温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

ホテル談露館

2011年12月10日 | 山梨県
 
甲府市街の中心部にどっしり構える「ホテル談露館」は来年で開業125年を迎える老舗ホテルなのですが、街中のハイソなホテルにもかかわらず日帰り入浴で温泉を利用できると知り、先日訪問してみました。


 
地方の名士が集う一昔前のサロンのようなフロントとロビー。風格漂ってます。雰囲気に圧倒されそうになり、貧乏根性が沁みついている私は気軽に入浴をお願いして良いか迷ってしまいました。


 
初めての訪問である旨を告げると、フロントのお姉さんがお風呂まで丁寧に案内してくれました。そのあたりのホスピタリティはさすがです。さて案内してくれた先はフロント右手のラウンジの壁際に立っている衝立の前。場所といい、雰囲気といい、いかにもトイレではありませんか。別に用を足したいわけではないので、きょとんとした顔でお姉さんを見つめると、私のようなリアクションには慣れているといった調子で「こちらが浴室でございます」とのこと。衝立の向こうが浴室の入口なのですが、どっしりとした風格ある館内に比してあまりに小さいために拍子抜けしてしまい、また浴室のドアもそっけないので、お風呂じゃなくて機械室ではないかと訝しくなりました。なお女湯のドアには暗証番号ロックが設置されています。



浴室入口には「掛け流し」である旨がしっかり明示されていました。


 
駅前ビジネスホテルの「大浴場」みたいな、味も素っ気もない実用本位の狭い脱衣所。とても綺麗でしっかり管理されているのですが、その狭さや味気無さのため、客用ではなく従業員用のお風呂に迷い込んでしまったのではないかと不安になり、入口扉の表示を確認してしまったほどです。共用の水回りを軽視してしまう設計は、昭和の日本のよろしくない発想の現れですね。
洗面台にはくくりつけのドライヤーが2台ありますが、これまた一昔前のビジホにあったようなパワーが弱くヤル気が感じられない代物であるため、これとは別に家電店で売られている一般的なドライヤーも用意されていました。


唯一の救いはタオルが使い放題であるところかな。もっとも、バスタオルではなく、何度も洗ってゴワゴワになったフェイスタオルですから、河川敷のゴルフ場のお風呂みたいですけど。


 
浴室も浴槽がひとつあるだけの至ってシンプルな内湯なのですが、建材が伊達じゃない。底こそタイル貼りですが、浴槽廻りは重厚な大理石が用いられているのであります。見た目のみならず、触れた時の感触も優しく上品。ようやくここにきて老舗ホテルの風格が本領を発揮してくれました。浴槽まわりのスペースもゆったりと確保されています。大理石の上に裸で腰かけられる機会なんて滅多にありませんよね。

室内の換気状態も良好で、冬だというのに湯気がほとんど籠っておらず、快適に過ごせました。ただ、換気扇のパワーがちょっと強いためか浴室内が負圧になっているらしく、脱衣所の扉を閉めると、その隙間から侵入しようとする空気がヒューヒューと音を立てて五月蠅かったのが残念なところ。

洗い場のカランはシャワー付き混合栓5基が十分な間隔をあけて設置されており、隣との干渉を気にすることなく利用することができました。


 
"DANROKAN"と彫られた大理石の湯口から源泉がそのままの状態で落とされ、しっかり完全掛け流しの状態で提供されています。うっすら琥珀色の透明で、薄い塩味+モール風味+ほろ苦み+はっきり強いタマゴ味+新鮮な感じの(硫酸塩泉でありがちな)金気味が少々、そして浴室へ入った途端に鼻孔をくすぐるモール臭+たまご臭+弱金気臭+微かなゴムのような鉱物油臭。ツルスベの強い心地よい浴感で、1分も浸かっていると全身に細かな気泡がびっしり付着します。なお分析表を見ると遊離二酸化炭素は0.0mgなので、この気泡は炭酸ガスではないのでしょう。


 
浴槽の縁からしっかり溢れ出るお湯。常時この状態ですから、浴槽のお湯は新鮮そのもの。実にすばらしいフィーリングです。湯加減もちょうどよく、浴感も素晴らしいので、入浴中は夢心地。後を引くお湯なので、なかなか出られませんでした。


 
さらに特徴的なのが湯の華でして、まるで野沢温泉の新(真)湯を彷彿とさせるような、真っ黒の羽根状&綿状の湯の華がたくさん湯の中に浮遊しており、浴槽の底には沈殿としても溜まっています。このため湯船に体を沈めると黒い沈澱が舞い上がり、大量の湯の華が体にまとわりついてきます。
桶でお湯を掬うだけでもこんなに入っているのですから、その量がどれだけ多いかおわかりいただけるでしょう。



なお浴室ガラス窓の外には猫の額ほどの和風中庭が設けられていますが、窓ガラスが曇っていたため浴室内からはほとんど見えず、この中庭の存在に気付かないままお風呂から上がってしまうお客さんも多いのでは。


掛け値なしでお湯の質は、甲府盆地界隈の温泉の中でも屈指だと思います。大理石の浴槽も実に質感が良く、分かる人にはわかるラグジュアリ感を醸し出しているので、さすが老舗だと感心させられました。あまりのフィーリングの良さに恍惚としてしまった私は、内湯ひとつしかないのに、2時間弱はじっくりと長湯してしまいました。
ただ如何せん、浴室が狭いのに料金が高い。お湯の質なんてどうでも良い人にとっては最悪なコストパフォーマンスでしょう。もっとも高いだけあって、客層は限定されますから、ゆったりと静かな環境における湯あみが保証されるでしょうし、お湯の質を楽しみたい方にとっては、それだけのお金を支払う価値があると思います。このあたりは各個人の金銭感覚的な問題になってしまいますね。
露天風呂付きの客室もあるそうですので、外来入浴ではなく宿泊するのであれば、そのようなお部屋を利用すると面白いかもしれません。


甲府市内温泉旅館組合第一号泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉 45.2℃ pH7.4 湧出量未測定 溶存物質1405.4mg/kg 成分総計1405.4mg/kg
Na:367.5mg(88.05mval%), Cl:450.0mg(66.13mval%), HCO3:265.2mg(22.67mval%)


甲府駅より徒歩10分弱(約700m)
山梨県甲府市丸の内1-19-16  地図
055-237-1331
ホームページ

5:00~翌2:00
1050円
貴重品はフロント預かり、シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント
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