二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

貧乏物語の系譜

2018年08月24日 | シャッフル/books
世には貧乏物語の系譜がある。これが本当におもしろい(^^)/ 

おもしろいといってはやや語弊があるか・・・でも興味尽きない、どん底に陥った人間の奇妙な、というか、ちょっと眼をそむけたくなるような欲望の世界。

以前は山本周五郎の「青べか物語」「季節のない街」を愛読し、つげ義春の世界に魅了された。哲学や思想など関係ない。
政治世界の喧噪も、ここまでは届かない。

そういう底辺でうごめく、“生活する人間”の暮らしぶり。ゾラの「居酒屋」もあるし、メルシエの「十八世紀パリ生活誌」もある。
人間とはこういうもの・・・なのか?
ドキュメンタリー、あるいは半ドキュメンタリーの手法が、「いびつな真珠」としての人間の核心を衝き、射落とす(=_=) 
愛しきものよ、汝の名は・・・、と読者は読みおえてつぶやくのだ。

まだパラパラとひろい読みしただけだが、あらゆるものがごった煮となって渦巻く、黒々とした大都市の悪夢・・・といっていいだろう。

J・オーウェルがこんな作品を書いていたとは知らなかった。「パリ・ロンドン放浪記」(岩波文庫)。
ドストエフスキーの「死の家の記録」は二度読んでいる。もう一度読み返すつもりで、工藤精一郎訳新潮文庫を二冊用意してある。
ドストエフスキーの文学は、シベリアの監獄から誕生したのだ。

劣悪な環境の中からあぶり出される“グロテスクなもの”としての人間。
そこには善ではなく、悪の輝きが充満している。
理想主義者がピエロに見えますぞ。
そうなのだ、悪役こそ、真の主役なのかもしれない。

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