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温泉ファン、いやマニアの間で誉れの声高い那須の「老松温泉喜楽旅館」。
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東北道の那須インターから県道17号を湯本方面に向かって北上し、湯本手前の郵便局先にあるS字カーブに差し掛かったところで右折(看板あり)、川の左岸に沿った細い路地(途中からダート)を進んだ突き当たりに駐車場が広がっているので、そこに車を置いて残り数十メートルを歩きます。駐車場の片隅には最近建てられたと思しき石碑があり、そこには「那須の珍湯」と篆刻されていました。本当に珍しいという意味かあるいは自嘲しているのか。またこれとは別に「徒歩1分」と彫られた墓石然とした道標も立っています。
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路地の突き当たりの両側にはかなり草臥れた木造家屋が建っています。
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路地の左が湯屋で右が受付。なんだか昭和の炭住(夕張や筑豊など)みたいな佇まいですね。受付で入浴を乞うと、宿のおじさんが寝っ転がってテレビを見ている最中。おじさんは笑顔で料金を受け取りましたが、傾いでいる建物と横になりながら対応するおじさんという取り合わせに、客としては「ここ大丈夫?」というちょっとした不安が擡げてしまいます(不安とともにB級施設に潜入できる期待も比例して高まっているのは事実ですが…)。
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湯屋の玄関に入ると、その不安は(その逆の期待も)益々増大。下足場にはスリッパが散乱しており、薄暗い空間の中には粗大ゴミらしき物体も放置されているではありませんか。らせん状の階段を下りて浴室へ。「階段を下りる温泉に名湯あり」という格言?もありますから、ここはとにかくお湯に期待しましょう。
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玄関より更に暗く薄気味悪い廊下の先に浴室がありました。川の谷に沿って建てられているようです。なお浴室の先にも廊下は伸びているのでちょっと覗いてみたら、そこは客室棟なのですが、客がいないのか真っ暗で、壁紙も剥がれており、廃墟一歩手前といった感じでした。
脱衣所は狭く、タバコの吸殻が山のように詰まれてヤニ臭かった…。
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浴室は総木造で内湯のみ、ここだけ見ればなかなか味わい深い建物なのですが、よく見ると羽目板が一部剥がれていたり、あるいは傾いていたりと、もう少しで崩れちゃうんじゃないかと心配したくなるほど老朽化しています。窓の外を覗いてみると、真下には川が流れていますが、視線を左へ逸らすとゴミがうずたかく詰まれており、あぁ見なきゃ良かったと後悔…。
なお浴室内にカランはありません。浴槽から直接桶で汲んで掛け湯します。
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浴槽は2分割され、手前(脱衣所側)が熱め、奥(窓側)がややぬるめでした。熱い方は薄い灰白色に弱く濁り、その程度としては、底の足がボヤけるものの像型をちゃんと確認できる状態です。ややぬるい方はレモン色を帯びて白く濁り、濁り方も強いために底の足が見えないほどでした。同じ源泉なのにちょっとした温度でかなり見た目が変わってくるんですね。
塩ビや金属のパイプからお湯が注がれており、パイプにはバルブが接続されているので、湯量は客が自分の好みで調整します。でも湯口のお湯は触ると火傷しそうなほど熱いため、バルブは開けっ放しにせず、投入したいときだけ開けます。
湯口にはコップがいくつか置かれているので飲んでみると、硫黄的な苦味が強くゴムっぽさや粉っぽさも感じられます。軟式テニスボールのようなゴム臭に鼻腔を刺激する硫化水素臭が明瞭に匂い、味覚臭覚からわかるように明らかな硫黄泉です。ただし酸味は感じられません。お湯の中では気持ちよいツルスベ感の中に引っかかりが混在する浴感で、湯上りはお肌スベスベ、車内は硫黄臭で充満してしまいました。しっかり温まり、湯冷めしにくいお湯だと思います。
お湯は本当に良い。さすが那須の温泉です。でも全体的にお手入れが行き届いていないのがとっても残念。このため清潔感を求める人は行ってはいけませんが、お湯が良ければ多少のことは気にならない方や、B級施設に興奮を覚える方ならむしろお勧めです。お湯にはまた入りたいなぁ。でも耐久力のない私に宿泊は無理かも…。
温泉分析表の掲示無し
栃木県那須郡那須町湯本181 地図
0287-76-2235
8:00~20:00
500円(一応45分という時間制限がありますが、ほとんど無意味)
備品無し
私の好み:★★★