■岩根圀和(いわね くにかず)「物語 スペインの歴史 海洋帝国の黄金時代」中公新書(2002年刊)
そもそもレコンキスタとはなにか!?
問題はそこからはじまる。
レコンキスタとはすなわち・・・
《複数のキリスト教国家によるイベリア半島の再征服活動の総称である。ウマイヤ朝による西ゴート王国の征服とそれに続くアストゥリアス王国の建国から始まり、1492年のグラナダ陥落によるナスル朝滅亡で終わる。レコンキスタはスペイン語で「再征服」(re=再び、conquista=征服すること)を意味する》(Wikipedia)のである。
つぎに目次を引用してみよう。
まえがき
1.スペイン・イスラムの誕生
2.国土回復運動
3.レパント海戦
4.捕虜となったセルバンテス
5.スペイン無敵艦隊
終章 現代のスペイン
本書「物語 スペインの歴史」を手に取ったきっかけは、アーヴィングの「アルハンブラ物語」に深い感銘をうけたことにあった。
スペインは複雑な成り立ちをもつ国である。北方ではバスクが、そして東方ではカタルーニャが独立を政治的に画策しているため、現代スペインは、いわば“内乱”の一歩手前にあるのだ。
本書では「終章 現代のスペイン」で、バスク人過激派(ETA=エタ)によるテロ事件がつぎからつぎ勃発し、多くの犠牲者を生んでいることを問題視している。
本書の内容を、BOOKデータベースより紹介しておこう。
《キリスト教国の雄スペインは、カスティーリャ、アラゴン両王国の婚姻により成立した。八世紀以来イベリア半島を支配したイスラム勢力を逐い、一四九二年、レコンキスタを完了。余勢を駆って海外へ雄飛し、広大な領土を得て「太陽の没することなき帝国」の名をほしいままにする―。国土回復戦争の時代から、オスマン・トルコとの死闘を制して絶頂をきわめ、宿敵イギリスに敗れて斜陽の途をたどるまでを流麗な筆致で描く。》
レパントの海戦と、アメリカ大陸への進出によってスペインが“黄金時代”を迎えたことはよく知られている。
レパントの海戦は1571年10月におこなわれた、イスラムの雄トルコと、キリスト教国連合(スペイン、ベネチア等)による歴史上の大海戦。
しかしこの本は歴史書というより、文学の方に近いので、鳥観図的な政治史の変遷を期待しているとはぐらかされる(-_-;)
わたし的には、おもしろかったのは、
3.レパント海戦
4.捕虜となったセルバンテス
5.スペイン無敵艦隊
・・・の3章であった。
著者・岩根圀和さんは歴史家ではないのである。その間の事情は「あとがき」を読むとよくわかる。
これらの章で中心人物となるセルバンテス(゚ω、゚) わたしは本書を、なかば歴史小説として読ませていただいた。
戦闘場面の横にでも舞い降りた人が語るかのように具体的で、緻密感がなかなかすごい!
セルバンテスがレパントの海戦に一兵士として参加し、負傷して、左手が使えなくなったことはご存じの方が多いだろう。
その後彼は、アンダルシアのエシハで、生活の資を得るため民衆の嫌われ者・徴税吏となる。岩根さんはそのあたりをじつに丁寧に、まるで見ていたように、トレースしている。
「ドン・キホーテ」を書くまで、セルバンテスがどのような人生を歩んできたか!?
イスラムの捕虜となり、4回も脱獄を試みたことは知ってはいたが、その詳細をこれほど丹念に、歴史小説的に教えてもらえるとは思いがけないことだった。
エリザベス一世とフェリペ二世の角逐についても大きな紙幅をさいておられる。
このあたりを読むだけでも、本の価値は存在する。
インドへいったときにも感じたことだが、イスラム文化は壮大華麗な、美しい華を咲かせたのである。レコンキスタなしにスペインを語ることはできないだろう。
セルバンテスはこういった歴史的な背景を見据えながら世界中で大ヒットを記録している「ドン・キホーテ」を書いたのである。ふ~~む( -ω-)
評価:☆☆☆☆
そもそもレコンキスタとはなにか!?
問題はそこからはじまる。
レコンキスタとはすなわち・・・
《複数のキリスト教国家によるイベリア半島の再征服活動の総称である。ウマイヤ朝による西ゴート王国の征服とそれに続くアストゥリアス王国の建国から始まり、1492年のグラナダ陥落によるナスル朝滅亡で終わる。レコンキスタはスペイン語で「再征服」(re=再び、conquista=征服すること)を意味する》(Wikipedia)のである。
つぎに目次を引用してみよう。
まえがき
1.スペイン・イスラムの誕生
2.国土回復運動
3.レパント海戦
4.捕虜となったセルバンテス
5.スペイン無敵艦隊
終章 現代のスペイン
本書「物語 スペインの歴史」を手に取ったきっかけは、アーヴィングの「アルハンブラ物語」に深い感銘をうけたことにあった。
スペインは複雑な成り立ちをもつ国である。北方ではバスクが、そして東方ではカタルーニャが独立を政治的に画策しているため、現代スペインは、いわば“内乱”の一歩手前にあるのだ。
本書では「終章 現代のスペイン」で、バスク人過激派(ETA=エタ)によるテロ事件がつぎからつぎ勃発し、多くの犠牲者を生んでいることを問題視している。
本書の内容を、BOOKデータベースより紹介しておこう。
《キリスト教国の雄スペインは、カスティーリャ、アラゴン両王国の婚姻により成立した。八世紀以来イベリア半島を支配したイスラム勢力を逐い、一四九二年、レコンキスタを完了。余勢を駆って海外へ雄飛し、広大な領土を得て「太陽の没することなき帝国」の名をほしいままにする―。国土回復戦争の時代から、オスマン・トルコとの死闘を制して絶頂をきわめ、宿敵イギリスに敗れて斜陽の途をたどるまでを流麗な筆致で描く。》
レパントの海戦と、アメリカ大陸への進出によってスペインが“黄金時代”を迎えたことはよく知られている。
レパントの海戦は1571年10月におこなわれた、イスラムの雄トルコと、キリスト教国連合(スペイン、ベネチア等)による歴史上の大海戦。
しかしこの本は歴史書というより、文学の方に近いので、鳥観図的な政治史の変遷を期待しているとはぐらかされる(-_-;)
わたし的には、おもしろかったのは、
3.レパント海戦
4.捕虜となったセルバンテス
5.スペイン無敵艦隊
・・・の3章であった。
著者・岩根圀和さんは歴史家ではないのである。その間の事情は「あとがき」を読むとよくわかる。
これらの章で中心人物となるセルバンテス(゚ω、゚) わたしは本書を、なかば歴史小説として読ませていただいた。
戦闘場面の横にでも舞い降りた人が語るかのように具体的で、緻密感がなかなかすごい!
セルバンテスがレパントの海戦に一兵士として参加し、負傷して、左手が使えなくなったことはご存じの方が多いだろう。
その後彼は、アンダルシアのエシハで、生活の資を得るため民衆の嫌われ者・徴税吏となる。岩根さんはそのあたりをじつに丁寧に、まるで見ていたように、トレースしている。
「ドン・キホーテ」を書くまで、セルバンテスがどのような人生を歩んできたか!?
イスラムの捕虜となり、4回も脱獄を試みたことは知ってはいたが、その詳細をこれほど丹念に、歴史小説的に教えてもらえるとは思いがけないことだった。
エリザベス一世とフェリペ二世の角逐についても大きな紙幅をさいておられる。
このあたりを読むだけでも、本の価値は存在する。
インドへいったときにも感じたことだが、イスラム文化は壮大華麗な、美しい華を咲かせたのである。レコンキスタなしにスペインを語ることはできないだろう。
セルバンテスはこういった歴史的な背景を見据えながら世界中で大ヒットを記録している「ドン・キホーテ」を書いたのである。ふ~~む( -ω-)
評価:☆☆☆☆