温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

上山田温泉 瑞祥 上山田本館

2017年01月06日 | 長野県
 
今回記事から連続して、昨年冬に訪れた信州の温泉を取り上げます。まずは日帰り専門の温泉入浴施設「瑞祥 上山田本館」から。妻面に施設名を表した和の趣きの建物はかなり大きく、単なる温泉浴場というよりスーパー銭湯に近い規模です。池に架かる小さな橋を渡って玄関へ。


 
明るく広いフローリングのロビーには薪ストーブが設置され、古い家具なども置かれて、ぬくもりある空間になっていました。
券売機で料金を支払い、その券をフロントに手渡して浴場へ入ります。カウンターを挟んで右手が女湯、左手が男湯です。


 
浴室のドアを開けた瞬間、硫黄の匂いがフワッと香り、その芳香に思わず心を躍らせてしまいました。室内は広々している一方、明るさを抑えて落ち着きのある雰囲気を作り出しており、のびのび且つゆったりと入浴を楽しめます。内湯の広い主浴槽では巨大な岩が屹立しており、まるで山奥の切り立った深い渓谷で湯浴みしているかのようです。

浴槽の中央部にちょこんと突き出た岩からお湯が落とされており、ふんだんにかけ流されています。使用源泉は、千曲温泉から供給されている混合泉。湯船のお湯はほぼ無色透明ながら僅かに潮汁のような微濁を呈しており、湯中では白い湯の華がチラホラ舞っていました。湯口に備え付けのコップで飲泉してみますと、焦げ風味と渋みを伴うタマゴ味と匂いが感じられ、湯中ではスルスベの滑らかな浴感が肌に伝わり、適温且つ心地良いフィーリングなのでとても気持ち良く、いつまでも浸かっていたくなります。


 
巨大岩の内湯と向かい合っている洗い場には、計18基のシャワー付きカランが3つの島に分かれて取り付けられています。そんな洗い場の床には小さな穴が開いており、下からお湯が静かに吹き上がっていました。これは信州の温泉でしばしば見られるサイフォン式排湯であり、特に戸倉上山田温泉では「亀の湯」や「国民温泉」など長年営業している各浴場で見られる伝統的なスタイルです。主浴槽のお湯は縁からのオーバーフローのほか、床下の配管を通じてここからも排出されています。あえて工事の手間がかかるこの方式を採用しているのですから、運営者の方はきっと当地の伝統を尊重しているのでしょうね。



内湯奥の露天風呂出入口付近には、サウナのほか、ジェットバスや水風呂が配置されていました。訪問したのは冬でしたから、はじめのうちは水風呂と無縁かと決め込んでいたのですが、ここのお湯は適温なのに力強く火照るので、長湯して体が逆上せかかったタイミングでこの水風呂にザブンと飛び込むと、一気にクールダウンしてめちゃくちゃ爽快でした。冬の水風呂も良いものですね。


 
ドアを開けて露天ゾーンへ。市街地というロケーションゆえ、周囲は高い塀で目隠しされており、この場に立つと、府中や網走へお勤めになられた方の気持ちがちょっとわかるような気がするのですが、それはともかく、十分なスペースが確保されているので決して閉塞感はなく、塀越しの景色を借景にした日本庭園風の趣ある設えになっていました。この露天ゾーンには後述するいろんな浴槽が用意されています。


 
大きな四角形の露天主浴槽は、そのほとんどが屋根掛けされていますので、多少の雨や雪でも問題なく湯浴みできます。湯船のお湯は煮詰めちゃった貝汁のようにぼんやりと白濁しており、内湯主浴槽と同じく放流式の湯使いにより、浴槽縁の2方向よりオーバーフローしていました。この露天風呂に向かってテレビが設置されており、湯船に浸かりながらテレビを見ることができます。私が入った時の湯船は長湯したくなる適温であり、且つテレビで夕方のニュースが放送されていたため、両要因によりついつい長湯してしまいました。


 
主浴槽の湯口には麦飯石が使われているんだとか。その石がどんな効果をもたらすのか、頭の悪い私にはよくわからないのですが、そんな私が目を奪われたのは、吐出口の上に掲示された「この湯口の温泉は城山源泉より来ている新鮮な100%源泉の温泉です」という説明です。内湯は千曲温泉から供給されている温泉でしたが、露天のお湯はその説明の通り、内湯とは異なる城山1号・2号・3号の混合泉が引かれているんですね。備え付けのコップで飲泉してみますと、内湯のお湯と同じように焦げ感と渋味を伴うタマゴ味および匂いが感じられるのですが、その硫黄感は内湯よりも強く主張しているようでした。また湯中におけるフィーリングも同じく滑らかなツルスベですが、こちらの方がより滑らかであり、且つトロミもしっかりと有しているようでした。


  
寝湯を擁する副浴槽では、ろ過循環消毒されているお湯が使われています。実際に湯船のお湯はクリアに澄んでいて、硫黄感もかなり弱まっていました。この副浴槽の向かいには「ささら湯」と称する寝湯の亜種が設けられており、石敷きの上にお湯が流されているのですが、その利用形態を想像するに、夏は気持ち良いのでしょうけど、冬はただただ寒いだけですので、訪問時はお湯の流れが一箇所だけになっており、実質的に休止状態でした。


 
露天ゾーンにはこのほか信楽焼と思しき2つの壷湯もあるのですが、寝湯同様こちらのお湯もろ過循環されたもので、個性がはっきりと表れている主浴槽のお湯に浸かっちゃうと、壷湯のお湯では物足りなく感じてしまいます。

それにしても、これだけ規模の大きな施設でありながら、二つの源泉を使い分け、それぞれをふんだんに掛け流しているのですから、その贅沢な湯使いには感激してしまいます。上山田温泉のお湯が持つ個性を存分に味わえる素晴らしい施設でした。


(内湯)
千曲温泉株式会社1号・2号・3号・4号源泉及び中央源泉の混合泉
アルカリ性単純硫黄温泉 45.4℃ pH8.5 溶存物質0.3863g/kg 成分総計0.3865g/kg
Na+:93.7mg(77.17mval%), Ca++:21.8mg(20.62mval%),
Cl-:95.2mg(50.97mval%), HS-:5.4mg, SO4--:60.0mg(23.69mval%), HCO3-:53.2mg(16.48mval%), CO3--:7.7mg,
H2SiO3:41.6mg,
(平成26年8月11日)

(露天)
城山1号・2号・3号源泉の混合泉
単純硫黄温泉 44.8℃ pH8.3 溶存物質610.6mg/kg 成分総計613.5mg/kg
Na+:146.3mg(76.62mval%), Ca++:33.1mg(19.88mval%),
Cl-:172.1mg(56.96mval%), HS-:7.30mg, S2O3--:0.5mg, SO4--:97.2mg(23.72mval%), HCO3-:82.0mg(15.74mval%),
H2SiO3:58.6mg, H2S:0.4mg, 
(平成21年7月1日)

内湯:加水循環消毒なし、加温あり(源泉温度が低いため)
露天主浴槽:加水循環消毒なし、加温あり(源泉温度が低いため)
露天壷湯・ササラ湯・寝湯:加水なし、加温あり、循環ろ過装置利用

しなの鉄道・戸倉駅より千曲市循環バスの大循環線・上山田線(日祝運休)・戸倉更科線などで「上山田温泉公園」バス停下車、もしくは戸倉駅より徒歩35分(2.5km)
長野県千曲市上山田温泉2-18-8  地図
026-275-4321
ホームページ

平日9:00~25:00、土・日・祝日6:00~25:00
680円(朝風呂料金の設定や家族風呂などあり。詳しくは公式サイトでご確認を)
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (2)
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