今回取り上げる野湯はあまり大っぴらに公開しちゃうと面倒なことになりそうなので、タイトルでは伏字を使わせていただきました。でも野湯ファンでしたらおそらく皆さんご存知の有名な場所ですので、いまさらここで委細を説明する必要はないでしょう。2012年9月末現在でも問題なく入れる状態でしたよ、という事実をお伝えしたいがために今回レポートさせていただきます。
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国道の駐車帯に車をとめて、簡単な登山の装備を整えていざ出発です。駐車帯の斜め前から伸びている林道は轍が残るばかりで存在感が無く、現在はあまり使われていないものと思われます。道の入口には「工事中 立入禁止」という看板が立っていましたが、どこにも工事しているような気配は無く、そもそも私は漢字が読めないために看板の意味がわかりませんから、ここは知らんぷりしてそそくさと先へ進みます。若干のカーブはあるものの、国道から途中まではほぼ直線の道です。このあたりではクマが出没するらしいので、鈴を鳴らしながら周囲の様子に注意して歩きました。
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スタート地点から約10分で噴気帯のガレ場に突入です。いまにも落石してきそうな岩がゴロゴロしているガレをひたすら登ってゆきます。生命の息吹が全く感じられない、荒涼とした死の世界であります。
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この山は「活火山ランクC」なんだそうですが、噴気活動が活発であることには変わりなく、ガレのあちこちから噴気が上がっていました。噴気孔の周りは硫黄で真っ黄色です。
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当地は品質・埋蔵量とも世界一と賞賛された硫黄鉱山でしたが、昭和38年に閉山となっています。石油からの脱硫が義務付けられて、硫黄がその副産物として安価で生産されるようになった昭和40年代以降、国内の硫黄鉱山は一斉に閉山していますが、こちらの鉱山はそれよりちょっと早めに閉じてしまったようです。ガレ場を登っているとこのように点在している当時の遺構を目にするのですが、閉山から約50年という年月が経っているのに、いまだに遺構が残っているだなんて信じられません。地熱の影響で冬でも積雪しない環境が、遺構を潰させないのかもしれませんね。
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駐車帯から歩くこと約15分、お目当てのブルーシート野湯にたどり着くことができました。最近は訪問レポートをネット上であまり見かけなかったので、もしかしたら…と悲観的な観測を抱いていたのですが、無事に露天風呂が残っていること、そして尽きることなくホースからお湯が注がれ続けていることを確認でき、安堵ともに感激の念すら抱いてしまいました。
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しばらく誰も入っていないのか、ブルーシートの湯船の底には硫黄が分厚く沈殿しており、上澄みの無色透明なお湯とはっきり分離していました。温度は45.3℃でやや熱めですが、問題なく入れる湯加減です。
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湯船に手を突っ込んで掻き混ぜると、底に溜まっていた硫黄の沈殿が攪拌されて、一気に黄色みを帯びた濃厚な白濁湯と化しました。
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山麓の樹海、そして彼方の稜線を見晴らす絶好のロケーションですね。北海道らしい雄大な景色を独り占め。まさに孤高の露天風呂です。
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ということで入浴させていただきました。浅い造りなので寝そべっても全身浴は無理ですが、熱いお湯を肩などにかけていれば十分に温まれます。麓には強烈な酸性泉が湧く道内屈指の温泉街がありますが、そこのお湯より酸性度は低いものの、はっきりとした酸味(口腔の収斂)が感じられ、熱さゆえか酸性ゆえか泉質の問題なのか、お湯に足を入れると脛にピリピリとする刺激が走りました。硫黄分が非常に濃く、入浴中は粉っぽい浴感が得られ、湯上りもベタベタというか引っ掛かりがあるような感触が肌に残ります。またお湯に浸かると硫黄臭が全身にしっかりこびりつき、しばらくは臭いが取れません。濃厚な酸性硫黄泉が好きな方にはたまらないお湯ですね。
ところで上述のように、アプローチする道を含めてこの山は(観光客に対して大々的に開放されている一部エリアを除き)立入禁止となっており、その理由として数年前に発生した落石事故が挙げられるのですが、某日、地元関係者にお会いしたときに、この山の立入禁止が解除される見込みは無いのか伺ってみたところ、地元の人間が声をあげればおそらく何とかなるだろう、しかしそれには町・北海道・環境省・営林署など、多くの役所が絡んでいて手続きが煩雑になってしまうため、結果的に放ったらかしになっている、という意外な返答を聞くことができました。硫化ガスや落石の危険性でピリピリしているというより、手続きに多大な労力を要することが立入禁止を長引かせている真相だったようです。尤も、万一手続きがクリアになって登山ができるようになったとしても、依然として落石やガス中毒の危険性は残っているわけでして、わざわざ苦労して観光客に開放してまでリスクを負うような真似は誰もしたくないでしょうから、現状のまま放置されているのも致し方ないのかな、いや、開放されちゃうとこの露天風呂に入れなくなる可能性もあるから現状でいいのかもしれないな、などと部外者の私は勝手に考えてしまいました。
いずれにせよ、まだこの露天風呂にはちゃんと入れますので、取り急ぎご報告まで。
野湯につき温泉分析表なし
北海道川上郡某町某所
立入禁止エリアにつき訪問の際は自己責任で。
熊と落石と硫化水素ガスに注意。
私の好み:★★★
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国道の駐車帯に車をとめて、簡単な登山の装備を整えていざ出発です。駐車帯の斜め前から伸びている林道は轍が残るばかりで存在感が無く、現在はあまり使われていないものと思われます。道の入口には「工事中 立入禁止」という看板が立っていましたが、どこにも工事しているような気配は無く、そもそも私は漢字が読めないために看板の意味がわかりませんから、ここは知らんぷりしてそそくさと先へ進みます。若干のカーブはあるものの、国道から途中まではほぼ直線の道です。このあたりではクマが出没するらしいので、鈴を鳴らしながら周囲の様子に注意して歩きました。
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スタート地点から約10分で噴気帯のガレ場に突入です。いまにも落石してきそうな岩がゴロゴロしているガレをひたすら登ってゆきます。生命の息吹が全く感じられない、荒涼とした死の世界であります。
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この山は「活火山ランクC」なんだそうですが、噴気活動が活発であることには変わりなく、ガレのあちこちから噴気が上がっていました。噴気孔の周りは硫黄で真っ黄色です。
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当地は品質・埋蔵量とも世界一と賞賛された硫黄鉱山でしたが、昭和38年に閉山となっています。石油からの脱硫が義務付けられて、硫黄がその副産物として安価で生産されるようになった昭和40年代以降、国内の硫黄鉱山は一斉に閉山していますが、こちらの鉱山はそれよりちょっと早めに閉じてしまったようです。ガレ場を登っているとこのように点在している当時の遺構を目にするのですが、閉山から約50年という年月が経っているのに、いまだに遺構が残っているだなんて信じられません。地熱の影響で冬でも積雪しない環境が、遺構を潰させないのかもしれませんね。
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駐車帯から歩くこと約15分、お目当てのブルーシート野湯にたどり着くことができました。最近は訪問レポートをネット上であまり見かけなかったので、もしかしたら…と悲観的な観測を抱いていたのですが、無事に露天風呂が残っていること、そして尽きることなくホースからお湯が注がれ続けていることを確認でき、安堵ともに感激の念すら抱いてしまいました。
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しばらく誰も入っていないのか、ブルーシートの湯船の底には硫黄が分厚く沈殿しており、上澄みの無色透明なお湯とはっきり分離していました。温度は45.3℃でやや熱めですが、問題なく入れる湯加減です。
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湯船に手を突っ込んで掻き混ぜると、底に溜まっていた硫黄の沈殿が攪拌されて、一気に黄色みを帯びた濃厚な白濁湯と化しました。
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山麓の樹海、そして彼方の稜線を見晴らす絶好のロケーションですね。北海道らしい雄大な景色を独り占め。まさに孤高の露天風呂です。
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ということで入浴させていただきました。浅い造りなので寝そべっても全身浴は無理ですが、熱いお湯を肩などにかけていれば十分に温まれます。麓には強烈な酸性泉が湧く道内屈指の温泉街がありますが、そこのお湯より酸性度は低いものの、はっきりとした酸味(口腔の収斂)が感じられ、熱さゆえか酸性ゆえか泉質の問題なのか、お湯に足を入れると脛にピリピリとする刺激が走りました。硫黄分が非常に濃く、入浴中は粉っぽい浴感が得られ、湯上りもベタベタというか引っ掛かりがあるような感触が肌に残ります。またお湯に浸かると硫黄臭が全身にしっかりこびりつき、しばらくは臭いが取れません。濃厚な酸性硫黄泉が好きな方にはたまらないお湯ですね。
ところで上述のように、アプローチする道を含めてこの山は(観光客に対して大々的に開放されている一部エリアを除き)立入禁止となっており、その理由として数年前に発生した落石事故が挙げられるのですが、某日、地元関係者にお会いしたときに、この山の立入禁止が解除される見込みは無いのか伺ってみたところ、地元の人間が声をあげればおそらく何とかなるだろう、しかしそれには町・北海道・環境省・営林署など、多くの役所が絡んでいて手続きが煩雑になってしまうため、結果的に放ったらかしになっている、という意外な返答を聞くことができました。硫化ガスや落石の危険性でピリピリしているというより、手続きに多大な労力を要することが立入禁止を長引かせている真相だったようです。尤も、万一手続きがクリアになって登山ができるようになったとしても、依然として落石やガス中毒の危険性は残っているわけでして、わざわざ苦労して観光客に開放してまでリスクを負うような真似は誰もしたくないでしょうから、現状のまま放置されているのも致し方ないのかな、いや、開放されちゃうとこの露天風呂に入れなくなる可能性もあるから現状でいいのかもしれないな、などと部外者の私は勝手に考えてしまいました。
いずれにせよ、まだこの露天風呂にはちゃんと入れますので、取り急ぎご報告まで。
野湯につき温泉分析表なし
北海道川上郡某町某所
立入禁止エリアにつき訪問の際は自己責任で。
熊と落石と硫化水素ガスに注意。
私の好み:★★★