温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

(那須)老松温泉 喜楽旅館

2011年02月02日 | 栃木県

温泉ファン、いやマニアの間で誉れの声高い那須の「老松温泉喜楽旅館」。

 
東北道の那須インターから県道17号を湯本方面に向かって北上し、湯本手前の郵便局先にあるS字カーブに差し掛かったところで右折(看板あり)、川の左岸に沿った細い路地(途中からダート)を進んだ突き当たりに駐車場が広がっているので、そこに車を置いて残り数十メートルを歩きます。駐車場の片隅には最近建てられたと思しき石碑があり、そこには「那須の珍湯」と篆刻されていました。本当に珍しいという意味かあるいは自嘲しているのか。またこれとは別に「徒歩1分」と彫られた墓石然とした道標も立っています。

 
路地の突き当たりの両側にはかなり草臥れた木造家屋が建っています。

 
路地の左が湯屋で右が受付。なんだか昭和の炭住(夕張や筑豊など)みたいな佇まいですね。受付で入浴を乞うと、宿のおじさんが寝っ転がってテレビを見ている最中。おじさんは笑顔で料金を受け取りましたが、傾いでいる建物と横になりながら対応するおじさんという取り合わせに、客としては「ここ大丈夫?」というちょっとした不安が擡げてしまいます(不安とともにB級施設に潜入できる期待も比例して高まっているのは事実ですが…)。


湯屋の玄関に入ると、その不安は(その逆の期待も)益々増大。下足場にはスリッパが散乱しており、薄暗い空間の中には粗大ゴミらしき物体も放置されているではありませんか。らせん状の階段を下りて浴室へ。「階段を下りる温泉に名湯あり」という格言?もありますから、ここはとにかくお湯に期待しましょう。


玄関より更に暗く薄気味悪い廊下の先に浴室がありました。川の谷に沿って建てられているようです。なお浴室の先にも廊下は伸びているのでちょっと覗いてみたら、そこは客室棟なのですが、客がいないのか真っ暗で、壁紙も剥がれており、廃墟一歩手前といった感じでした。

脱衣所は狭く、タバコの吸殻が山のように詰まれてヤニ臭かった…。


浴室は総木造で内湯のみ、ここだけ見ればなかなか味わい深い建物なのですが、よく見ると羽目板が一部剥がれていたり、あるいは傾いていたりと、もう少しで崩れちゃうんじゃないかと心配したくなるほど老朽化しています。窓の外を覗いてみると、真下には川が流れていますが、視線を左へ逸らすとゴミがうずたかく詰まれており、あぁ見なきゃ良かったと後悔…。
なお浴室内にカランはありません。浴槽から直接桶で汲んで掛け湯します。


浴槽は2分割され、手前(脱衣所側)が熱め、奥(窓側)がややぬるめでした。熱い方は薄い灰白色に弱く濁り、その程度としては、底の足がボヤけるものの像型をちゃんと確認できる状態です。ややぬるい方はレモン色を帯びて白く濁り、濁り方も強いために底の足が見えないほどでした。同じ源泉なのにちょっとした温度でかなり見た目が変わってくるんですね。

塩ビや金属のパイプからお湯が注がれており、パイプにはバルブが接続されているので、湯量は客が自分の好みで調整します。でも湯口のお湯は触ると火傷しそうなほど熱いため、バルブは開けっ放しにせず、投入したいときだけ開けます。

湯口にはコップがいくつか置かれているので飲んでみると、硫黄的な苦味が強くゴムっぽさや粉っぽさも感じられます。軟式テニスボールのようなゴム臭に鼻腔を刺激する硫化水素臭が明瞭に匂い、味覚臭覚からわかるように明らかな硫黄泉です。ただし酸味は感じられません。お湯の中では気持ちよいツルスベ感の中に引っかかりが混在する浴感で、湯上りはお肌スベスベ、車内は硫黄臭で充満してしまいました。しっかり温まり、湯冷めしにくいお湯だと思います。

お湯は本当に良い。さすが那須の温泉です。でも全体的にお手入れが行き届いていないのがとっても残念。このため清潔感を求める人は行ってはいけませんが、お湯が良ければ多少のことは気にならない方や、B級施設に興奮を覚える方ならむしろお勧めです。お湯にはまた入りたいなぁ。でも耐久力のない私に宿泊は無理かも…。
 

温泉分析表の掲示無し

栃木県那須郡那須町湯本181  地図
0287-76-2235

8:00~20:00
500円(一応45分という時間制限がありますが、ほとんど無意味)
備品無し

私の好み:★★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大正村幸乃湯温泉

2011年02月02日 | 栃木県
 
板室温泉の手前に位置する規模の大きな一軒宿です。大きな駐車場の奥に平屋の建物がズラっと広がり、羨ましいほど土地を贅沢に使っていますが、ただ、なぜか下足場が狭いため(設計ミス?)、日帰り入浴客は自分の靴をビニル袋に入れて脱衣所まで持っていかなくてはなりません。フロントで料金を支払い、食堂の脇をかすめながら駐車場側の廊下を進んで浴室へ。帳場はご高齢のお爺ちゃんが担当されていましたが、年齢を感じさせず実に矍鑠と対応していました。

 
浴場までのアプローチ。さすがに旅館らしく整然としていました。

 
脱衣所は綺麗で清潔ですが、空気が篭りやすく、夏は熱気が逃げていかないので結構暑かったりします(扇風機とシーリングファンが回っていますが、エアコンはありません)。訪問時は夏真っ盛りだったのですが、脱衣所より浴室のほうが涼しいという、おかしな状態でした。

 
浴室は腰板までが石板でそこから上は材木使用の、明るくぬくもりが感じられる造りです。内湯の浴槽は石板貼り縁が白木、湯口にはコップが置かれています。
カランはシャワー付き混合栓が7基設けられていました。
湯口からの源泉投入量に対してオーバーフローの量が少ない気したのですが、単なる私の見間違いか、あるいは浴槽内に排湯口があるのか…。湯口にコップがあるのでまさか循環ではないでしょう。

無色透明、芒硝&石膏の味と匂いが感じられますが、いずれもかなり薄めです。分析表を見るとギリギリで硫酸塩泉の基準をクリアしているので、日によってはアルカリ性単純泉になってしまうこともあるのではないでしょうか。硫酸塩泉としての成分は薄く、その代わりpHの数値が高いので、硫酸塩泉的な引っかかり浴感は少なく、むしろツルツルスベスベ感の方が勝っていました。


露天風呂の浴槽は2つ。

 
手前側は屋根に覆われた岩風呂で、湯口は肩幅に合わせられた2本のパイプが2組設けられ、ここに背中をもってくると落ちるお湯で肩をマッサージできる構造になっています。

 
もう一方の浴槽は滝行のような勢いの打たせ湯が4本落ちており、おそらく栃木県内にある打たせ湯の中では最も勢いが強いのではないでしょうか(あくまで私の憶測にすぎませんが)。源泉湧出量が豊富だからこそできる業ですね。浴槽の縁として横たえられている太い1本の丸太も立派です。
この滝の打たせ湯で背中や肩を徹底的に刺激した後、屋根のある槽に移って、肩幅の湯口に肩を合わせてお湯を当てると、あたかもホットタオルで温まれているかのような、優しい感覚に包まれました。実に気持ち良い! また、露天風呂はややぬるめなので、どなたでも結構長湯できそうです。体の芯からしっかり温まれそうですね。


屋根付き露天風呂の脇に鎮座している恵比寿様の真上を見上げると、そこにも打たせ湯らしきパイプが取り付けられていました。どうやら使用停止中のようですが、まぁこれが稼働していたら露天で落ち着ける場所が無くなってしまうので、順当な措置だと思います。なお屋根付きの浴槽に投入されたお湯は、一旦その隣の打たせ湯の槽へと流れ、打たせ湯のお湯と一緒に浴槽の縁から排水されていました。

館内には宿泊者専用の「座敷風呂」と称する浴室もあって、名前からわかるように畳敷きのお風呂なんだとか。一度入ってみたいものです。湯量も豊富で雰囲気も良好。なかなか気持ちの良い温泉でした。


幸乃湯源泉
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉 49.2℃ pH9.3 280L/min(掘削・動力揚湯) 溶存物質1.029g/kg 成分総計1.029g/kg 
栃木県那須塩原市百村3536-1  地図
0287-69-1126
ホームページ

10:00~21:00(正月・大型連休・お盆は18:30まで)
500円
私の好み:★★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする