寄り添うオクサンはこの地の人、とてもパスクァの人柄が出てくるのです。
エバンスと野球とそれにオクサン、大切なものにこだわったのですね。
そして最後にオリジナル、音質はそのまま、でもここにパスクァのいつもの歌があって、それは当然こちらに響いてきて、パスクァ今度はこうしたんだと、フッとため息がでる時を作ってくれました。
パスクァ、やっぱりいつまでも若々しいです。
TWIN BILL / ALAN PASQUA
Alan Pasqua piano
1. Very Early
2. Nardis
3. Time Remembered
4. Gloria's Step
5. Turn Out the Stars
6. Funkallero
7. Take Me Out To The Ballgame
8. Interplay
9. Walkin' Up
10. Vindarna Sucka Uti Skogarna
11. Grace See