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前回取り上げた東明館とともに、東秀館は老神温泉のなかでも片品川の対岸(左岸)に位置しており、以前は穴原温泉と称され区別されていたんだそうです。このため今でも東秀館は「穴原湯」を名乗り続けています。
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立派な門構えにドッシリとした造りの建物を目にして、もしかしたら日帰り入浴は門前払いされちゃうかも、と覚悟しながら帳場に声をかけてみると、快く入浴OKとのこと。ロビーの右斜め前方へ進んで浴室へと向かいます。お風呂は「大衆浴室」「婦人浴室」「野天風呂」の3つに分かれ、大衆浴室が実質的な男湯となっており、露天は混浴です。なお女湯にはバラ風呂があるんだそうです。
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(↑画像はクリックで拡大)
浴室手前の廊下には木板に書かれた昭和41年の分析表が掲示されていました。今はアルカリ性単純泉ですが、昔は石膏土類硫化水素泉に分類されていたんですね。今と比べると成分が全体的に濃かったようです。
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大衆浴室の脱衣所は一風変わったデザイン。お部屋自体はごく普通なのですが、棚が丸い筒状になっており、それがたくさん並んでいるのです。こんな脱衣棚は他ではお目にかかったことありません。20~30年前のモダンアートって感じ。
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(↑両画像ともクリックで拡大)
室内には温泉に関する説明が貼られています。「飲める温泉」なんですね。もちろん後で飲ませていただきます。
また源泉がどのように汲み上げられているかを図示して説明されている点も、とっても好感持てます。この図に拠れば地下80mほど掘削して5馬力のポンプで揚湯しているようですね。
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ガラス張りの内湯にはシャワー付き混合栓が6基設置、岩風呂状の浴槽が3つあって、各浴槽とも源泉掛け流し(加温加水循環消毒なし)。
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湯口のまわりには硫酸塩の白い析出がこびりついていました。写っていませんが、湯口傍にはコップが置かれています。
お湯は無色澄明ですが、お湯に入ると底に溜まっている大小様々な大きさの白い湯華と糸屑のような黒い湯華がモワっと舞い上がって、体に纏わりつこうとします。ツルツルスベスベとしてサッパリとした浴感です。
飲める温泉なので、さっそく飲泉してみると、タマゴ味ですが、一般的な温泉のタマゴ味よりは硫黄感が強く、また匂いは全体的には弱めですが、湯口でクンクン鼻を鳴らしながら嗅いでみると、しっかり硫黄臭が感じられました。
浴感といい知覚といい、同じ穴原温泉でも東明館の老神4号泉とは明らかに異なる泉質で、どちらも硫黄感が明瞭に出ていながら独自の個性を発揮しており、甲乙つけがたい素晴らしいお湯です。
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「野天風呂」は「大衆浴室」からは裸のままで行けますが、婦人浴室からは一旦服をまとわないと行けません。浴槽脇に建てられている大きな石灯籠には「仙涯の湯」と記されています。
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こちらのお風呂も湯口にはコップが置かれ、お湯はしっかり掛け流され、白と黒の湯の華が大量に舞っています。外気の冷却によるためか、湯の華の量は内湯よりも多く、浴槽に入れば全身に湯の華が絡みつき、湯口にコップを宛がっているだけでもコップの中には湯の華が入り込んできます。硫酸塩の影響なのか、波立つ湯面はキラキラ輝き、湯中の肌は青白く光って見えます。訪問時は竹の葉が浴槽に大量に落ちて浮かび、更には大量の湯の華もそこに絡み合って、ある意味でとってもにぎやかな状態でした。
東明館のお湯にはメロメロになりそうでしたが、こちらのお湯も凄い実力の持ち主。老神のお湯が持つ薄いながらもはっきりと主張する個性には圧倒されてしまいました。
余談ですが小田急沿線住民の私にとっては「東秀」と聞くと中華料理チェーンの「中華東秀(オリジン東秀)」を連想してしまいます。でも老神温泉で中華料理チェーンが運営するのは「東明館」なんですよね。頭が混乱しそうだ。ま、どうでもいいんですけど…。
老神1号泉
アルカリ性単純温泉 50.7℃ pH8.44 蒸発残留物0.52g/kg 成分総計0.54g/kg
群馬県沼田市利根町穴原1151 地図
0278-56-3024
ホームページ
日帰り入浴15:00~19:00
500円
シャンプー類あり(他の備品類なし)
私の好み:★★★