あけましておめでとうございます。2017年も何卒宜しくお願い致します。
新年一発目の今回は、ひょんなことから昨年11月にチャレンジすることとなった、群馬県の有名な野湯である香草温泉の探訪記をアップします。なぜタイトルの頭に「粗忽者の」という言葉を付けたのか、その理由は後ほど述べますが、今回の探訪で明らかになった自分のマヌケな所業を反省し、それを新年初回の記事にすることで年頭の所信表明の代わりとし、以って所業の克服を今年の課題としたい所存です。なお、香草温泉の場所や行き方など諸々の情報は、既に複数のサイトで取り上げられていますので、詳しい情報に関しては、他サイトをご覧ください。
さぁ、野湯へのトレッキング開始です。念のため熊除けの鈴を鳴らしながら歩くことにしました。なおスタート地点には白い看板が立てられていますが、これは草津白根山の火山活動活発化に伴い、白根山の火口から半径1kmエリアは立ち入り禁止ですよという旨を告知しているものです。今回はそこまで行かないので大丈夫。
この道は「上信越自然歩道・芳ヶ平〜草津コース」として整備されているようです。しばらくは草津高原ゴルフ場のフェアウェイを右手に見ながら、歩きやすい幅広の道を西へと進みます。
落ち葉をザクザクと踏みしめながら、森林の中を歩きます。途中で「蟻の門渡り」と称する鞍部を通過。大げさな名前の割には大したことありません。むしろその卑猥なネーミングに私の体が反応してしまい、無意味に股間がモゾモゾしてしまったのはここだけの秘密です。
スタート地点から歩くこと25分で丁字路の分岐です。角には大きな案内図が立てられていました。この分岐を直進すると数十メートルで行き止まって常布の滝を眺める展望台となり、左へ折れるとさらに先へ進めるのですが、せっかくですから、展望台へちょっと寄り道してみましょう。
展望台の彼方に落ちるひと筋の白い滝が、日本の滝百選に選定されている常布の滝なんですね。高低差は35mもあるらしく、間近で見たらさぞ圧巻なのでしょうけど、かなり離れているため、その迫力が伝わってこないのが残念。さて、滝を眺めたところで、先へ進む道へと戻ります。
展望台の分岐から5分歩いたところで、今度は常布の滝へ行く道が右へ分岐していました。しかし、この滝へ向かうルートは途中で土砂崩れが発生しているため、ここ数年は閉鎖されたまま。ほとんど廃道状態です。この分岐を目の前にして、私はちょっとした企みを思いついたのですが、とりあえずは先へ進みましょう。
冬枯れの木立の中を歩き続けると、俄然視界が開けて笹原が広がる清々しい高原へ入ります。高原の路傍には古い石像が祀られており、そこには天保年間と彫られていました。このトレッキングロードは、江戸時代から人々が往来していたのかな。路傍に建てられているので、てっきり庚申様や観音様などの系統かと思いこんでいたのですが、よく見たら、宝冠を戴き琵琶を抱えていました。どうやら弁財天のようです。ここはかつて、地元の方々にとって水神にまつわる大切な場所だったのでしょう。
スタート地点から50分強で、沢に架かる橋へ辿り着きました。さらさらと流れる沢は一見清らかに見えるのですが、登山地図によればここは「毒水」と称するらしく、その名前が示唆するように、沢には生物が生息しにくい酸性の水が流れていました。さて私はここから道を逸れて沢を遡ります。
沢の左右両岸に転がる岩の上をピョンピョン飛び跳ねながら、酸っぱい水が流れる沢をひたすら遡ります。
途中でいくつかの小さな滝が行く手を阻むのですが、アスレチック気分で滝の脇を巻いて乗り越えれば、容易にクリアできました。
さらに沢を遡って小さな滝をいくつかかわしてゆくと、眼前に大きな滝が立ちはだかりました。
中国故事の鯉じゃあるまいし、さすがに滝は遡れませんので、私はその右側の岩壁を三点支持でよじ登りました。以前この岩壁にはロープが垂れ下がっていたそうですが、いまは切れて消失していますので、自分の力でよじ登る他ありません。岩の高低差は5メートル程度かと思われますが、それでも登攀する際の恐怖感はなかなか。登れたは良いけど、怖くなって帰りに降りられなくなったらどうしよう…。
岩を登りきったら、今度は笹薮の斜面に突入してさらに上へと登っていきます。笹薮を登りきると、ロープの残骸が藪の中に埋もれていました。
垂直に落ちる滝の上へ出たら、今度はなめ滝を脇を上がります。ここにはロープが残っていましたが、部分的に細くなっており、もうすぐ切れそうな感じ。テンションをかけたらプチッと切れちゃうこと間違いないので、私はこのロープを使わず、自分の手足でなめ滝の岩をよじ登りました。
なめ滝を登ってゆくと、硫化水素ガスを放出している洞穴が右手に現れました。黄色い硫黄の結晶がこびりついているその洞内では、少量の温泉が湧出しており、その温度は50.5℃というなかなかの高温です。驚くべきは水素イオン濃度で、なんとpH1.06というとんでもない強酸性を示したのでした。日本で最も酸性が強い温泉とされている秋田県の玉川温泉とほぼ同等ですね。
洞穴の上流側には小さな湯溜まりがあり、水平方向に走る岩壁の割れ目から温泉が湧き出て、その温泉が滴る岩の表面には、白い硫黄と温泉藻(イデユコゴメかな?)の鮮やかなグリーンが色彩美を織りなしていました。綺麗なグリーンを伝うお湯は52.0℃ですが、そのお湯が集まる湯だまりは27.1℃で、pH1.47でした。
せっかくここまで上がってきたのですから、私はその場で脱衣してこの湯溜まりに入ってみたのですが、あまりに浅いためお尻を浸すのが精一杯。しかも30℃以下ですから、ぬるいなんてもんじゃない。しかも山の上だから寒風が吹きすさんでいます。とりあえず入浴した実績を作ったら、すぐにその湯溜まりから上がり、そそくさと服を着て体温を回復させたのでした。湯溜まりには湯泥が沈殿しているため、無色透明だったお湯は、私が入るとすぐに黄色を伴う灰白色に強く濁ったのでした。画像左は濁る前、画像右は濁った後です。
さらに上流でも熱い温泉が湧出しており、なめ滝が流れる岩の表面は、至る所がクリーム色と緑色で染まっていました。
さすがにここまで登ってくると見晴らし最高。でも一人でこんな高いところにいると恐怖感が募ってくるので、これ以上は登ることなく、無理せずに来た道を戻ったのでした。
さて、本記事のタイトルに戻りましょう。なぜ「粗忽者の」温泉探訪なのか。
野湯に詳しい方ならすでにお察しですが、ここからもっと滝を登れば、まともに入浴できる湯だまりがあるんですね。でも私は事前調査が甘いため、その事実を知らず、小さな湯溜まりの尻湯で自分を納得させたわけです。上流にちゃんとした入浴ポイントがあることを知ったのは帰宅した後。労多くして功少なし。リサーチの詰めの甘さを反省しました。
2017年の湯めぐりは、量より質を目指そう。そのためには、きちんとリサーチしよう。
今回の野湯探索を通じて、そう痛感したのでした。
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新年一発目の今回は、ひょんなことから昨年11月にチャレンジすることとなった、群馬県の有名な野湯である香草温泉の探訪記をアップします。なぜタイトルの頭に「粗忽者の」という言葉を付けたのか、その理由は後ほど述べますが、今回の探訪で明らかになった自分のマヌケな所業を反省し、それを新年初回の記事にすることで年頭の所信表明の代わりとし、以って所業の克服を今年の課題としたい所存です。なお、香草温泉の場所や行き方など諸々の情報は、既に複数のサイトで取り上げられていますので、詳しい情報に関しては、他サイトをご覧ください。
さぁ、野湯へのトレッキング開始です。念のため熊除けの鈴を鳴らしながら歩くことにしました。なおスタート地点には白い看板が立てられていますが、これは草津白根山の火山活動活発化に伴い、白根山の火口から半径1kmエリアは立ち入り禁止ですよという旨を告知しているものです。今回はそこまで行かないので大丈夫。
この道は「上信越自然歩道・芳ヶ平〜草津コース」として整備されているようです。しばらくは草津高原ゴルフ場のフェアウェイを右手に見ながら、歩きやすい幅広の道を西へと進みます。
落ち葉をザクザクと踏みしめながら、森林の中を歩きます。途中で「蟻の門渡り」と称する鞍部を通過。大げさな名前の割には大したことありません。むしろその卑猥なネーミングに私の体が反応してしまい、無意味に股間がモゾモゾしてしまったのはここだけの秘密です。
スタート地点から歩くこと25分で丁字路の分岐です。角には大きな案内図が立てられていました。この分岐を直進すると数十メートルで行き止まって常布の滝を眺める展望台となり、左へ折れるとさらに先へ進めるのですが、せっかくですから、展望台へちょっと寄り道してみましょう。
展望台の彼方に落ちるひと筋の白い滝が、日本の滝百選に選定されている常布の滝なんですね。高低差は35mもあるらしく、間近で見たらさぞ圧巻なのでしょうけど、かなり離れているため、その迫力が伝わってこないのが残念。さて、滝を眺めたところで、先へ進む道へと戻ります。
展望台の分岐から5分歩いたところで、今度は常布の滝へ行く道が右へ分岐していました。しかし、この滝へ向かうルートは途中で土砂崩れが発生しているため、ここ数年は閉鎖されたまま。ほとんど廃道状態です。この分岐を目の前にして、私はちょっとした企みを思いついたのですが、とりあえずは先へ進みましょう。
冬枯れの木立の中を歩き続けると、俄然視界が開けて笹原が広がる清々しい高原へ入ります。高原の路傍には古い石像が祀られており、そこには天保年間と彫られていました。このトレッキングロードは、江戸時代から人々が往来していたのかな。路傍に建てられているので、てっきり庚申様や観音様などの系統かと思いこんでいたのですが、よく見たら、宝冠を戴き琵琶を抱えていました。どうやら弁財天のようです。ここはかつて、地元の方々にとって水神にまつわる大切な場所だったのでしょう。
スタート地点から50分強で、沢に架かる橋へ辿り着きました。さらさらと流れる沢は一見清らかに見えるのですが、登山地図によればここは「毒水」と称するらしく、その名前が示唆するように、沢には生物が生息しにくい酸性の水が流れていました。さて私はここから道を逸れて沢を遡ります。
沢の左右両岸に転がる岩の上をピョンピョン飛び跳ねながら、酸っぱい水が流れる沢をひたすら遡ります。
途中でいくつかの小さな滝が行く手を阻むのですが、アスレチック気分で滝の脇を巻いて乗り越えれば、容易にクリアできました。
さらに沢を遡って小さな滝をいくつかかわしてゆくと、眼前に大きな滝が立ちはだかりました。
中国故事の鯉じゃあるまいし、さすがに滝は遡れませんので、私はその右側の岩壁を三点支持でよじ登りました。以前この岩壁にはロープが垂れ下がっていたそうですが、いまは切れて消失していますので、自分の力でよじ登る他ありません。岩の高低差は5メートル程度かと思われますが、それでも登攀する際の恐怖感はなかなか。登れたは良いけど、怖くなって帰りに降りられなくなったらどうしよう…。
岩を登りきったら、今度は笹薮の斜面に突入してさらに上へと登っていきます。笹薮を登りきると、ロープの残骸が藪の中に埋もれていました。
垂直に落ちる滝の上へ出たら、今度はなめ滝を脇を上がります。ここにはロープが残っていましたが、部分的に細くなっており、もうすぐ切れそうな感じ。テンションをかけたらプチッと切れちゃうこと間違いないので、私はこのロープを使わず、自分の手足でなめ滝の岩をよじ登りました。
なめ滝を登ってゆくと、硫化水素ガスを放出している洞穴が右手に現れました。黄色い硫黄の結晶がこびりついているその洞内では、少量の温泉が湧出しており、その温度は50.5℃というなかなかの高温です。驚くべきは水素イオン濃度で、なんとpH1.06というとんでもない強酸性を示したのでした。日本で最も酸性が強い温泉とされている秋田県の玉川温泉とほぼ同等ですね。
洞穴の上流側には小さな湯溜まりがあり、水平方向に走る岩壁の割れ目から温泉が湧き出て、その温泉が滴る岩の表面には、白い硫黄と温泉藻(イデユコゴメかな?)の鮮やかなグリーンが色彩美を織りなしていました。綺麗なグリーンを伝うお湯は52.0℃ですが、そのお湯が集まる湯だまりは27.1℃で、pH1.47でした。
せっかくここまで上がってきたのですから、私はその場で脱衣してこの湯溜まりに入ってみたのですが、あまりに浅いためお尻を浸すのが精一杯。しかも30℃以下ですから、ぬるいなんてもんじゃない。しかも山の上だから寒風が吹きすさんでいます。とりあえず入浴した実績を作ったら、すぐにその湯溜まりから上がり、そそくさと服を着て体温を回復させたのでした。湯溜まりには湯泥が沈殿しているため、無色透明だったお湯は、私が入るとすぐに黄色を伴う灰白色に強く濁ったのでした。画像左は濁る前、画像右は濁った後です。
さらに上流でも熱い温泉が湧出しており、なめ滝が流れる岩の表面は、至る所がクリーム色と緑色で染まっていました。
さすがにここまで登ってくると見晴らし最高。でも一人でこんな高いところにいると恐怖感が募ってくるので、これ以上は登ることなく、無理せずに来た道を戻ったのでした。
さて、本記事のタイトルに戻りましょう。なぜ「粗忽者の」温泉探訪なのか。
野湯に詳しい方ならすでにお察しですが、ここからもっと滝を登れば、まともに入浴できる湯だまりがあるんですね。でも私は事前調査が甘いため、その事実を知らず、小さな湯溜まりの尻湯で自分を納得させたわけです。上流にちゃんとした入浴ポイントがあることを知ったのは帰宅した後。労多くして功少なし。リサーチの詰めの甘さを反省しました。
2017年の湯めぐりは、量より質を目指そう。そのためには、きちんとリサーチしよう。
今回の野湯探索を通じて、そう痛感したのでした。
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