二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

写真を視る醍醐味 ~ロバート・キャパの二枚

2018年09月13日 | Blog & Photo
  (古書店をふらついていたら、この一冊を発見!)


ロバート・キャパの写真集は、岩波文庫版をふくめ、すでに二冊もっている。
好きなんだよな~、キャパ。
キャパならではの人間味があふれている。
被写体はほとんどが人間。

戦争とは何か、平和とは何かを考えるとき、キャパが残した写真ははずせない。
わたしの脳裏には、若いころからキャパの数枚のカットが沁みついている。
覚えているはずなのに、数年たつと、おや・・・どんな写真だっけ?
そう思ってちょっと不安になり、ふたたび見返す。
忘れてしまったディテールが気になってくるのだ。


  (1943年ロンドン)

まずこの一枚。
映画のワンシーンではありませんぞ!
アメリカ軍将校に手をつないでもらって笑顔を浮かべている3人の少女たちと、その後ろにいる犬。
水たまりがある道路、曇って白い空。やせ細った手足が、この子たちが置かれたきびしい環境を語りかけてくる。

《部隊が養子にした戦災孤児と一緒に過ごすアメリカ軍兵士》

キャプションにそう書いてある。
有名な「くずれ落ちる兵士」や「ノルマンディー上陸」と較べて、見る者を包みこむやさしさにあふれている。
このシーンはまさにキャパの目の前にあったのだ。
おそらく無意識に、屈みこんで、子どもの眼の高さで撮影しているのが秀逸。
キャパといえば戦場写真家としてNO.1の名声をいまだ誇っている。しかし、わたしが愛着を覚えずにはいられないのは、こういったシーンを数多く撮っているキャパである。

戦争、そして平和。
100の論文も、この卓越した一枚におよばない・・・ついそう思ってしまう(^^)/




  (1941年アイダホ アメリカ)

《アーネスト・ヘミングウェイとその息子グレゴリー》
キャプションに、そう書かれてある。
背景は川か、湖か?
傍らには二丁の猟銃がある。
猟のあいまに息子とくつろぐヘミングウェイの肖像が、過不足のないパースペクティヴでとらえられた。

むろん、「この場」にキャパがいたのである。

ヘミングウェイの本を手にするたび、このワンシーンが脳裏に浮かんでくる。
彼がノーベル文学賞を受賞するのは、1954年。
この一枚をじっくり眺めていると、ヘミングウェイが「ただ者」ではないことが、容易に想像できる。

ポートレイトの傑作とは、こういう写真のことをいう。

一枚目、二枚目とも、わたしのあまりあてにならない推測では50ミリレンズを使っている。
50ミリレンズがもっている、誇張のない、素直な描写力に、あらためて眼を瞠る。
ポートレイトであろうが街角スナップであろうが、背景が大事。
「その人物は、どんな背景を背負って、そこにいるのか!?」
画家のアトリエや、写真館のスタジオではない。
彼らは、なぜそこにいるのか・・・、そこにはどういう意味があるのか?

何回も見返し、見返ししながら、こんなことを想像し、考えこむ。
そこに「写真を視る」醍醐味が存在する。

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