ロシアのウクライナ侵攻について、英国のハードボイルド作家、ジャック・ヒギンズの「鷲は舞い降りた」の一説を紹介するフェイスブック投稿を読み、私は30年以上も前に読んだ海洋冒険小説の名作「脱出航路」を思い出した。
ドイツの敗戦が濃厚になった時、ブラジルにいたドイツの民間老朽帆船ドイツェランド(ドイツ号)が捕虜になることを拒み、故国を目指す選択をして帰国の航海に出た。乗員には修道女一行もいる。
連合軍の掌握下の航路で、容赦なく嵐が老朽船を襲い、故国を前に遭難の危機でSOS発信。
探索のドイツ軍の爆撃機とドイツェランドの無線交信を傍受したアメリカ海軍の砲艦は、ドイツのパイロットと連絡を取り合い、敵国船の救助に向かう。しかしドイツェランドはスコットランド諸島近海の暗礁で座礁。
アメリカ海軍からドイツ船座礁の救助要請を受けたスコットランドの漁師たちは、憎たらしいドイツ人船を放置するか?救助するか?救助に出ても嵐だから命の保証はない!と紛糾する。
そこで長老が演説する。「皆の衆、なにを迷っている!確かに座礁したのはワシらを殺そうとするドイツの帆船だ。しかしワシらは海に生きる漁師じゃないか!ワシら海の男は先祖代々、助け合って生きてきた!ワシと一緒に行く勇敢な男は誰だ?前へ出ろ!ぼやぼやせずにボートを出す準備にかかれ!」
波間に消えゆくドイツェランド乗員の命運やいかに!・・・だいたいこんな粗筋。
ロシアのウクライナ侵攻の今、戦争当事国同士の海の男たちが、国家の枠組みを超えて個人の道義心に従う物語をもう一度読みたくなった。
現実にこんなことがあったとしたら、世の中捨てたもんじゃない。日本ハードボイルド小説協会会長であり、作家、コメディアンでもあった内藤珍のベストセラーのタイトルを借りると「読まずに死ねるか!」
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