温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

別府温泉 大和温泉

2017年02月15日 | 大分県
 
引き続き別府温泉の共同浴場を巡ります。前々回で取り上げた「第一富士見温泉」がある野口元町に戻り、線路から北西へ斜めに伸びる一方通行の道を歩いていると、「野口元町二区公民館」の白い看板を発見。そこから細い路地を入ってしばらく進むと、目的地である「大和温泉」の木造浴舎にたどり着きました。


 
湯屋の向かいに建つ集会所に番台の窓口があるので、小窓の内側に置かれている料金箱に湯銭を納めてから、湯屋に入館しました。湯屋玄関の右手には円筒形の貯湯タンクが立っていました。


 
若葉を思わせる浅緑に塗られた菱格子の玄関には、浴場名が書かれた扁額がかけられており、歴史ある温泉の街らしい威厳と風格が伝わってきます。玄関左下に掲示されている「ほしかった とめるゆうきと やさしい手」という標語は、私の無謀な湯巡りを諌めるための言葉なのかな(なんてね)。引き戸を開けた先には弘法様の石仏が祀られていたので、手を合わせてからお風呂へお邪魔させていただきました。弘法様の左側が女湯で、右側が男湯です。


 
館内は、別府の共同浴場では標準的なレイアウトである脱浴一体型。外観のみならず内装もホワイトと淡いグリーンの塗装で統一しているところに、携わっている方々のセンスと矜持が感じられます。そして浴室の中央に据えられた円形の浴槽は水色のタイル張り。淡いグリーン、ホワイト、そしてアクアブルーのトリコロールが実に美しく、浴室に足を踏み入れてこの光景を目にした瞬間、思わず息を呑んでしまいました。


 
浴室の壁にはグリーンに塗られた棚がズラリと並び、その右手には下足箱が設置されているのですが、下足箱の斜め上を見ますと、壁に小さな棒が数本取り付けられていることに気づきました。これはおそらく帽子掛けなのでしょう。かつて帽子は紳士の嗜みであった時代がありましたから、その当時の名残なのでしょうね。この浴場がいかに長い歴史を有しているか、こうした細部を見ることでもよくわかります。


 
浴室の隅に湯壷がある点も、別府の共同浴場によく見られる標準的な特徴。でもここの湯壷で特徴的なのは、内部の壁に「止」「出」と手書きされており、その下に金属の棒が取り付けられていることです。一目瞭然ですが、金属の棒はバルブを操作するハンドルであり、これを「止」や「出」など各位置に合わせることによって、浴槽へ注ぐお湯の量をコントロールするわけですね。



水色のタイルが貼られた浴槽はワインレッドのタイルで縁取られており、この2色のコントラストも鮮やかです。浴槽は3〜4人サイズで、湯船のお湯は縁の切り欠けより浴槽外側の溝へ溢水しています。言わずもがな完全放流式の湯使いです。このお風呂の引かれているお湯は、前回記事で取り上げた「富士見第二温泉」と同じ「別府市温泉供給事業富士見線」という混合泉。無色透明でほぼ無味無臭、クセが無くアッサリとしているので、日々の入浴に使いやすいタイプのお湯と言えるでしょう。私が訪れた夜10時半は既に多くのお客さんが浸かった後なので、お湯はちょっと鈍り気味でしたが、湯加減はちょうど良く、深い時間でもう誰も来る気配がなかったので、一人で湯船に入ってゆっくり寛がせていただきました。湯船に入りながら室内を見回すと、塗装から浴槽まであらゆる箇所から、長年にわたって地元の方が注ぎ続けてきた愛情が伝わってくるような気がします。
なお、番台に掲示されていた分析書は平成21年分析のものでしたが、「富士見第二温泉」で同源泉の平成28年分析データが掲示されていましたので、当記事では平成28年の数値を掲載させていただきます。


別府市温泉供給事業富士見線
単純温泉 58.5℃ pH6.9 溶存物質0.723g/kg 成分総計0.727g/kg
Na+:157.0mg(78.87mval%), Ca++:15.4mg(8.89mval%),
Cl-:154.0mg(52.86mval%), SO4--:74.4mg(18.88mval%), HCO3-:138.0mg(27.53mval%),
H2SiO3:151.0mg,
(平成28年3月17日)

JR日豊本線・別府駅より徒歩6分(約500m)
大分県別府市野口元町9-15  地図

6:00~12:00(11月〜3月は6:30〜12:00)、14:00~23:00 無休
100円
備品類なし

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
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