温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

奥山田温泉 山荘しなの木

2011年08月23日 | 長野県
 
笠ケ岳の山腹に広がる高原の牧草地「山田牧場」。夏は文字通り牧場として、冬はスキーゲレンデとして人気を集める信州でも有名な観光地ですが、もともとこの地区は麓の松川渓谷のような温泉源泉には恵まれていなかったため、昭和40年代に地元の宿泊施設関係者が苦心の末にようやく松川渓谷に噴気の上がる源泉を掘り当て、そこから引湯して奥山田温泉として一般客に提供されるようになりました。松川渓谷の他の温泉群と異なり、奥山田温泉は蒸気に水を当てて人工的に造られた造成泉です。

 
この奥山田温泉に入れる山田牧場に私は何度も訪れているのですが、牧場内の施設数か所を訪れて入浴をお願いしても、ポンプ故障・休業日・日帰り入浴自体お断り、などを理由として宿側から断られることが多く、なかなか入浴する機会に恵まれませんでした。ここで入浴するには宿泊する他ないのかと諦めかけていたとき、ふとこの「山荘しなの木」の看板に掛かっている「営業中」という文字を見つけました。しかもその脇には「当館の温泉は全量掛け流しです」と書かれた札も提げられています。


この「山荘しなの木」は山田牧場へ入るウエルカムゲートの手前にポツンと位置しており、その孤立した立地ゆえに今まで見逃していたのですが、もしかしたら・・・と希望を抱き、玉砕覚悟で入浴をお願いしたら、宿のご主人は笑顔で快く受け入れてくださいました。私の訪問時はしばらく来客が無かったらしく、ご主人は私をロビーのソファーに座らせると、慌てて裏手に回ってシャワー用のボイラーを点火してくれました。


こちらのお風呂には「七福の湯」と「まきばの湯」の2室があり、この日の男湯には「七福の湯」があてがわれていました。民宿らしくこじんまりしていますが、木材や木材風樹脂建材を多用した温かい雰囲気の更衣室内はよく手入れされており、とてもきれいで清潔です。

 
洗面台の横にはアメニティー類が綺麗に並べて揃えられています。もちろんこれらは宿泊客用でしょうから、一介の日帰り入浴客である私は使用を遠慮しました。

 
浴室は内湯のみのシンプルなものですが、民宿とは思えない立派な造りで、浴槽は2~3人サイズ、天井は木材風の樹脂建ですが、壁は本物の木材、そして腰部や床はタイル貼りです。洗い場にはシャワー付き混合栓が2基設置されており、水栓金具は硫化して青黒く変色しかかっていました。


室内にはほんのり硫化水素の匂いが漂っており、ワインレッドの塩ビパイプから投入されるお湯は薄っすら白く濁るもののほぼ無色透明で、湯船の中では白い小さな湯華がたくさん浮遊しています。口に含むと、石膏のような粉っぽい味+砂消しゴム的な硫黄風味+苦み&渋みが感じられ、苦みや渋みは弱いのですが不思議と口腔の中にしぶとく残りました。浴槽のお湯は完全放流式(掛け流し)です。
いかにも造成泉らしく、硫黄(というか硫化水素)らしさを有しているけれども全体的な成分は薄いので、えてして刺激が強い傾向がある天然の硫化水素型硫黄泉よりも肌や身体への当たりがマイルドですから、濃い温泉が苦手な方には、むしろこのお湯のような人工の造成泉の方がおすすめだったりします。実際にこちらのお湯はとても優しい浴感だったので、私は瞑目しながらじっくりゆっくり浸からせていただきました。(ちょっと強引な解釈ですが、箱根の早雲山造成泉に近いお湯のように感じられました)
突然の訪問にもかかわらず、快く入浴を受け入れて下さった宿のご主人に感謝です! いいお湯でした。


奥山田温泉 五色上
単純硫黄泉 (蒸気泉と表流水の混合泉 湧出地:高山村大字奥山田3682-9)
72.9℃ pH6.8 湧出量不明(掘削による自噴を水に溶解) 溶存物質747.8mg/kg
ナトリウムイオン107.8mg/kg(62.87mval%)、塩素イオン133.4mg/kg(51.37mval%)

長野県上高井郡高山村奥山田3681-379  地図
026-242-2916
ホームページ

日帰り入浴可能時間不明(私は16:00頃に訪問しました)
400円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする