ネルシン・デミルには彼の最初の作品「誓約」で大ファンになりましたが、その作品は1989年のものでした。
そのあと、「チャーム・スクール」とか「将軍の娘」「スペンサー・ヴィル」とか大好きでした。
でも「王者のゲーム」以後どうも面白くなくなって、(私にとって)いました。
文庫で「ゲートハウス」というのが出ることを知って図書館に予約しましたが、本屋さんでみるとなんと上下2巻706ページと692ページ、そんなのがいっぺんに借りられても期間内に読めるわけがありません。
そして帯を見てみると、これが1990年の作品「ゴールド・コースト」の続編のようです。
読みきれるか解りませんのでまずは上巻だけでも読んでおこうと、買いました。
前作「ゴールドコースト」はもちろん読んでいますが、ほとんど忘れています。今度の本では、その流れを回想しながら進みます。
その前作「ゴールド・コースト」ですが、大雑把にいえば、主人公弁護士ジョン・サッターと上流階級出の妻スーザン住むの屋敷の隣に、ニューヨークのイタリア・マフィアのドンが越してきます。この男フランク・ベラローサは二人を魅了していき、やがて二人をとりこにし、妻スーザンと愛しあう仲になるのです。
ジョンとの友情と命を助けたものへの掟からの行為でドンは主人公の妻スーザンに射殺されることとなり、話は終わります。
大体そんなことでしたが、ほとんどわすれていて、読み始めたものですから、どうも落ち着かない。
どのようにオクサンが愛人ドンを殺したのか、どうしてオクサンがドンと関係を持つようになったのか、殺すところもきになるので、途中前作も少しは確認したい。
持っていた文庫がどこにいったかわかりませんのが、図書館にハードカバーがあったので借りてきました。
一人称で書いてあるので、いつどのようにドンとの関係が始まったかなどの描写はありませんが、妻スーザンがドンを射殺したところと、オクサンのあの場面を拾い読みして今度のゲートハウスに戻ります。もうとまらなくなって下巻も買うことになりました。
今度の作品はゴールドコーストの事件で離婚したジョンが10年ぶりにその地に戻ることから始まります。
妻を愛することに変わらない主人公と、夫も愛していたスーザン(ドンも愛していた)の関係、ドンの息子の復讐と話は進むのですが、ここは新しい作品なので書けません。
上巻を読み終わってたらもうとまらなくなって下巻も買いました。
下巻になるとテンポがアップして一気に読み終わりました。
「ゴールド・コースト」が上田公子氏の翻訳で、一人称の語り口がユーモアたっぷりに翻訳されていましたが、今回白石朗氏がこの訳の感じを正確にうけついで何の違和感もなく驚きました。
話の内容は別にして9・11の翌年の話として、その出来事の決着としてこの本が書かれたような、9・11がなかったらこの続編は書かれなかったようなそんな気がします。
主人公2人をマンハッタンにいかせこういわせてます。
「わたしはグラウンド・ゼロの行ったことがないの」「やっぱり行っておくべきじゃない・・・・?」
「あなたがそばにいれば、安心だって気分になれるの」
それに対して元夫は「去年の9月にニューヨークに来たときは、人生で感じたことがないほどひしひしと孤独を感じて、気が滅入ってしまったよ」
10年前の殺人未遂事件でドンの命を救ったことでオクサンが殺人者になり、又離婚することになったことに対して、もし救わなかったならば、新たな今度の話の厄介ごとも、離婚も起こらなかったのではということに対し、FBI捜査官と主人公たちはこのように話します。
話の筋はふれることになりますが、ちょっと抜粋させてもらいます。
「・・・・この一件はもっとましな結末を迎えそうに思えるな」
マングーソはしばし黙っていたが、やがてわたしに ―そしてスーザンに向って―こういった。「わたしも同じことを考えていました。心の底から信じているんですよ・・・・そう、このすべてには目的があって・・・・目的のひとつは私たちに試練を与えること、わたしたちに多少の知恵を授け、なにが重要なのかをわたしたちに教え、それによってわたしたちがよりよい人間になることではないか、と」
スーザンはいった。「わたしも信じるわ。わたしたちには守護天使がいて、いつも見まもってくれているということも」