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一時は閉館していた東明館ですが、「3割うまい」がキャッチフレーズ、埼玉西部が地盤の中華料理チェーン「ぎょうざの満洲」が居ぬきで買い取って昨年春にリニューアルオープンさせました。
小田急沿線の川崎市民である私にとって「ぎょうざの満洲」は無縁の存在ですから、たまに埼玉県西部などで店舗を見かけると「あぁ西武&東上沿線に来たなぁ」と実感するのですが(同様に「珍来」は東武沿線のイメージ)、まさか上州老神の地でこの屋号とランちゃんを目にするとは思ってもみませんでした。
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建物の躯体は以前のままで、天井の高さや低さや廊下の狭さなどに建物の古さを隠し切れない点はあるものの、内部は徹底的に改装されていました。道路と同じレベルの玄関ロビーは2階に位置し、フロントの奥には中華レストラン「ぎょうざの満洲」が営業中。
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EVか階段で1階へ下り、廊下を歩いて浴室へ。途中川に面した部屋が休憩室となっており、ゆったりとしたスペースと眺望が確保され、ウォータークーラーも置かれて、サービス充実。
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男女別の浴室には内湯と露天がひとつずつ、それぞれの浴槽には、男湯の内湯「赤城の湯」で露天は「吹割の湯」、女湯の内湯は「武尊の湯」で露天は「尾瀬の湯」というように、上州の観光地名が名付けられています。
脱衣所も非常に綺麗で清潔感に満ち溢れていました。
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浴室に入った途端、ゆで卵の黄身のような芳しい匂いが香ってきます。この時点で温泉好きなら誰しも期待に胸躍らせてしまうこと必至。内湯は特に目立った点は見当たらず、グレー基調な石板貼りの一般的な構造・デザインですが、やっぱり新しいお風呂は気持ちいいものです。川に面した側が大きなガラス窓で明るく開放的ですが、植栽に視界を遮られるため眺望は期待できません。浴槽は10人サイズ、底の角の方は早くも黒ずんでいます。硫黄の影響でしょうか。なおカランはシャワー付き混合栓が7基設置されていました。
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露天は岩風呂風で、これまた各地の温泉浴場でよく見られるタイプ。やはり植栽と塀に視界を阻まれ、お湯に浸かりながら片品川の渓谷を眺めることは出来ませんが、庭園風で清々しい環境です。
ここに注がれるお湯は老神の4号泉で、ほぼ無色透明ながら僅かに灰白色に濁って見えます。お湯の中では黒い羽根状の湯の華が浮遊していました。露天は外気に冷やされるためか内湯よりも濁り方がはっきりしており、黒い浮遊物も若干多めでした。
上述のたまご臭がはっきりと香り、金気臭も少々。味もタマゴ感(硫黄感)がしっかり主張し、これに弱い芒硝味が混じっていました。ほぼ中性だからか透明なタマゴ湯にありがちなヌルヌル感は少なく、むしろ芒硝の力なのかキシキシと引っかかる浴感です。そして体をお湯に沈めると、肌へビッシリと遊離炭酸ガスの気泡が付着します。泡付きのお湯って嬉しいですよね。特に露天でこの泡付きが顕著でした。炭酸ガスのためか、湯上りもホカホカ感が持続、なかなか湯冷めしませんでした。もちろん内湯露天ともに掛け流しです(加温加水循環消毒なし)。
訪問時、浴室には一人の年配の方がいらっしゃって、この方はちょこまか出たり入ったりしながら、従業員を呼び出して、いろいろとダメ出しをしている…。事情を知らない私は当初この方を単なるクレーマーかと勘違いしたのですが、事情を伺うとこの宿のマネージメントをなさっている方で(おそらく会長さん)、オープンして間もない施設ゆえ、たとえば「露天には葉や虫が浮くからこまめに網で掬え」だとか「湯加減が熱すぎる」とか、ひとつひとつをお風呂担当の係員に指示していたのでありました。クレーマーなんて決め付けてしまい、大変失礼しました。露天風呂に入りながらいろいろとお話させていただきましたが、温泉に対する造詣の深さに感服。そして何度も噛みしめるように「客商売は難しいねぇ」と仰っていたのが印象的でした。
調子に乗って一言申し上げると、せっかく良いお風呂ができあがったのですから、従業員の制服を「ぎょうざの満州」のシャツではなく、もっと雰囲気のあるものにしたらいいのになぁ、って思うのですが…。
何はともあれ、老舗温泉旅館が経営不振で次々と暖簾を片付けてゆく中で、素晴らしいお湯がこういう形で復活されたことに、温泉ファンの一人としては非常に嬉しく思います。
老神4号泉
単純硫黄温泉 50.8℃ pH7.8 動力揚湯(湧出量測定せず) 溶存物質0.63g/kg 成分総計0.64g/kg
群馬県沼田市利根町大楊1519-2 地図
0278-56-2641
ホームページ
日帰り入浴12:00~16:00(受付は15:00まで)(食堂は11:30~21:00)
600円
貴重品ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり(貴重品ロッカーはロビーに設置)
私の好み:★★★