温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

野沢温泉共同浴場

2012年10月18日 | 青森県

キリストの墓伝説で一部の方には有名な三戸郡新郷村に、温泉ファンから熱く支持されている湯量豊富な温泉があると知り、どんなところか興味津々、行ってみることにしました。その名も野沢温泉。信州じゃないんですね。
五戸からとっても走りやすい広域農道をひたすら西進し、辻々に立っている「野沢温泉」あるいは「新郷温泉館」の看板が指し示す方向へ曲がりながら人家皆無な山奥へと入ってゆくと、やがて「新郷温泉館」に差し掛かりますが、今回はここを通過して更に600メートルほど奥へ前進、ようやく目的地である一軒の建物が目に入ってきました。


 
こちらの温泉がファンの間から支持される要因のひとつが、週に4日しかない営業日。温泉に限らずレア度が高まれば高まるほどファンやマニアは触手を伸ばそうと必死になるわけですが、週の半分しか営業していないとなれば、その分訪問するハードルは高くなるわけでして、ましてや山奥のアクセスしにくい立地となれば、余計に訪問したくなる意欲も高揚してしまうものです。尤も週末は営業していますから、私のような県外からの旅行者にとっては、そんなに難関ではないのかもしれませんが。



一応駐車場は用意されているのですが、その面積が狭いため、浴場が面している道路には路駐が多く見られました。小さな浴場にこれだけの車が集まっているのですから、館内は相当混雑しているんだろうな…。この道路は実質的にこの温泉の前で行き止まりですから、路駐しても大した問題にはなりません。


 
浴場に隣接している神社境内に立てられいる縁起書には野沢温泉の由来が説明されていました。曰く、
昔々、五郎兵衛という男が大きな鷺を弓で射ったら、矢は羽に当たったものの、鷺はかろうじてその場から飛び去った。鷺が飛んでいった方向へ五郎兵衛が追跡してみると、鷺が矢で痛めた羽を水で癒していた。鷺は人影に気づいてその泉から逃げたが、五郎兵衛が泉へ近づいてみると温泉であることに気づき、発疹に悩む7歳の娘の体をその温泉で洗ったら、すっかり治癒して全身綺麗な肌の子に生まれ変わった…
とのこと。鷺がまつわる開湯伝説は当地に限らず、飛騨の下呂温泉や伊予の道後温泉など、全国的に見られますね。



券売機で料金を支払い、カウンターのおばちゃんに券を手渡して中へ。カウンター前では新郷村特産の飲むヨーグルトの他、各種おつまみ類が販売されていました。お風呂は男女別の内湯が一室ずつ。脱衣所はごくごく一般的な共同浴場らしいつくりです。
浴室は全面タイル貼りで明るい空間となっており、(男湯の場合は)室内の左側に2基、右側に9基のシャワー付き混合水栓が設置されていました。この水栓からは源泉100%のお湯が出てきます。湯船は大きな扇形の浴槽がひとつ据えられており、6人は同時に入れそうなサイズです。



昭和の高度成長期に制作されたSFものに登場してくるロボットのような、あるいは宇宙刑事ギャバンの目のような、横長のステンレスの湯口から源泉が大量に注がれており、これのみならず浴槽の底にあけられている穴2つからもボコボコと大きな泡を伴いながら源泉が噴き上がっています。
お湯は無色で綺麗に澄みきっています。湯面からはタマゴ臭と噴気孔的硫化水素臭を足して2で割ったような硫黄臭がふんわりと漂っており、湯口に鼻を近づけるとその匂いははっきりと香ってきました。口にするとほぼ無味、弱めながらもツルスベの浴感が肌に伝わってきます。無色透明でアルカリ性、しかもタマゴ臭もはっきりしているこの手のお湯は、えてして強いツルスベ感を有していることが多いのですが、思いのほかこちらのお湯はその浴感が強くなくて意外でした。重曹泉ではなく芒硝・食塩泉に近い組成であること、そしてメタケイ酸が少ないことなどがその要因なのかもしれません。こうした性質によるものなのか、あるいは利用日の気温や湯加減によるものなのか、湯上りはさっぱり感よりも温熱感のほうが勝っており、なかなか汗がひきませんでした。



湯船の隣には打たせ湯もあり、当然ながら源泉100%のお湯が落とされています(私の訪問時は終始利用者がいたため撮影できませんでした)。湯船の湯はこの打たせ湯側へと大量に溢れ出していました。打たせ湯ではペットボトルやポリタンクにお湯を汲んでゆくお客さんも多く、脱衣室には「飲用許可を取得しておりませんので飲用しないでください」と書かれた注意書きが掲示されているものの、利用は自己責任として持ち帰りが黙認されているようでした。

いままで私は、三戸郡の温泉はほとんど循環消毒ばかりと思い込んでいましたが、こんな湯量豊富で完全掛け流しの温泉が存在していたとは知らず、今回初めて訪問して非常に衝撃を受けたともに、湯船へドバドバと投入される澄み切ったお湯にとても感動しました。
お風呂では常連の爺様たちが長湯しながらいつまでもお喋りし続けたり、浴槽縁に腰掛けて長居したり、あるいは床に寝そべってトドになったりと、一人当たりの利用時間が長い傾向にあり、私の訪問時、ただでさえ広くない浴室内は回転の悪さゆえに常時高い混雑度でしたが、そんな混雑が気にならなくなるほど、お湯の鮮度・投入量・そして透明度には心が奪われました。


温泉沢源泉
アルカリ性単純温泉 42.3℃ pH不明 溶存物質0.331g/kg 成分総計0.331g/kg 
Na+:63.8mg(61.91mval%), Ca++:33.8mg(37.64mval%),
Cl-:59.7mg(37.42nval%), SO4--:106.0mg(49.22mval%), CO3--:17.7mg(13.14mval%),
H2SiO3:42.0mg, CO2:0.0mg, H2S:0.0mg,

青森県三戸郡新郷村西越温泉沢1  地図
0178-78-2079

9:00~21:00(月曜のみ22:00まで) 月・木・土・日・祝営業(火・水・金休)
390円
ロッカー(100円リターン式)・ドライヤーあり

私の好み:★★★

コメント (5)
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