温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

バンドゥン南部 パトハ山麓 レンガニス地獄の野天風呂

2017年03月13日 | インドネシア
前回記事で訪れたパトハ山の白い火口湖「カワ・プティ」は、硫黄たっぷりの強酸性泉が作り出す景観が大変幻想的かつ神秘的でしたが、その特徴的な湖水への立ち入りが禁止されているため、湯浴みをすることはできませんでした。でも山域の別の地熱地帯に行けば温泉入浴が楽しめるらしいので、期待に胸を膨らませながらその場所へ向かうことにしました。


 
パトハ山の周辺はジャワティー栽培の本場。一帯には美しい茶畑が広がっていました。


 
茶畑の中を縫うようにパトハ山麓を南へ進んで行くと、緑の絨毯の中に忽然とゲートが現れました。ここが今回の目的地である地熱地帯「カワ・レンガニス(Kawah Rengganis)」への入口です。まずはゲートで入園料を納めます。ゲートから地熱地帯まで若干離れているらしく、受付小屋の前ではバイクタクシー(オジェッ(Ojet))が待機していました。どのくらい離れているのかわからないので、試しに乗ってみたのですが(料金Rp30,000)、実乗時間は1分あるかないか。1km程度しか離れていないので、歩いて行っても全く問題なかったのでした。



オジェッを降ろされた広場にはワルン(屋台小屋)が立ち並んでおり、その広場は見晴台になっていて、目下に広がる谷ではあちこちから真っ白な噴気が濛々と上がっていました。こりゃすごいぞ! 「カワ・レンガニス」を直訳するとレンガニス火口ですが、浅い谷のガレ場全体が地熱地帯になっているこの場所は、日本で言えばいわゆる地獄ですから、今回の記事では「レンガニス地獄」と呼ばせていただきます。


 
ガレ場のあちこちから白い蒸気や火山性ガスが噴出しており、岩には硫黄の黄色い結晶がこびりついていました。もちろん辺りには湯気とともに硫化水素臭が立ち込めています。


 
随所から温泉が滲み出るように少しずつ湧き、それらが集まってひとつの湯の沢となって、谷を流れて落ちていました。


 
谷頭付近には、まるで湯釜のように温泉が盛んに自噴する箇所があり、そこのお湯を計測したところなんと約90℃! 直に触れたら火傷必至だ。


 
 
インドネシア人はマンディと呼ばれる水浴び(沐浴)が大好き。このレンガニス地獄では、湧出したばかりの熱い温泉と山から流れてくる沢水をブレンドさせてよい湯加減にし、木の幹の中をくりぬいた樋からそのお湯を落として打たせ湯にしていました。私もその場で水着に着替えてマンディにチャレンジ。樋から出てくるお湯の温度は41℃という最高の湯加減。うひゃー、とっても気持ち良いぞ! 



谷の下流にも、大きなプールを備えたマンディ場があり、何本もの樋からお湯が落とされていました。


 
私がこのマンディ場を撮ると、すぐ後に家族連れがやってきて、親子で打たせ湯を楽しんでいました。老若男女、みんなマンディが大好きなんですね。



大きなマンディー場の隣には、このように大きな野天風呂も併設されていました。お風呂というより石ゴロの池みたいな造りですが、肩まで浸かれる深さがあり、大変広々していて実に開放的です。


 
大きな露天なので場所によって温度にムラがあり、熱いところで42.6℃、湯尻のぬるいところでは38℃という長湯仕様となっていました。これだけ湯加減に幅がありますから、熱い風呂がお好きな方も、ぬるいお湯で長湯したい方でも、湯浴みが楽しめるかと思います。
上流のマンディ場のお湯は無色透明でしたが、こちらでは灰色に濁っており、底には同色の湯泥が溜まっていました。沢水がブレンドされていますが、それでも酸性の硫黄泉であることに違いなく、この露天で計測してみますとpH3.39という数値が表示され、お湯を口に含んでみますとはっきりとした酸味が感じられました。



入浴中の私。本当に超気持ちいい!!
開放的な温泉が好きな方には是非おすすめしたい、最高の野天風呂でした。


 
最後に、猫ちゃんがお昼寝している谷の最下流から谷頭の方を向いて、レンガニス地獄を眺めてみました。通路や東屋、そしてマンディ場や野天風呂などが、それぞれうまい具合に配置されていますので、ここまで来れば誰でも気軽に大地の息吹を身近に楽しむことができるでしょう。とっても素晴らしい観光地でした。




入園料Rp50,000

私の好み:★★★




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バンドゥン南部 パトハ山麓 火口湖カワ・プティ

2017年03月11日 | インドネシア
今回記事からまたしばらくの間、私が昨年巡ったインドネシアの温泉旅行記にお付き合いください。
中学か高校の社会科系授業で誰しもが学ぶアジアアフリカ会議の開催地といえば、インドネシア・ジャワ島の都市バンドゥン(Bandung)。このバンドゥンという街の周囲には数々の火山が聳えており、地球の熱き息吹がもたらす景観や温泉が立派な観光資源となっているらしいので、数日に分けてバンドゥン周辺の火山活動地帯や温泉などを巡ってみることにしました。
街の南北にそれぞれ火山に関わる代表的な自然景観ビューポイントがあるらしいのですが、まずは南部に聳えるパトハ山(Gunung Patuha)の火口湖カワ・プティ(Kawah Putih)へ行ってみることにしました。英語の観光ガイドブックでは「ホワイトクレーター」と称されており、英語の口コミでも高く評価されています。また、拙ブログでリンクさせていただいており、今回のインドネシア旅行でも大いに参考にさせていただいたLuntaさんのブログ「Luntaの小さい旅、大きい旅」でもご紹介なさっていた場所ですので、どんな光景に出会えるのか期待に胸を膨らませながら、あらかじめ手配していた運転手付きの貸切車に乗り込んだのでした。


 
バンドゥンの街からパトハ山を目指して南へ向かいます。途中の街では馬車の乗り合いタクシーに何台も遭遇しました。著しい経済発展の真っ只中にあるインドネシアですが、まだまだこうした牧歌的な光景が随所に残っているんですね。


 
街の中心部から約2時間でカワ・プティの入口に到着です。まずゲートで入園料Rp50,000をお支払い。どうやらこの料金設定は外国人向けらしく、現地人はもっと安く入園できるんだとか。インドネシアやタイなど東南アジアでは、現地人向け料金の数倍にも及ぶ外国人料金を徴収されることがよくありますから、これが当地の商習慣なんだと諦め、仕方ないと思ってその都度高いお金を納めていますが、とはいえいまいち腑に落ちません。


 
ゲートの前には砂利敷きの駐車場が広がっており、ドライバーは私にこの駐車場で車から降りるよう指示しました。目的地はここから更に坂道を登った先にあり、自分の車で登ることもできるのですが、その場合は高額な追加料金を支払わねばなりません。そのかわり、上部へ向かう乗り合いミニバスが運行されており、往復Rp21,000のチケットを購入することで、そのミニバス乗車することができます。というか、ここではミニバスによるアクセスを推奨しているんですね。


  
15分弱で火口湖側の降車場に到着です。ミニバスを降りた観光客たちは、"KAWAH PUTIH"という大きなモニュメントの前で記念撮影を撮っていました。追加料金を支払ってマイカーでやってくる観光客もいましたが、その数はまばら。パッと見まわしたところ駐車場があまり広くないので、マイカー対策としてこのようなミニバス導入しているのでしょう。


  
土産物の物売りたちを尻目に、火口湖の方へ。時折木立の向こう側から風に乗って硫化水素臭が漂ってきます。



歩道を進んで間もなくすると、視界が開けて幻想的な光景が眼前に広がりました。これこそ白い火口湖カワ・プティなんですね。



今にも泣き出しそうな鉛色の曇天ですが、火口湖が湛える湖水は神秘的な青白さ。草津白根山の湯釜を彷彿とさせます。


 
湖岸にはたくさんの観光客が思い思いに記念撮影をしていました。赤道直下の南国とはいえ、標高約2200mという高地であり、且つご覧のような天候ですから、長袖を羽織らないと辛いほど肌寒く、私も慌ててバッグから薄手の長袖を取り出しました。
なおこの湖水に入ることはできません。


 
湖岸では湯の花を売る屋台(左or上画像)や、マスクを売る屋台も見られました(右or下画像)。実際に湖面からは硫化水素臭が漂ってくるのですが、屋台で売られているのは、コンビニにあるような安っぽい普通のマスクであり、そんなもので硫化水素の吸い込みを防げるはずはありません。子供騙しもいいところ。


 
火口湖の湖水を青白くしているのは、硫黄や鉄など火山由来のいろんな成分なのでしょう。おそらくコンディションによってこの湖水は色を変化させるものと思われます。また、この火口湖では現在でも火山活動が行われているらしく、奥の岸では白い噴気が上がっていました。


 
岸の湖水に持参した計器類を入れたところ、水温は29.4℃。決して冷たくはないので、可能ならば入ってみたいところですが、ここは自制心を働かせて野湯したい欲求をグッと抑え、当地のローカルルールを守りました。驚くべきはpH値であり、表示された数値はなんとpH0.83! とんでもない強酸性なんですね。1を下回る数値なんて今まで見たことあったかな。下手に湖水に入ったら、あまりの強酸性のために体がドロドロと溶けちゃったりして…。
標高、湖水の色、湖水の強酸性など、いろんな要素が草津白根山の湯釜と似ているので、この山と草津白根山で姉妹提携を締結してみてはいかがかな。


 
湖畔の案内によれば、湖面の標高は2222m、山の頂上は2343mとのこと。でもWikipediaによれなパトハ山の標高は2434m。どの数値が正しいんだろう?
なおこの火口湖を一周できるトレイルが整備されているようですが、面倒なので高台へ登って俯瞰するだけにとどめました。


あわよくば野湯できるかもと下心を抱きながら訪問したのですが、結局その願望は叶えられませんでした。でも幻想的な景色を見られただけでも満足です。次に向かう地熱地帯では、絶対に温泉入浴を果たすぞ!




入園料などは本文をご参照ください。
火口湖での入浴はできません。






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上恵良温泉

2017年03月09日 | 大分県
 
先日取り上げた「院内余温泉」の湯船に浸かりながらお客さん達とお喋りしていると、常連さんから「そういえば、上恵良温泉って最近行ってないなぁ」「俺もだよ。どうなってるんだろうね」という話題が上がりました。曰く、かつて皆さんは同じ院内町にある上恵良温泉へよく行っていたそうですが、お風呂を管理しているおばあちゃんが体調を崩して以来、最近は皆さん足が遠のいてしまったんだとか。その温泉の名前は私も存じ上げており、ネット上でも温泉ファンによって多くのレポートが上がっていることも目にしていましたが、皆さんの言葉が気になったので、実際に訪れてみることにしました。
国道387号から県道409号に入って南下してゆくと、程なくして沿道の左手に上画像の大きな湯屋が目に入ってきました。駐車場の片隅には球体の大きなタンクも建っており、切妻のおでこに温泉マークを掲げる木造の湯屋と相まって、いかにも温泉施設らしい風情を醸し出しています。


 
県道を挟んだ反対側には、食料品などを扱う酒屋さん、そして温泉名を掲示した「休憩所」なる建物が、まるで長屋のように連なっているのですが、この酒屋さんこそ温泉の運営主体であり、「休憩所」は文字通り休憩所としての他、素泊まり専用の簡易宿泊施設としての機能を兼ね備えているんだそうです。しかしながら私が訪問した時、酒屋さんの店内には誰もおらず品数もわずか。休憩所も長い間にわたって閉ざされているような気配が感じられ、現在でも宿泊業を行なっているかは不明です。



湯屋の玄関を入ってすぐのところにある番台にはどなたもいらっしゃいません。しかしながら、カウンターの上には電話機が置かれており「温泉入浴のお客様 電話の受話器を取って1か2を押して下さい」と案内されていましたので、その説明に従って内線電話をかけたのですが、受話器から呼び出し音は鳴っているものの、全く応答が無い…。どうしたものかと酒屋さんの方へ行ってみますと、酒屋さんや休憩所が並ぶ建物の右側に立派な母屋があり、そこからセニアカーに乗ったお婆ちゃんがゆっくりとやってきたのでした。「院内余温泉」の常連さんが話していたように、温泉を管理するお婆ちゃんは本当に体調を崩したそうで、今では元気になったものの、足腰が衰えてしまい、セニアカーのお世話になっているようでした。お婆ちゃんは笑顔で対応してくださり、お風呂まで案内してくださったのですが、そんな事情を存じ上げなかったとはいえ、お婆ちゃんには余計な手間をとらせてしまい、申し訳ないことをしてしまいました。お婆ちゃん、ごめんなさい。なお、お婆ちゃん曰く、お風呂に入るだけなら、わざわざ呼び出さなくても番台の上に湯銭を置いて勝手に入って良いんですよ、とのことです。


 
板の間の脱衣室はまずまずの広さ。独立した部屋というより、後述する浴室の一角をパーテーションで仕切っただけのような造りですが、ロッカー・洗面台・ドライヤー・扇風機など、ひと通りの備品も揃っており、使い勝手に問題ありません。


 
浴室は外観から受ける想像をはるかに上回る広さがあるのですが、そもそも内湯として建築したというよりは、大きな露天風呂の上に屋根を載せたような感じで、しかも手作り感が強く、浴室全体にそこはかとないB級感が漂っています。広い室内の床はコンクリ打ちっ放し。浴槽の向こう側には田園風景が広がっているのですが、浴室と屋外を隔てているのは、窓ガラスではなく、畑の温室で使うような農業用の透明ビニールシートが用いられており、このビニールシートがB級感をより一層高めていました。季節によってシートを取り払って露天風呂っぽくするのかな?
この窓ガラス代わりのビニールシート下には、広い空間を活かした大きな浴槽が据えられており、浴槽自体はコンクリ造ですが、岩で縁取られており、いわゆる岩風呂のような風情です。そして後述するように三分割されており、それぞれ温度が異なっていました。


 
浴室の広さに反して洗い場は小さく、シャワー付きのカランが3基のみ。カランから出てくるお湯は温泉です。


 
3分割されている浴槽のうち、最も西側の槽は5〜6人サイズで、この浴槽には水平方向に伸びるパイプから温泉が投入されていました。湯口における温度は54.6℃というなかなかの高温であり、このお湯を直接受けているため、湯船は私の体感で43℃前後の湯加減になっていました。
お湯は淡いジャスミンティーのような色を帯びた透明で、ご近所の「余温泉」と同じくミシン油のような風味があり、塩味は無いものの、少々のほろ苦味を有していました。そして感動するほどではないにせよ、湯中ではしっかりとしたツルスベ浴感が得られました。


 
左(上)の画像に写っている2つの浴槽は、湯口からお湯が直接供給されている熱い槽、そしてそこから流れてくるお湯を受けている真ん中の槽です。熱い浴槽以外には湯口が設けられていないらしく、しかも流量が少ないためか、受け湯オンリーの真ん中の槽では35℃くらいにまで下がっていました。
右(下)の画像は3つのうち最も大きな浴槽なのですが、お湯の流れとしては最下流にあたるため、私の訪問時には思いっきり冷めており、体感でも30℃あるかないかという入浴に適さないぬるさで、残念ながら無用の長物と化していました。



コンクリ打ちっ放しの広い室内には、上画像のような空っぽな浴槽もあったのですが、現在は使われておらず、観葉植物が置かれているばかり。
というわけで、浴室は広く、浴槽も大きいのですが、実質的に入浴に適しているのは、湯口から直接お湯が注がれている5〜6人サイズの浴槽ひとつだけ。せっかくのスペースや規模を持て余しているようでした。


 
湯屋の内部には、上述の大浴場のほか家族風呂もあり、中を覗いてみると立派な岩風呂がお湯を湛えていました。窓ガラス代わりにビニールシートが張られている点は大浴場と同じですが、広い室内には岩が屹立した大きなお風呂が設けられており、家族風呂にしては随分立派です。でも松竹梅とネーミングされた各部屋のうち、お湯が張られていたのは「梅」のみで、他の部屋はカーテンが閉められていました。また、画像には写していませんが、これら松竹梅の他、通路の奥には「めじろ」「うぐいす」といったさらに別の貸切風呂もあったのですが、こちらは空っぽで、しかも長年使われていない様子でした。
お身体が思う通りに動かなくなったおばあちゃんにとって、これら広いお風呂の管理は厳しいものがあるのでしょう。それゆえ、お客が使える範囲を縮小しているのかもしれません。邪推かもしれませんが、「余温泉」でお会いした常連さんの足がこちらから遠のいてしまったのも、そのあたりに理由があるのだろうと推測されます。私が訪問したのは、本来ならば1日の汗を流しに来る客で賑わってよいはずの夕方でしたが、私の他には客が来ず、始終独占できてしまいました。お湯は決して悪くないのですが、斜陽な雰囲気を濃く漂わせているその寂しさに、一見の客の私でも一抹の不安を覚え、この温泉の先行きに暗雲が立ち込めているような感を拭うことができませんでした。是非とも形勢逆転となるような契機に恵まれることを祈っています。


単純温泉 50.0℃ pH8.2 58.2L/min(動力揚湯・掘削700m) 溶存物質0.746g/kg 成分総計0.747g/kg
Na+:224.0mg(90.35mval%), Mg++:2.3mg, Ca++:6.3mg,
Cl-:210.1mg(58.48mval%), SO4--:29.0mg, HCO3-:155.9mg(25.25mval%), CO3--:22.9mg,
H2SiO3:69.7mg, CO2:1.6mg,
(平成10年9月17日)

大分県宇佐市院内町上恵良780  地図
0978-42-5875

夏→11:00〜21:00、冬→11:00〜20:00 木曜定休
300円
ロッカー(有料100円)・石鹸・ドライヤーあり

私の好み:★★
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鶴川温泉

2017年03月07日 | 大分県
 
玖珠町の中心部(豊後森)と耶馬渓を結ぶ大分県道43号線を走行している途中、路傍に温泉と書かれた看板を見かけたので、ちょっと立ち寄ってみることにしました。その温泉の名前は「鶴川温泉」。その名のように、鶴が飛来してきても不思議ではないほど大変長閑な田園風景が広がっており、夏にはホタルが飛び交うんだとか。


 
瓦屋根の渋い建物の前には「営業中」の立て看板が客を出迎えていました。こちらの温泉は(平日は)夕方4時からの営業。昼間に行っても開いていません。玄関入ってすぐのところに窓口を開けている番台で、朗らかな笑顔のおばちゃんに湯銭を支払い、下足場の前から伸びる階段で階下へ下っていきます。



階段を下りきった先の突き当たりには一台の洗面台と家族風呂のドアが並んでおり、その左右両側に紺と紅の暖簾が掛けられていました。なお家族風呂は一人500円というお手頃価格なんだそうですが、今回は利用しておりません。天井が低く薄暗い脱衣室は、実用本位で至って簡素。長居するような部屋ではないので、ササッと着替えてお風呂へ。


 
浴室も奇を衒わずシンプル。まるで地元民向け共同浴場を思わせる渋い佇まいです。男湯の場合は、入って右手に浴槽が据えられ、左手の壁沿いに洗い場が配置されていました。


 
洗い場にシャワーはなく、昔ながらの蛇口が7つ並んでだけというのもまた渋い。でもこの蛇口、一見するとどれも同じに見えますが、交互で段違いに取り付けられており、高い方の蛇口(計4つ)のハンドルを捻ると、温泉のお湯が吐出されました。


 

浴槽の寸法は(目測で)1.8m×2.4mの長方形。湯船にはジャスミン茶のような淡い褐色を呈した透明の温泉が湛えられています。41〜2℃というちょっとぬるめの湯加減ですので、のんびりゆっくり長湯を楽しむことができるでしょう。お湯は槽内の穴から投入されており、その勢いで白い筋が見えました。そして湯船に数分浸かっていると、全身に気泡がビッシリと付着し、湯口の近くでは白い泡の塊も見られました。おそらく湯使いは純然たる放流式かと思われます。
お湯からは木材を焦がしたようなモール臭が放たれ、清涼感を伴うほろ苦みと少々の金気が感じられます。玖珠盆地周辺の温泉でよく見られるモール泉的案特徴が表れている温泉ですが、周辺の他湯に比べると、その特徴はやや大人しめであるように思われます。でも湯中で得られるツルツルスベスベの大変滑らかな浴感が気持ちよく、しかもたっぷりのアワアワに包まれますので、モール泉且つぬる湯が好きな私にとっては最高の湯浴みでした。


 
300円の公衆浴場でありながら露天風呂に入れるというのが、こちらの施設の素晴らしいところ。しかも、内湯は質素でしたが、露天風呂は立派な日本庭園のような趣きで、私が訪問した時にはツツジが花を咲かせており、既に花を散らして青葉を茂らせていた桜の樹の下では、石仏が湯浴み客を穏やかな面持ちで見守っていました。周囲の里山も借景になっており、まるで昔話の世界に紛れ込んだかのような、実に純朴な光景です。
お風呂は岩風呂で、浴槽内はモルタル塗り。ぱっと見回したところ、露天専用の湯口は無いらしく、内湯から流れてくるお湯を受けているほか、仕切り塀の向こう側にある女湯露天からもお湯を受けており、つまり全ての浴槽の最下流が男湯の露天となっているようでした。内湯ですら41〜2℃ですから、露天では40℃以下のぬる湯であり、しかも泡つきも見られませんでしたが、その湯加減ゆえに寧ろ体への負担は軽く、長湯するにはもってこい。時の流れ方が都会と異なるこの長閑な温泉で、おかげさまで身も心もすっかり癒されました。


分析書見当たらず
単純温泉

大分県玖珠郡玖珠町太田3935-5  地図
0973-72-4426

平日16:00~21:00 土日祝11:00~21:00 火曜定休(祝日は営業)
300円
ロッカーあり(有料100円)・ドライヤーあり、石鹸などは番台で販売(備え付けなし)

私の好み:★★+0.5
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なかま温泉

2017年03月05日 | 大分県
 
今回取り上げるのは、国道212号線沿いの「道の駅やまくに」に隣接している「なかま温泉」です。大分県中津市の某温泉浴場に入っている時、そこの常連さんから勧められたので、実際にどんなお湯なのか体感すべくやってまいりました。道の駅と隣接していると申し上げましたが、実際には両者の間にお寺の参道が伸びており、その参道を挟んだ東側が道の駅で、西側が温泉浴場となっています。国道沿いに看板が立っており、駐車場も用意されているので、初めて当地を訪れた人でも利用しやすいかと思います。


 
こちらの温泉は受付小屋と湯小屋が別箇になっているため、まずは受付小屋にいるおばちゃんへ湯銭を直接支払い、そこから国道側に離れて設けられている湯小屋へと向かいます。そのルートの途中にある流し台には、湯上がりに水分補給ができるよう、冷やされた温泉水が用意されていました。


 
湯小屋のど真ん中に細い通路が伸びており、その突き当たりの右側が女湯、左側が男湯というように分かれていました。


 
お風呂は内湯のみですが、木材の温もりと石材の重厚感をマッチさせたその内装からは、公衆浴場らしからぬ落ち着きと風情を兼ね備えた、格式のある旅館のような趣きが伝わってきました。洗い場にはシャワー付きカランが4基並んでおり、設置間隔が広くとられているため、隣客との干渉を気にせず利用することができます。この床には御影石が敷かれているのですが、滑り止めとして細い溝が彫られており、そうした細かな配慮にも感心させられます。


 
浴槽内はタイル張ですが、側面には赤みを帯びた御影石が採用されており、また縁には洗い出しのような加工が施されていました。浴槽の大きさは(目測で)2m強×3mで、10人は同時に入れそうな容量があります。供述する湯口からお湯が絶え間なく注がれており、その全量が湯尻から惜しげもなくオーバーフローしていました。



上向きの湯口から吐出されるお湯は、入浴に適した温度にするため少々加温されていますが、加水循環消毒などは行われておらず、純然たる放流式の湯使いです。お湯は無色透明でほぼ無味無臭。湯の花や泡付きなどは見られませんでした。いわゆる「うなぎ湯」程ではないにせよ、いかにもアルカリ性泉らしいツルツルスベスベの浴感がよく表れており、湯船に浸かっていると、まるでローションの中にいるような気分になりました。また身体、とくに肌への当たりが優しいため、多少長湯しても湯疲れを覚えることはありませんでした。
惜しむらくは、浴場内に掲示されている分析書の内容が不完全である点。一般的に温泉成分の数値を表す場合は、その温泉1kg当たりの各イオンや物質の量(絶対量)を記載し、その後にミリバル値やミリバル%等の換算値および相対的数値を表示するものですが、こちらで掲示されていたものは、ミリバル%のみという他に例を見ないスタイルでした。相対的な数値のみでは温泉の姿がちっとも見えてこず、どう判断してよいものか困ってしまいます。でもそんな屁理屈を捏ねる人間なんて私のような面倒臭い野郎だけなのでしょう。数値がどうであろうと、お湯そのものが良ければ大多数のお客さんは満足するのであり、事実、私が訪問した時点では独占状態でしたが、その後、続々とお客さんがやってきて、あっという間に10人近いお客さんで大賑わいとなったのでした。


アルカリ性単純温泉 36.5℃ pH未記載(観光協会の紹介ページによればpH8,97とのこと) それ以外の数値は見当たらず
(平成27年4月30日)

以下の数値は浴室内掲示のデータです
50L/min(動力揚湯・掘削500m)
Na+:(88.28mval%), Cl-:(5.26mval%),HCO3-:(74.72mval%), CO3-:(16.67mval%)
(平成11年9月30日)
加水循環消毒なし
加温あり(源泉温度が低いので)

大分県中津市山国町中摩3485-1  地図
0979-62-2655

11:00~21:00 無休
300円
ロッカーあり(有料100円)・他備品類なし

私の好み:★★+0.5
コメント (3)
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