どこへいっても「鬼滅の刃」
極楽湯でも
くら寿司でも
見ない日は無いというくらい。
娘もAmazonプライムでテレビ版を見てから好きになりました。
「禰豆子(ねずこ)の箱」・・・・
家族を鬼に惨殺された主人公の炭次郎。
唯一生き残った妹の「禰豆子」は鬼の血が体に入り自らも鬼になってしまった。
鬼は日に当たると死んでしまう。だから炭次郎は昼間、禰豆子を箱の中に入れて背負い、人々を食らう鬼を倒すために、そして妹を元の人間に戻すために
戦い続ける心優しき炭次郎。
大人の私がみてもよかったです。
雑貨屋さんで見つけた鬼滅の刃のぬいぐるみ。
何が欲しいと尋ねた。
初めて買ったのが禰豆子のぬいぐるみでした。
禰豆子のぬいぐるみで遊んでいた娘が、昼間は死んでしまうから禰豆子の箱がいるねって話してきました。
じゃあ作ろうかってなって、禰豆子の箱を作ることになったというわけです。
劇中でこの箱を作った「鱗滝左近次 (うろこだきさこんじ)」が炭次郎に箱を渡すシーンがあって、箱についてこんな風に説明していました。
『非常に軽い「きりくもすぎ」という木で作った。「いわうるし」を塗って外側を固めたので強度も上がっている。』
テレビ版で見ただけなので「きりくもすぎ」がどんな字を書くのかも分からず「軽い」ということで「きり」を「桐」と思い込んでしまい、
たまた百均で見つけた桐の板材を見て丁度いいやんって思って買って帰ってきました。
後に分かったことですが、この「きりくもすぎ」は「霧雲杉」と書き、実際に存在しない架空の杉の木ということでした。
作ると言って何となく形が分かるだけなので、情報集めから始めなければなりません。
最近、何事にも腰が重くなってきた私。プライムビデオを見返して形状や特徴を観察。対して子供の気持ちは急ぎ足で、どれくらい出来たか気になる娘。
ぬいぐるみの大きさから直方体の六面が取れる寸法で取りあえずカット。
丸ノコは数台あるのですが幅が有るものは切れず、テーブルソーも簡易的なもので精度がでず、スライド丸ノコが欲しいと最近よく思います。
・・・・・
「もう切れた?」
「まだ」
夜になって娘に聞かれ、お尻を叩かれたように思えた私。
かと言ってこの時間から大きな音がする丸ノコは使えません。ならばと静かに削れるフライス盤で切りました。
最近、金属削ってないマキノのフライス。世界のマキノと言われたKシリーズ。名機も今は悲しき木工マシン。
でも当たり前ですが普通に精度が出るので木工細工でも気持ちいいです。
子供と同じ時間を過ごすことって大切だと思って、できるだけ一緒に作業するようにしてるんですが、ついボンドの塗り方が下手だと
「そこ、塗れてないところがあるやん。ちゃんと見なあかんで!!」って強い口調で言ってしまいます。まだ小学二年生なのにね・・・・。
気が短くてイラちな私。後から思い出してブルーになります。
私の親父も作ることが好きでいろんなものを作ってました。
真空管テレビの時代なので修理もオシロで波形みながら自分で修理してました。
学校放送なんかはトランジスタとかICの規格表とか回路図を見ながら回路図書いて感光基板にレタリングして、それをエッチングして
アンプを作って納めたり、アングルを溶接して架台を作ったり、塗装は耐久性のあるということで焼付塗装してました。
昭和50年頃のネットなんてない時代に普通の街の電気屋さんとしては他より技術力は少し秀でた人だと思います。
高度経済成長期もあって器用なオヤジは重宝されました。
反面、そんな親父と私は何かを一緒に作ったことはありませんでした。それどころか遊んでもらった記憶なんて数えるほどしかありません。
「明日まで乾かすねんで」
前の晩にそう言って乾かしたものを朝、学校に行く前にちょっと様子を見させて、夜になったら色を塗るよと話してやります。
早く出来ないかと待つ娘に少しでも何かが伝わるように・・・。
ヤスリ掛けしてスベスベするのが分かると「あ~、いいねえ」って納得します。
(このタジマのサンダー、使いやすくて気に入ってます。)
色塗りですが、外側に塗って固めていると言っていた「いわうるし」も「岩漆」と書くそうで、これもまた架空のものらしいです。
さすがに漆は塗れないので木目が綺麗な「ニス」にしました。
好きなオールナットにしたのですが実際は少し赤みがかった色です。
ニスは重ね塗りするといい色になります。ペンキと違って一回では終わらず翌日も塗り重ねの作業。
子供の気持ちに反して時間が掛かります。
良い仕上がりになるとなれば大人は待てますが、子供にはそれはまで理解できません。
それでも「分かった!!」と言ってくれる娘に嬉しさを感じます。
このままでは鬼滅の刃のブームも終わってしまいます。
ということでお父さんは頑張りました。
風呂に入る前に塗って寝る前にペーパーを掛けてからまた塗って。
朝起きてまたペーパー掛けして出勤するまでにまた塗って。
仕事が終わって帰って来て着替える前に磨いて塗って、ランニングから帰ってきたらまた磨いて塗って・・・・の五回塗り。
塗り終えたので禰豆子のぬいぐるみを入れてみたら・・・・
「う~ん、ちょっと大きいね」
「大きいか?」
「こうやって座らせたら大きくて隙間ができるよ」
「座らせなかったらちょうどいいやん」
「でも座ったら、ほら大きいでしょ」
座ったときなんて聞いてない・・・・。
「小さくした方がいい?」
「うん」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・、じゃあどれくらいか言ってみて」
「これくらかな」
「これくらいって言っても分からんから、ちゃんと自分で鉛筆で印を入れなさい」
思ったことをちゃんと伝えないと後から大変になるってことを勉強してほしくて書かせました。
まだ分からないかもしれませんがこんなことの積み重ねじゃないかと思ってたりします。
三歩進んで二歩下がるですが、作り手としては望まないものを作るより、思っていたものに仕上げることの方が幸せになります。
また一晩ボンドを乾かさないとならないので娘にしてみれば全然進んでないように思えたに違いありません。
子供と何かを作るとすれば、できたら一日で出来るものの方が「お父さんすごい」って思ってもらて、良いんじゃないかと思います。
ぬいぐるみにジャストサイズになったのを見たら
「おお、いいねえ」と喜ぶ声が聞けました。よかった。
この辺りから「親子で作る禰豆子の箱」は「お父さんが作る禰豆子の箱」に変わってきたように思えます。
禰豆子の箱の特徴といえば扉の四隅の補強板と箱を囲うように巻かれた帯状のもの。
まずは扉の四隅の補強板の再現から。
材質は補強板にありがちな薄い鉄板で作ったであろうことは分かるのですが問題はその形。
独特で印象的なその形状はよく見ると幾つもの円からできているように見えました。
どこでCADを使っていろんな円を描いてそれっぽくなる寸法を探ってみました。
扉の幅に対する補強板の大きさから比率を出して大きさを決め、円弧と円弧の交点の位置や両者の扇角、それに円の出具合と円が切れる位置などを
何度も見て、出来るだけ再現できるようにしました。
よく考えて作ったはずなのに実際に切り出して扉に宛がってみたら全然イメージと違ったりして、三回ほどCADを引き直しました。
補強板に使う素材は薄鉄板ではなく0.5mmの塩ビ板。
円はドリルであけることも考えましたがポンチで抜きました。
円弧はハサミで簡単にきることができましたが、ポンチの打ち抜きが綺麗にいかず数個作り直しました。
鋲が二箇所打ってあるのですが、あとから感覚だけで打つと微妙にズレて絶対に許せなくなる気がしたので、あらかじめ印をつけておきました。
鋲は白く描かれているだけだったので真鍮にせずに、ステンレスの細釘にしました。
長さが25mmと長すぎるので短く切ってルーペを見ながら先端をヤスリで削って尖らせました。
補強板はスーパーXで接着しておいて後から釘を打っています。
地味な作業で面倒かと思ったのですが工芸品を作っているような感じがして意外と楽しめました。
小さな蝶番は普通に売ってるのですがさすがにこの手の取っ手はドールハウスでも似たようなのが無く、仕方が無いので木を削って作りました。
最初はくり抜きもない単純な形状で摘まみやすいように逆テーパーだけした、それこそ単に扉を開けられるだけの取っ手を作ったのですが
あまりに質感が無かったので少し魂を込めて作り直しました。
塗装はウレタンニスではなく、単なる着色ニスだったのでいくら磨いても思ったように艶が出なかったので、ラッカークリア仕上げにしました。
長くなったので後編に続きます。
ではまた