温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

サラク山麓 マラン山村温泉

2017年02月07日 | インドネシア
 
引き続きボゴールの南に聳える活火山サラク山の山麓をめぐります。山裾には麗しい田園風景が果てしなく広がり、車窓一面は鮮やかで生き生きとしたグリーンで占められました。


 
前回記事の「チガメア温泉」から山麓を伸びる細い道をひたすら東に向かって約20km走ると、路傍に上画像のようなバナーが掲げられている箇所に行き当たります。ここが今回の目的地。バナーのインドネシア語をスマホで翻訳してみると「温泉浴場へようこそ」と書かれていることがわかったのですが、この他は村の名前が書かれているだけで、温泉名と思しき固有名詞は記されていませんでした。そこで今回の記事では村(マラン山村 Desa Gunung Malang)の名前をとって便宜的に「マラン山村温泉」と称することに致します。


 
周囲は棚田が広がる水田耕作地帯。上述したバナーの下にある分岐から、赤土がむき出しになった泥道へ入って奥へと進みます。まるで朱肉のような紅色の赤土は、火山活動が活発なジャワ島ならではの火山灰土壌です。この辺りの火山灰土壌にはミネラルが多く含まれているので、とても肥沃なんですね。


 
凸凹の泥道を進んで行くと、やがて簡素な骨組みのゲートをくぐります。車でしたらこのゲートの手前に駐車しておくか、あるいはこの泥道に入らず(泥濘にハマってスタックする恐れあり)、分岐手前の舗装された通りの路肩に停めておくと良いでしょう。


 
さらに畑や田んぼの脇を進むと、やがて道が尽き、その先に数台のバイクが停まっていました。


 
突き当たりの右には、小さな川の方へ逸れる小径が分かれていましたので、そこを下ってみると、木の幹や角材の柱にテントを張り付けただけの粗末な屋台が設けられていました。ここが温泉の受付。若夫婦が店番をしており、ミネラルウォーターやジュース類、そしてスナック菓子などを売っています。若夫婦に湯銭のRp5,000を支払い、さらに階段を下ってゆくと・・・


 
下りきったところに、地域の方が湯浴みする公衆露天風呂が黄緑色のお湯を湛えていました。色鮮やかな自生トロピカルプランツに囲まれたこの露天。実にのどかで良い雰囲気です。モルタルと石で固められた質素な浴槽は、3つに分割されており、それぞれの仕切りには切り込みが入っていて、お湯が一方から他方へと流れるような造りになっていました。


 
立て看板には「石鹸やシャンプーを使った入浴禁止」と書かれていました。温泉のオーバーフローを含む全ての水は川へ流れてゆき、その水は下流の田畑を潤しますから、石鹸の類は使えないのですね。その一方、茂みの奥にテントで目隠しされた一角が設けられているのですが、これは早い話が青空トイレ。便器などはなく、ただその場で用を足して、バケツの水で濯ぎ流すだけ。人工物は環境によろしくありませんが、同じく人が作ったものでも、下肥ならば川へ流しても畑の栄養になりますから、問題ないのでしょう。


 
露天風呂に話を戻します。浴槽の湯面では絶え間なく底から気泡が上がっており、湯船周りには湯口らしきものが見当たらないため、この温泉は足元湧出で間違いありません。3つで分割された浴槽のうち、気泡が多く上がっているところが最も熱く、そこからお湯を受ける隣の槽は若干ぬるくなっていました。


 
最も熱いところで計器類を入れてみたら、温度は43.0℃でpH6.49と表示されました。足元湧出ですから、湧出時の温度もこれとほとんど同じでしょう。お湯の色はご覧のように、グリーンを帯びた山吹色に濁っており、既にいろんなお客が入った後ですから、なおのこと強く濁っています。前回取り上げた「チガメア温泉」と似たような泉質であり、具体的には甘塩味、清涼感を伴うほろ苦味、金気味、石膏味、少々の炭酸味、そしてふんわりとした金気臭と土類臭を有しています。



底から絶え間なく上がってくる気泡をお尻に受けながら、最も熱い槽で入浴している私。「チガメア」の湯より全体的にマイルドでおとなしい印象を受けました。でも土類泉らしいキシキシ浴感と全身へのまとわりつきが感じられますし、湯上がりはとてもよく温まってしばらくは汗が引きませんでしたから、間違いなく良泉であると評価できます。

こうして私が湯浴みしていると、空が俄かに掻き曇り、その数分後に篠突く雨が降ってきたので、慌てて湯船から出てテントへ避難するはめになったのですが、現地の方はスコールみたいな勢いの強い雨に慣れているのか、傘など差さず全身ずぶ濡れのまま露天風呂へやってきて、雨宿りをする私を尻目に、雨に打たれながら澄ました顔で湯浴みしていました。そして雨脚が弱まってくると、どこからともなく老若男女が集まり、ざっと数えて15人近いお客さんがこのお風呂で入浴を楽しんでいらっしゃいました。
とてもプリミティヴな造りですが、地域の方々から愛されていることがよく伝わる、素敵な露天風呂でした。





入浴料Rp5,000
備品類なし

私の好み:★★★



コメント
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