温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

アイスランド ランドマンナロイガル(Landmannalaugar)の野湯 及び日帰りツアー

2011年08月07日 | アイスランド
先日アイスランド(漢字表記では「氷国」)を巡ってきました。北海道と四国を合わせたくらいの小さな島国であるアイスランドは火山国でもあり、世界最大の露天温泉である「ブルーラグーン」をはじめとする豊かな温泉資源を有しています。そうなれば私としては是非とも温泉を巡らなければ!
今回のアイスランド旅行ではレンタカーを借りて国内を移動したのですが、訪氷の初日は現地がどんな場所なのかを把握することを兼ね、あえてレンタカーではなく首都レイキャヴィクから日帰りバスツアーに参加して、内陸部の有名な野湯「ランドマンナロイガル(Landmannalaugar)」を訪ねることにしました。温泉レポートを趣旨としているのが当ブログですから、まずはじめにランドマンナロイガルの野湯(天然露天風呂)について述べ、その後にツアー全般について書き綴ってみます。

●ランドマンナロイガル(Landmannalaugar)の天然露天風呂

地図

内陸部のフィヤットラバク自然保護区にある地熱地帯のひとつで、あちこちで湧出する温泉と山から流れてきた川が混じりあって、入浴に適した川ができあがっているところです。アイスランドを訪問する日本人旅行者にはやはり温泉好きが多いようで、日本語で当地を検索すると多くの方がこの地で入浴を楽しんでいることがわかります。そんな私も遂にその仲間入りを果たすことができました。

 
野湯といっても、ただポツンと入浴スポットがあるのではなく、辺り一帯は観光拠点として管理されており、中心部にはインフォメーションセンターが設置されています。またそのまわりはキャンプ場となっており、この日は生憎の天気ながら、多くのテントが設営されていました。

 
アイスランド内陸部の道は、その多くが未舗装の悪路ですが、当地へのアクセス道路もご多分にもれず、ゴール手前で橋が架かっていない川を車ごとジャブジャブ入って渡河しなきゃいけないので、ここまで辿り着ける車はみな4WDで車高の高い車種ばかりです。もし渡河できない一般の乗用車の場合は、川の手前で車をとめて歩道専用の橋を渡れば大丈夫。
そんな立地にもかかわらず、ここには車を改造した小さな売店があり、軽食類などを購入することができます。驚くなかれ、VISAカードが利用可。私はコーヒーをいただきました(たしか300KRくらい)。

 
こんな立派なトイレ&シャワー小屋まで設置されています。入浴ポイントには着替える場所が無いので、人目が気になる方はここで水着に着替えることになります(水着必須!)。 着替えたら荷物を持って、いざ入浴ポイントへ! なお夏でも結構寒いので、水着一枚ではなく、何か羽織っておくことを強くお勧めします。ちなみにこの日は7月下旬なのに11.1℃でした。寒いでしょ。

 
入浴ポイント周辺は湿地帯で、踏み込みが禁止されているため、木道の上を歩いていきます。木道入口には4ヶ国語表記で注意書きのプレートが設けられており、曰く天然温泉の入浴は自己責任でお願いね、とのこと。

 
湿原には幾筋もの沢が流れているのですが、水中の藻が日本の温泉でも見られるような独特のものだったので、もしやと思って木道の上から沢の水に手を触れてみると、案の定、そこには温かいお湯が流れていました。


木道下の沢の幅が広くなっている所をじっくり観察していると、底からプクプクと泡が連続して上がってきました。どうやら川底からお湯が湧いているようです。

 
わかりにくい画像で申し訳ないのですが、木道の終端であるここが入浴ポイントです。そこには木造の小さなデッキがポツンとあるだけで、その手すりにみなさんは荷物やらタオルやらを掛けています。野ざらしですから雨天時には濡れちゃうこと必至。従ってビニール袋などの防水グッズを予め用意しておきましょう。また盗難の心配もありますが、貴重品は目の届くところに置いておきましょう(治安が良いので大丈夫かとは思いますが…)。


さぁ入浴してみましょう。んんん? ぬるいぞ! 温度を測ってみたら34.3℃しかありませんでした。ヨーロッパ人だとこの温度で丁度良いんでしょうが、熱湯を愛する日本人にはぬるすぎる。外気温が低いので、一度入ったら寒くて外に出られなくなっちゃう温度です。そこで、どこか他に温かい場所は無いかと上述の足元湧出ポイントへ戻ってみると…


山の方からお湯が流れ込んでくる付近ではなんと49.3℃もありました。今度は逆に熱すぎる…。でもそこからちょっと離れると、日本人向きの湯加減に落ち着いてきたので、そこでじっくり肩までお湯に(というか沢に)身を浸からせました。欧米人には熱いためか、ここで入浴する人は私以外いませんでした。でも大自然に囲まれながらの露天風呂はとっても気持ち良く、いつまでも入っていたい心地でした。野湯ですから、川底から泥や苔などが舞いあがりますので、その点は予めご承知置きを。

 
熱いお湯が流れてくる沢の上流を辿ってみると、そこには2パターンの湧出点がありました。ひとつは自然に地中から湧き出て、そのまま流れを形成しているもの(画像左(上))、もう一方は人工的に造られた源泉井から湧出しているものです(画像右(下))。


源泉井の枡から出てくるお湯の温度はなんと67.1℃。そんな高温とは露知らず、興味を持った観光客がお湯に触れて火傷をしている光景を何度も目撃しちゃいました。訪問時にはくれぐれもご注意を。


●ランドマンナロイガルの日帰りツアー
今回のランドマンナロイガル訪問に際して利用したツアーは、"Reykjavík Excursions"のツアー番号RE92番、"Landmannalaugar & Saga Valley" です。リンク先をご覧いただくと分かりますが、このツアーの催行曜日は火・木・日となっています。それでは、他の曜日はダメなのかといえば、もうひとつのツアー社である"Iceland Excursions"が同内容・同料金のツアー(AH-32 "Landmannalaugar by bus")を月・水・土に催行しており、金曜以外ならどちらかの旅行社を選べばよいわけです。両方とも日本のアイスランド航空を通じて予約できますし、インターネットからの直接予約も可能(ちなみに私は後者を選択)。


ツアーを予約するとメール等でバウチャーが送られてきますので、それをツアー参加前に正式なチケットと引きかえます。私はケフラヴィーク空港到着ロビーにある"Reykjavík Excursions"でアイスランド到着日の深夜12時に引きかえました。窓口のおばちゃんはバウチャーを見て数秒で正式な券を発行してくれましたが、それによって出てきたのがこれ。券と言うよりレシートみたいですね。

【8:00 バスターミナル出発】

レイキャヴィク市街のホテルに宿泊していれば、ホテルまで迎えに来てくれます。いや、そのはずでした。出発時間の30分前にホテルの前にいればよいのですが、私が泊まったホテルには直接迎えに来てくれず、おかしいなと思って表通りに出たら、その近くの道路路上にてピックアップされました。もし館内のロビーでのんびり待っていたら、誰も迎えに来てくれなかったかもしれません。
ミニバスにてバスターミナルへ向かい、そこで切符を提示してバスへ乗車します。何台も同じようなバスが並んでいますので、フロントガラスに貼られたツアー名や番号をよく注意しながら自分の乗るべきバスを探しました。バスは車高が高く、渡河が可能な仕様です。バスの入り口前に立っているおじさんが今回のガイドさんです。参加者は20名ほど。アジア人は私一人だけ。

【9:00 セルフォスにてトイレ休憩】
環状道路(1号線)を走り、途中の街セルフォスのガソリンスタンド「N1」にて20分間のトイレ休憩。他の欧州各国と同様にガソリンスタンドは日本のコンビニを兼ねているので、ここで飲食類を買うことも可能。ランドマンナロイガルには一応上述のように軽食などを購入できる簡易売店はあるものの、まだこの時点ではどんな品揃えがあるのかわからなかったので、私はこのセルフォスでドリンク類とサンドウィッチを買い込んでおきました。

【10:20 ヒャルパルフォス Hjalparfoss】
 
セルフォスから内陸部へと道を転じること1時間、小さいながらも綺麗な滝「ヒャルパルフォス」に到着。ここで20分の小休止です。2つの川が落ちながら合流する神秘的な滝。単に2本の川が合流しているだけではなく、この滝が流れている川の基盤岩は柱状節理になっていました。

 
周囲には日本ならば高山植物に当てはまるような可憐な植物の花が咲き乱れていました。初訪氷の私はこの時夢中になってこうした植物をカメラに収めていましたが、次第にこの手の植物は雑草のごとくあちこちに自生していることに気付き、撮るのをやめてしまいました。日本では高地じゃないと見られないような気象・地理条件が、当地では大して標高の高くない場所でも当てはまってしまうので、高山植物は全然珍しくないんですね。

【11:15 Hrauneyjar】

溶岩に覆われた不毛の大地を突き進むバスの車窓は、次第にモノトーンになっていきます。
荒野の一軒宿にて20分のトイレ休憩。コーヒーなどを飲むことも可能。ここからバスは舗装道路を離れ、未舗装の悪路(F208号)へと突っ込んでいきます。

【12:00頃 撮影タイム】
 
見渡す限りグレー一色の荒野が広がる高台にて暫しの撮影タイム。まさに礫砂漠。不毛の大地です。日本では決して見ることができない光景に心を奪われました。でも足元をよく見ると、礫の隙間に根を下ろした健気な草が、可憐で小さな花を咲かせていました。

【12:40 カルデラ湖(名前失念)にて撮影タイム】
 
礫ばかりが広がる荒涼な大地は乾燥しきっているのかと言えば、決してそんなことは無く、この日も雨が降っていましたし、ご覧のようなカルデラ湖も存在しているのです。ここでも15分間の撮影タイムが設けられました。でも小高い山の上は前後を何も遮るものが無いため、猛烈に強い風が私たちに吹き付け、その強さは直立できないほどでした。秒速20m以上はあったはず。


視線をカルデラ湖とは反対側に向けると、荒野の中を一台の白いバスが走り抜けていました。道路と言うより、轍の跡を辿って走っているような感じです。

【13:00 Frostastadavatn湖にて撮影タイム】
 
カルデラ湖から10分も走らないうちに再び撮影のため停車。いままでとは打って変わって、今度は地面がモスグリーンで覆われています。これは溶岩の上に苔がビッシリと生えているためで、従って一般的な山の緑と違い、独特の色彩と陰影が現れているわけです。私はこの色を見て、阪急電車のシートを思い出してしまいました。


この谷の先に、めざすランドマンナロイガルが!

【13:20 ランドマンナロイガル到着】

バスは橋が架かっていない2本の川に直接入って渡河し、13:20、ようやく目的地に到着しました。
温泉(野湯)の様子は上述の通りです。
ここでは温泉の他、トレッキングも旅程に含まれているので、まずはトレッキングを開始。

【13:45 トレッキング開始】
 
インフォメーションやキャンプ場の南側に伸びるトレイルを進んでいきます。やがて川が並行し、その川を遡っていきます。運悪く、歩き始めたと同時に雨が降り出し、全員レインコートに身を包みながらのトレッキングとなってしまいました。登りが続きますが、勾配は緩やかなので、どなたでも気楽に歩けるでしょう。

 
溶岩がまるで林のように下からニョキニョキと立っている不思議な地形の中を進んでいきます。一部には雪が残っていました。明らかに単なる雪ですが、ツアー参加者はみな「これは氷河?」とガイドに訊いており、みなさん雪渓や残雪と氷河の区別があまりお分かりではないご様子。


途中で先の方を眺めると、白い噴煙らしきものが上がっているではありませんか。これはもしや、私の大好きな噴気孔では。期待に胸が膨らみます。


こんなデカい黒曜石の原石も、ごく自然に道端にあったりします。盗掘に遭わないのが不思議ですが、ガイド曰く、奥の方に行けばもっと純度の高い黒曜石が存在しているとのこと(でも今回はそこまで行きません)。

【14:50 折り返し地点の噴気孔】
 
先ほど見えた噴気孔までたどり着けました。ここで道を折り返し、今度は北側の道で山を下っていきます。
噴気孔からは鼻を刺激する硫化水素の匂いが強く漂ってきます。この匂いって日本もアイスランドも一緒なのね…。噴気孔には柵なんてありませんから、不用意に近づきすぎて火傷しても自己責任です。


噴気孔はそこだけではなく、周囲の山肌のあちこちから白い蒸気が上がっていました。火山活動が活発なんですね。

 
麓に広がる広大な湿原。雨模様ですが、この壮大な景色にはうっとりしてしまいました。湿原をよく見ると、ところどころ白く染まっている個所があります。その白い箇所に近づいてみると、ワタスゲが群生をなしていました。高山じゃないのにこの手の植物と出会えるのは、冷涼なアイスランドならでは。

【15:50 トレッキング終了】
 
ランドマンナロイガルの野湯が見えてきたら、もうトレッキングはおしまい。勾配の少ない約2時間のお手軽な行程ながら、大自然の美しさや壮大さ、不思議さを楽しめる充実したトレッキングでした。

【16:00 天然露天風呂入浴】
(温泉については当記事の上半分をご覧ください)
さて、ここで問題発生。ツアー参加者に歩調の遅い高齢者がいたため、トレッキングの時間が予定を大幅にオーバーしてしまい、その後に用意されていた野湯の入浴時間が思いっきり削られ、わずか20分しか入浴することができませんでした。しかも大雨…。当初は16時出発でしたが、何とかお願いして無理やり20分捻出してもらいました。当ページの上部で取り上げているランドマンナロイガルの野湯について、あまり記述や画像が少ないのは、入浴時間があまりに少なかったためです。ツアーは自分の自由で行動できないのが残念なところ。でも入浴できたのでOKとしましょう。
それにしても20名近い参加者で、入浴したのは私を含めて3名だけ。時間が無かったからか、あるいは寒いからか、はたまた欧米人にとって温泉入浴なんてどうでもよいことなのか…。

【16:20 ランドマンナロイガル出発】
ここからレイキャヴィクまで約4時間の道のりを戻ります。途中、F225号を走ってヘクラ火山の麓にちょこっと寄ったり、ヘトラでトイレ休憩しながら、環状道路に戻り、バスはひたすら西へと走っていきます。

【20:10 レイキャヴィクに戻る】
まる1日費やしたツアーもようやく終了。帰りはツアーバスに乗ったまま、ホテル近くで降ろされました。高緯度なので夜8時でもまだまだ外は明るいので、私はそのままレイキャヴィクを街歩きしました。

コメント (8)
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