温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

濃溝温泉 千寿の湯 (そして久留里線のキハ30)

2011年08月19日 | 東京都・埼玉県・千葉県
 
上総亀山「参温泉」の3軒目です。1軒目「七里川温泉」と2軒目「亀山温泉ホテル」については各ページをご参照あれ。
笹川湖上流の県道沿いには清水渓流広場というちょっとした公園が設けられており、そこには3軒のペンションのような建物が建っています。いずれも「濃溝温泉千寿の湯」の関連施設で、県道に最も近い棟(上画像)は宿泊棟、その隣は食堂、そして一番奥の川岸に接した建物が温泉棟となっています。県道沿いの電光看板には「源泉かけ流し」と表示されており、「日帰り入浴できます」とプリントされた幟もはためいているので、どんなお湯なのか、入ってみることにしました。

 
こちらが温泉棟です。玄関前にはボートを転用した足湯が設置されていましたが、訪問時は空っぽでした。
東京近郊の日帰り入浴施設らしからぬ、こじんまりとしたアットホームな造りです。館内には食堂を兼ねた休憩室があります。


建物自体が小さめなので脱衣所も狭いのですが、手入れはよく行き届いていて清潔です。室内には冷水タンクと紙コップが用意され、湯上りの水分補給には最適。こういう細かな配慮はありがたいですね。

 
お風呂は内湯のみで、民宿のお風呂みたいなシンプルな造りです。洗い場のカランはシャワー付き混合栓が4基設置されており、浴槽は1つで4~5人サイズでしょうか。窓からは自然あふれる笹川湖最上流の景色が望めるんだそうですが、あいにく訪問時はすでに日が暮れており、景色を楽しむことはできませんでした。

 
木製の湯口(お湯が出るところだけステンレス)から出てくるお湯は、浴槽の縁に這わせてある樋を流れながら浴槽へと注がれていきます。樋の途中には穴があけられており、そこからもお湯が注がれます。そしてその浴槽に張られたお湯は縁から静かにオーバーフローしていきます。湯口の木箱にはバルブが内蔵されていますが、客が操作することはNGのようです。湯口直下に置かれた温度計は40℃を指していました。

お湯は微かに紅茶色を帯びた透明で、まるやかながら明瞭なタマゴ臭とタマゴ味、そして重曹味とほろ苦さが感じられます。またモール臭に似て非なる香ばしい匂いも仄かに漂っていました。弱いながらもはっきりとした重曹泉的なツルスベ浴感があり、お湯に体を沈めてじっとしていると肌にゆっくり気泡が付着します。
源泉温度が低いので加温されていますが、程ほどの温度に抑えられているため、いくらでも長湯できそうな実に気持ち良い湯加減でした(熱いお湯が好きな方には物足りないかも)。ぬるめの重曹泉は私の好みのストライクゾーンど真ん中なので、この時もじっくり長湯させていただきました。また先客の方は、何度も入ったり出たりを繰り返すことにより、やはり長湯を楽しんでいらっしゃいました。
源泉湧出量が限られている上に加温もしているのに、常時放流式の湯使いを実現させているのは立派だと思います。個人的には気に入りました。房総の鉱泉は個性的で奥が深いんですね。


温泉法上の温泉(冷鉱泉)(温泉法第2条別表の重炭酸そうだの項による)(温泉法別表では何故か重炭酸ソーダ(炭酸水素ナトリウムの別称)のソーダが「そうだ」と平仮名表記されています)
15.7℃ pH8.5 22L/min(自然湧出) 溶存物質0.763g/kg 成分総計0.763g/kg
ナトリウムイオン198.4mg/kg(89.52mval%)、塩素イオン75.6mg/kg(21.58mval%)、炭酸水素イオン350.8mg/kg(58.26mval%)
加温あり、加水・循環・消毒については記載無いがおそらく該当なしと思われる

JR久留里線・上総亀山駅から君津市コミュニティーバスの香木原行に乗車し「清水渓流広場」バス停下車すぐ(所要約12~16分、200円)
千葉県君津市笹1954-17  地図
0439-39-3791

10:00~21:00 火曜定休
800円
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品はフロント預かり

私の好み:★★


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●おまけ 久留里線のキハ30


かつて関東圏では八高線や相模線で当たり前のように乗車できたキハ30・35ですが、いまではこの久留里線や譲渡先の関東鉄道で最後の活躍を見せるのみとなってしまいました。しかも関東鉄道では早々の引退が決定しており、久留里線でもキハE130への更新が予定されているため、その雄姿は過去帳入りしてします。そこで私のヘタクソな画像で申し訳ないのですが、キハ30の記憶をとどめておくため、その姿をここに残しておきたいと思います。下手な私に走行中の姿は撮影できないので、車両の部位に注目してみました。

 
上総亀山に停車中。

 
上総亀山はホーム有効長が短いため、3両以上つないでいる場合、ホームからはみだす車両はドアカット。
外吊り両開きのドアは日本では珍しい。

 
ドアを車内から見たところ。戸袋窓の上には「手をださぬよう」にという注意書きあり。


ドア開閉ボタン

 
ロングシートが並ぶ車内。冷房はないので、夏は窓を全開に。天井では扇風機がフル回転。車内には余計なものが無いのですっきりしています。


運転台。国鉄車両らしい大きな受話器や「タブレット再度確認」というシールが目を惹きます。


「キハ30 100」のプレート


昭和の通勤車両のシンボル、グロベン。

このような車両が2011年の今日まで現役であり続けていることは奇跡なのかもしれません。
コメント (2)
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亀山温泉 亀山温泉ホテル

2011年08月19日 | 東京都・埼玉県・千葉県
 
前回取り上げた七里川温泉から亀山地区の温泉をハシゴすべく、七里川温泉バス停(温泉から100mほど南)から君津市コミュニティーバス「風っ子号」に乗車。

 
バスは上総亀山駅前を経由し、周辺をグルグル廻りながら、ダム湖である亀山湖のダム上を通過。車窓からは湖畔に建つ「亀山温泉ホテル」が望めました。そして亀山湖バス停で下車。


いかにも昭和な感じの、やや草臥れた佇まいの外観。

 
天井の低い館内や置かれている什器類もやはり昭和な雰囲気ですが、古いながらもよくお手入れされています。湖を望むロビーは、平日に訪問したからか誰もおらず、とっても静かでした。フロントでは若主人が明るく対応してくれました。日帰り入浴1000円という料金設定にたじろぎながらも、野口英世さんを一枚渡して、お風呂へと向かいます。浴室はロビーを左に折れたところにあります。

 
ダム湖が築かれる以前にもここには亀山鉱泉が存在しており、その時の様子は写真に残されて館内に掲示されていました。

 
(右(下)サムネイルはクリックで拡大)
脱衣所は広くて大きな鏡があり、アメニティーも揃っていて非常によく手入れされており、清潔で気持ち良く使えました。外観からもわかるようにこのホテルは全体的に老朽化しているのですが、手入れを徹底したり小物を替えたり手作りのポスターを作ったりするなど、若主人や女将が自分たちのできる範囲で頑張って、建物の古さをカバーしようとしているんですね。ホ-ムページを見てもその努力が伝わってきます。若主人はご自身の温泉ソムリエとしての知識で亀山温泉の良さを解説しており、手作りポスターには温泉ソムリエ主催者の遠間氏が好んで使いそうな「三大美人泉質」という語句などが目立っていました。またフミン質(腐植質)についても強調されており、つまり亀山温泉はモール泉的な重曹泉だからお肌にとっても良いんですよ、ということを仰りたいようです。それでは実際にどんなお湯なのか、入ってみましょう。

 
浴室は亀山湖を望む展望風呂です。内湯のみで露天はありません。平日ゆえか、私一人でひたすら独占できました。
男湯はかなり広く、浴槽も湖岸に沿うような形を描いているとても大きなものですが、絶好の位置は男湯によって占められているため、位置から推測するに、女湯の展望は男湯と同等のものが得られるんでしょうか。古い施設は大抵お風呂の構造が男尊女卑だったりしますから、ちょっと心配です。


洗い場には古いシャワー付き混合栓が7基用意されています。


ガラス窓に面した大きな浴槽の他、出入口傍にはこのような半円形の小さな槽もありますが、大きな浴槽とお湯の質も温度も大して違いがありませんでした。


浴槽へ注がれるお湯は大きな岩から滝のように落とされています(岩の上には配湯用のVU管が丸見え…)。若主人ご自慢のお湯は典型的な黒湯で、透明度は40センチほどでしょうか、湯あみしているとまるでアメリカンコーヒーの中に浸かっているような気分です。黒っぽい浮遊物もちらほら見受けられます。館内表示によれば非加熱源泉と加温循環消毒したお湯を混合させているとのことですが、浴槽からのオーバーフローは全く見られませんでした。でもお湯が黒いので浴槽内の吸引口などは確認できず(どこかにあるはずですが…)、消毒の匂いなども全然気になりませんでした。
ゆで卵をスープにしたような、マイルドな塩味と弱い卵黄の味、そしてタマゴ臭とモール臭を足して2で割ったような匂いが感じられます。フミン質は含まれているものの、モール泉的な匂いはそんなに強くないかも。しかしながら、さすが黒湯だけあり、強いヌルヌルツルツルスベスベ感を有しており、お肌は魔法がかかったかのように忽ちスベスベになり、思わずウットリしちゃいました。湯加減もちょうど良い具合です。これで完全かけ流しだったら素晴らしいのですが、源泉温度が低くて加温が必要ですから贅沢は言えません。


この亀山温泉で私が声をあげて感動したのが源泉井です。湯上りに屋外の足湯の方へ歩いてゆくと…

 
そこには源泉井があるのですが、これが実に凄い! 大量の黒湯が音を立てながらものすごい勢いで自噴し、そこから溢れ出て惜しげもなくドバドバ捨てられているのです。千葉県にこんな温泉の源泉があったとは! 地熱資源に乏しい千葉県は温泉にも大して恵まれていないと勝手に思い込んでいたのですが、この源泉はそんな私の先入観を見事に覆してくれました。いままでの自分の無知を大いに恥じます。しかもこのお湯は持ち帰り自由というのですから、ありがたいではありませんか。

 
湯面には白い泡が立ち、流路には硫黄由来と思われる白い綿状の物が大量に付着していました。辺りにはお風呂で感じた(タマゴ臭+モール臭)÷2の匂いが強く漂っています。味も明瞭。ヌルツルスベ感も強力です。


源泉井の隣には無料の足湯がありますが、時間の関係か、この時はクローズされていました。

お風呂もさることながら、源泉井を見るだけでも私は十分満足できました。個人的にはこの自噴井だけでも観光名所として皆さんに紹介したいほどです。草臥れた施設をひたむきな努力によって、懸命に古さを払拭しようとする宿の姿勢も立派だと思います。一方で、1000円(JAF会員証提示で800円)という強気(というか焦燥感なのかも)の料金設定はちょっと疑問ですし、ホームページ上における「源泉100%掛け流し」という表現も、現実には循環併用なわけですから、この表記はちょっと紛らわしいかなと思います。


ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉 26.2℃ 溶存物質2.70g/kg 成分総計2.70g/kg
ナトリウムイオン910.2mg/kg(87.64mval%)、塩素イオン899.2mg/kg(65.43mval%)、炭酸水素イオン717.6mg/kg(30.34mval%)、メタケイ酸84.6mg/kg、腐植質9.0mg/kg
加温・濾過循環・消毒あり

JR久留里線・上総亀山駅より徒歩10~12分、あるいは同駅より君津市コミュニティーバスの香木原行に乗車して亀山湖バス停下車すぐ
千葉県君津市豊田65  地図
0439-39-2121
ホームページ

日帰り入浴11:00~18:00
1000円
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品はフロント預かり

私の好み:★★
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