益荒男(ますらお)とは屈強な男子を意味するが、屈託がなく明朗快活で、屁理屈や観念論を好まない点を加えたい。
クライマックスの「お走り」を終えた益荒男たちは、その勢いのまま「ふんばり桟敷」に走って戻り、いつまでも歓喜のヤッショイ!の掛け声を挙げつづける。
4年振りの「けんか祭り」で、こんな男たちの中にいる喜びに打ち震えた。浅草や博多に行くと地元民と思われることが多く、祭りに熱狂する男どもは同じ匂いを感じあうらしい。
この益荒男たちは勝とうとせず、負けまいとする。だから声援も「押上に負けんなや~!」「寺町に負けんなや~!」だ。
受け身という訳でもなく、地区の誇りと男の尊厳を守ろうとする負けん気なのだ。相手をリスペクトしているから「勝ちにいく」なんて言葉も持たない。
全力を尽くして男の尊厳を守り抜いた時、益荒男たちはヤッショイ!ヤッショイ!の掛け声を挙げて歓喜する。共に戦い抜いた仲間に「ありがとう!」と労いあう。
この「ありがとう!」には主語がなく、祖霊が我が口を借りて感謝していると実感でき、祖霊と共にあると確信する。だから祭りの前後には、自然と墓参りしたくなる。
それが中央の広場に祖霊を埋葬した環状集落に住んでいた、長者ヶ原遺跡の人々に重なる。我が愛すべき益荒男たちは現代に生きる縄文人。