温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

院内老人憩の家 余温泉

2017年02月19日 | 大分県
 
初夏の麗らかな陽気に恵まれた2016年の某日。私は車の窓を全開にして、青々とした稲の香りを胸いっぱいに吸い込みながら、のんびりと「日本一の石橋の町」と称される大分県宇佐市の旧院内町をドライブしていました。町内にある余地区の谷頭へ向かって坂道を登ってゆくと・・・


 
巨樹が見守る公営施設「院内老人憩の家」に到着です。といっても、老人福祉のサービスを受けるわけではなく・・・


 
老人福祉施設に内包されている入浴施設「余(あまり)温泉」が今回の目的地です。


 
駐車場の片隅には、源泉関係施設と思しき円形のコンクリ躯体があり、その傍らには色褪せた古い分析書の看板が立っていました。


 
玄関から館内に上がって右手にある窓口脇の券売機で料金を支払います。地域のご老人が憩う施設ゆえ、玄関ロビーにはソファーが置かれ、その向こうにはお座敷の広間が続いていました。そして別室ではマッサージが行われており、施設受付担当の方が施術師を兼任なさっているようでした。
玄関ロビーには地域の景勝を写した写真パネルと共に、ガラスケースの中でオオサンショウウオのレプリカが展示されていました。宇佐市の公式サイトによれば「宇佐市院内町南院内地区はオオサンショウウオの九州唯一の生息地であり、生息地域の南限」なんだとか。


 
建物の裏手から屋外に出て渡り廊下の階段を下り、湯屋へと向かいます。


 
六角堂の湯屋はとってもウッディーですが、公営だからか脱衣室は実用的で、温泉風情はいまひとつ。室内には各浴槽の温度が手書きで表示されていました。老人が客層のメインですから、湯加減の調整には慎重なのでしょうけど、内風呂43℃に対して露天が37℃以下と、両者に大きな開きがあるのがちょっと気になります。


 
六角堂を男女で半分ずつに分けた内風呂は天井が高くて開放的。太くて立派な梁がその高い天井を支えていました。石板敷きの室内には五角形を平たく潰したような形状の浴槽が一つ据えられ、窓側に配置された洗い場にはシャワー付きカランが5基並んでいます。黒い石板張りの浴槽は、最も長い辺で10m弱はあり、15人近くは入れそうなほど大きくてゆとりのある立派なもの。脱衣室側に設けられた円筒形の湯口よりお湯が注がれ、その反対側の切り欠けからオーバーフローしており、その構造から推測するに、循環の無い放流式の湯使いを実践していると思われるのですが、私の訪問時は浴槽容量の対して温泉投入量が少ないように思われました。投入量を絞ることによって湯加減を調整していたのでしょうか。
丸い湯口の湯壷には、茶色いモヤモヤしたものがユラユラしていたのですが、これって湯の花? あるいは固形物を濾すためのネットの破片? またこの湯口でちょっと残念だったのは、湯壷の中にカルキの錠剤が思いっきり見える形で沈められていたこと。老人向けのお風呂なので、消毒を実施するのは理解できますが、せめて錠剤は隠してほしいなぁ…。ちなみに湯船の温度は、脱衣室の手書き表示では43℃でしたが、私の実感では41〜2℃という実に入りやすい湯加減がキープされていました。


 
ウッディな内湯とは対照的に、露天風呂はコンクリと石板といった無彩色を多用し、且つ直線的なデザインが印象に残る近代建築っぽいレイアウト。周囲は目隠しの塀で囲まれていますが、周囲の山々の緑はちゃんと目に入ってきます。浴槽は先が尖ったL字型をしており、その中で3分割されているのですが、後述する湯口に近い浴槽ですら35℃前後(脱衣室に書かれていた数値は本当でした)。しかもそれ以外の残り2つはさらにぬるく、初夏とはいえお風呂としては機能していませんでした。これって私が訪れた時だけのことで、季節によって温度が変わるのでしょうか。なおこの露天ゾーンには、浴槽の奥に小屋が建っており、そこにはトイレと「打たせ湯」と称された小部屋が設けられていたのですが、果たして使えるのでしょうか?


 
露天風呂では、配管で引いてきた温泉や水を一旦円筒形の湯壷へ落とし、そこから溢れさせて浴槽へと注いでいます。また湯口のほか、内湯から流れてくるお湯も受けているようです(それだからぬるいのでしょうね)。内湯同様、こちらの湯壷でもカルキの錠剤があからさまに沈められていました(涙)。お湯は無色透明で、褐色の綿埃みたいな浮遊物がチラホラと浮遊しています。少々の塩味とほろ苦み、そして僅かにミシン油っぽい風味が感じられますが、そうした特徴を根こそぎ取っ払うかのように強いカルキ臭が放たれていたのが残念なところ。なお、泉質名は単純泉ですが、分析書によれば溶存物質0.980g/kgとのことですから、あとちょっとで食塩泉を名乗れますね。惜しい! 実際、湯上がりには食塩泉と同等の温まりを得られ、いつまでも体がポカポカし続けました。


単純温泉 65.8℃ pH8.3 湧出量測定せず(動力揚湯・掘削800m) 溶存物質0.980g/kg 成分総計0.981g/kg
Na+:250.2mg(81.26mval%), Ca++:25.0mg(9.34mval%),
Cl-:400.4mg(79.01mval%), Br-:2.0mg, HCO3-:86.6mg(9.94mval%), CO3--:18.6mg,
H2SiO3:111.3mg, HBO2:23.5mg,
(平成21年12月22日)

大分県宇佐市院内町上余157-1  地図
0978-42-7048

4月〜9月→12:00〜21:00、10月〜3月→12:00〜20:00 水曜定休
300円
ロッカー(100円リターン式)・ドライヤーあり、石鹸類なし

私の好み:★★
コメント (2)
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