オヤジの一周忌で赤い蝋燭が3本必要となり、仏具屋に買いにいったらパラフィン蝋と昔からの和ろうそくのどちらがいいか?と聞かれた。
値段はパラフィン蝋が1本330円で和ろうそくが1本1335円と4倍もするが、迷わず和ろうそくを購入。
先祖と同じ道具立てでオヤジを供養してやりたいのだ。
今時は和ろうそくの炎のゆらぎや匂いを知らない人が多いのではないだろうか。
子供のころに近所の地蔵堂で、拝み屋(祈祷師・霊能者)のオヤジさんが一心不乱に祈祷していて、禿げ頭にとまった蚊が滝のように流れる汗にからめとられツーと流れていき、その熱中ぶりに驚いたことがある。
白装束に身をつつみ、読経と連打する太鼓の響きに和ろうそくの炎のゆらぎも相まって、怪奇映画みたいに鬼気迫る様相だったが、パラフィン蠟ではあの迫力はなかったろうなぁ。
ちなみに拝み屋のオヤジさんは近所のちいさな町工場の主で、シベリア抑留中に神さんが降りてきて、生きて帰国させるから人助けをしろと不思議な力を授かったんだっちゃんぞ!と、ほろ酔い気分のオヤジが教えてくれた。
インチキ臭いという人もいたけど、そのオヤジさんは律儀にも毎日夕方の4時になるとドンドンと太鼓をたたいて勤行していたから、町内の時報かわりになっていた。妖しいオヤジさんには和ろうそくの揺らぐ炎が似合うのだ。
婆さんからはキツネに化かされた話や、人魂の目撃談を聞かされた。
わが少年時代はまだ不思議が身近にありましたな。
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