二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

虚空ははためいている 2022-17(10月15日)

2022年10月16日 | 俳句・短歌・詩集
       (2016年11月撮影)



どこにでもある雑木林の上で
虚空が脱ぎ捨てた下着かボロ雑巾のようにはためいている。
ぱたぱたとはためくあれは
あれはほんとうは何だろう?

歩きながらぼくはかんがえる。
歩くとは かんがえることに限りなく近いのだ。
なだらかな丘のほとりで雑木林の秋が窮まる。
ケヤキやイチョウが大きな身振りで

一頭の大きなけだものになって大量の葉を降らす。
まるで豪雨のように。
スズメの学校では子どもたちが騒いでいる。
あれは あれは稲穂のとりあいをしているのだろうか。

ぼくはいつも以上に冷めた目で風景を見ている。
そのぼくをあのスズメどもがもっと冷めた目で見ている。
見ることと見られることがこの太陽の下で
絶妙なバランスをたもっている不思議。

風が豪快に大笑いするたび
ケヤキやイチョウの葉が乱舞する。
ことばでなら何とでもいえるが
どれほどの美辞麗句を駆使しても

駆使してもあの大笑いにはかなわないのさ。
無力なことば。
歯がゆいけれどことばをすべて
すべて脱ぎ捨てることはできない。

さっきからモズが鳴いている。
夕方にはカラスが空をうめつくすだろう。
虚空ははためいている。
ふところにたくさんの生きものや葉っぱをかかえて。

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