温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

木賊温泉共同浴場「岩風呂」 2017年4月 黄昏時にまた独り占め

2017年07月20日 | 福島県
前回記事まで連続して南会津・湯ノ花温泉の共同浴場を取り上げてまいりましたが、湯ノ花から峠を一つ越えた西側の谷には木賊温泉がありますので、せっかく当地まで来たからには足を伸ばしたいところです。私は木賊温泉の河原にあるプリミティブな共同浴場「岩風呂」が大好きであり、2012年の夏には拙ブログでも一度取り上げていますが、その際には、混んでいることが多いこの浴場を独り占めできて幸せだったことを述べさせていただきました(その時の記事はこちら)。果たして今回も独り占めできるかどうか、二匹目の泥鰌を狙うべく、淡い期待を抱きながら再訪してみることにしました。


 
黄昏時の木賊温泉に到着。駐車場に車をとめて、川の対岸の斜面に残る雪を見ながら、川岸のお風呂へ向かう階段を下ります。


 
川岸の歩道の先に見える湯小屋が目的地。先客はいらっしゃるのでしょうか…。


 
湯小屋に到着です。中を覗いて見たら・・・
よし、誰もいないぞ。このまま誰も来なければ、今回も独り占めできちゃいそうです。



川岸の岩盤から自然湧出しているお風呂の上に屋根掛けしただけのプリミティブな共同浴場であるため、男女別に分かれていない混浴です。でもそれでは女性客がなかなか利用しにくいため、こちらでは湯浴み着を貸してくれるんですね。しかも女性専用更衣室まで用意されているのですから素晴らしい。無人の施設なのにここまで親切なのは珍しいかと思います。


 
上画像は湯小屋の中の様子。川岸に屋根を掛けただけという表現がぴったりな、実に簡素な共同浴場です。川岸という立地なので、過去には増水した川に上屋が流されちゃったこともありましたが、流される度に有志の方々が出資して建て直されてきたという不撓不屈のお風呂なのでもあります。シンプルとはいえ足元はコンクリでしっかり固められているため、増水に呑み込まれても基礎はちゃんと残り、それゆえ再建しやすいのかもしれませんね。


 
屋根の下には岩盤を鑿って作られたお風呂が二つ、川の流れに沿って並んでいます。上画像は下流側の浴槽。後述する上流側の浴槽から流れ込んでくるお湯を受けており、いつもは若干ぬるめなのですが、この日は万人受けするちょうど良い湯加減でした。


 
湯小屋のすぐ外側は西根川が流れています。いつもは清らかで穏やかな清流であり、夏になればお風呂で火照った湯浴み客が水風呂代わりに川へ飛び込む光景も見られるのですが、私が訪れた4月は雪解けの水が川に集まって濁流と化しており、湯小屋はその奔流に呑み込まれそうでした。実際に川の水が若干浴場側へ入り込み、湯小屋の出入口付近は水溜まりができていたほどです。


 
こちらは上流側の浴槽。主浴槽と言ってもよいでしょう。この湯船に近づくだけで温泉由来の硫化水素臭が嗅ぎ取れます。清らかに澄んだお湯が張られている浴槽内部は青黒く光っており、気泡を上げながら温泉が自然湧出していました。



はぁ、気持ち良い。ちょっと深い作りなので入り応えがあり、湯中には腰掛け用の岩がいくつか沈められているので、これに座るといい塩梅です。肩まで湯に浸かるとゆで卵の卵黄のような芳醇なイオウ臭に包まれ、全身に細かな気泡が付着し、ツルツルスベスベの大変滑らかな浴感が伝わってきました。言わずもがな完全掛け流し。しかも実に心地よい湯加減。まさに極上のお湯です。こんな素晴らしいお風呂を独り占めできるのですから、私は本当に幸せ者だぁ。


 
上2枚の画像は川上側から湯小屋の中、および外側を撮ったものです。湯船に浸かって体が火照ったら、夏は目の前の川に飛び込めば良いですし、この日のように川へ入れない時でも、河原に出て岩の上に腰掛ければ、しっかりクールダウンできます。私は湯船と河原を何度も行き来しながら、温浴とクールダウンを繰り返して、木賊の湯浴みを存分に楽しませてもらいました。



「岩風呂」ありがとう。また来るよ。


福島県南会津郡南会津町宮里字湯坂1986番地  地図
紹介ページ(南会津町観光物産協会公式サイト内)

24時間入浴可能
200円
備品類なし

私の好み:★★★
コメント (2)
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湯ノ花温泉 石湯 2017年4月再訪

2017年07月18日 | 福島県
 
南会津・湯の花温泉の中心部にある白い建物の星商店は、かつては「星酒店」という酒屋さんでしたが、現在はいわゆる萬屋のような業態になったらしく、店の表の表記は「星 店」と間の酒の字が抜かれた状態になっていました。店内では食料品の他、地元の方が作るカゴや草履などの小物類、そして共同浴場の入浴券を販売しているのですが(くわしくは南会津町観光物産協会の紹介ページをご覧ください)、私が訪れた日はシャッターが閉まっていました。地元の方に伺ったところ、いつも店を開いているわけではなく、営業日や定休日が定まっていないようでした。


 
さて、その星商店の脇に新しい行灯のようなものを発見。なんと共同浴場「石湯」の案内標識なのでした。4つある湯ノ花温泉の中でも「石湯」は最も外来客が近寄りがたい雰囲気を醸し出している独特な風情の浴場だと思うのですが、そんな浴場の場所を示す案内が立てられたことに、私はちょっと驚いてしまいました。


 
私が湯ノ花温泉を訪ねたのは、まだ残雪が融けきっていない今年(2017年)4月の某日。石湯へ向かう路地の傍では、残雪の間から福寿草の群生がたくさんの黄色い花を咲かそうとしていました。春の到来を告げる福寿草を横目に坂道を下り、湯ノ岐川に架かる古い橋を渡ります。


 
対岸の川岸に見える湯小屋が「石湯」。拙ブログでは2011年に取り上げていますが、それ以来の再訪です(その時の記事はこちら)。昔話の挿絵にしたくなるような、実に特徴的なロケーションですね。


 
階段を下りて湯小屋へ。川岸の巨大な岩を包摂するように立てられているプリミティブな湯小屋がとてもフォトジェニックです。法令厳守が求められる今のご時世ならば、こんな湯小屋は立てられないでしょうね。おそらく河川法云々が喧しく言われなかった時代に建てられ、それ以来既得権として今日まで存続しているのでしょうけど、それにしてもこの「石湯」はいつ開湯されたのでしょうか。


 
引き戸を開けて、いざ入室。入ってすぐのところで靴を脱ぎ、浴槽の縁をぐるっと回って奥の脱衣ゾーンへ移動します。出入口と湯船周りや脱衣ゾーンの間には仕切りや目隠しのようなものはありません。脱衣棚の前に背の低い衝立が立っているばかりです。会津に限らず昭和の僻地のあちこちで見られたように、脱浴一体型で且つ混浴という非常に古いタイプの共同浴場です。


 
小屋の中に巨大な岩がせり出ており、その上に御幣が立てられていました。神様が宿るお風呂なのですね。


 
岩盤を鑿って湯船を作ったことから「石湯」と呼ばれているんだそうです。小屋の真ん中にある主浴槽はモルタルで固めて形が整えられており、キャパは3〜4人サイズ。長年使い込まれているためか、浴槽内は青光りしていました。お湯は2方向から注ぎ込まれており、完全掛け流しの湯使いです。


 
上画像は大きな岩の下にある源泉から流れ込んでいる湯の筋を撮ったものです。木の栓を差し込むことで流量を調整しているようでした。


 
もうひとつ、山側の歩道下にある源泉から細い筋を刻んで流れ込んでいました。
この2つの源泉とも50℃以上の熱いお湯であるため、湯船も何もしないままだとかなり熱く、慣れていないと入れないかもしれません。幸いにしてこの湯小屋には水道の蛇口があり、ホースを伸ばせば加水できますので、どうしても熱くて入れない場合は加水することをおすすめします。実際に地元の方も加水をすすめてくださいました。


 
主浴槽の川側には仕切り板が立っており、その向こうには一人サイズの小さな湯船がひっそりとお湯を張っていました。この小さな湯船は、主浴槽から流れ込んでくるお湯を受けていますので、その過程で温度も下がります。主浴槽のお湯が熱すぎて入れない場合は、この小さな湯船に入ってもよいでしょう(本来は洗い場として設けられた湯溜まりなのかもしれませんが)。


 
「石湯」は川岸ギリギリのところに建っているわけですが、私が訪れた4月は山の雪解け水によって川が増水しており、浴場のすぐ下では濁流が迫って、いまにもその奔流に飲み込まれそうでした。もし川の水嵩がもうちょっと増えていたらと思うと、ちょっと怖いですね。



ちょっと熱めな湯加減に満足する私。上述のようにお湯は2方向から流れ込んでくるため、湯船の熱さにムラがあり、適宜腕や脚で湯船の中を掻き混ぜながら湯浴みしました。源泉名はその名も「石湯」。上述したように、自然湧出したばかりのお湯が湯船に流れ込んでいます。
無色透明でほぼ無味無臭のクセがないお湯ですが、ツルスベ浴感はしっかりしており、ピリッとくる熱さが心身をシャキッと蘇らせてくれました。昔ながらの素朴な湯小屋でありながら、印象的な外観や、自然湧出の独自源泉を有するという、特徴的な要素がてんこ盛りな共同浴場。今回再訪して、より一層ユニークさを実感することができました。


石湯
単純温泉 57.5℃ pH8.0 9.8L/min(自然湧出) 溶存物質784.1mg/kg 成分総計784.1mg/kg
Na+:194.8mg(71.72mval%), Ca++:58.8mg(24.81mval%),
Cl-:292.8mg(68.84mval%), SO4--:136.7mg(23.75mval%), HCO3-:34.8mg,
H2SiO3:41.1mg,
(平成17年5月18日)

会津田島駅もしくは会津高原尾瀬口駅より会津バスの桧枝岐行で「湯ノ花石湯前」バス停下車、徒歩2〜3分
福島県南会津郡南会津町湯ノ花528番地  地図
紹介ページ(南会津町観光物産協会公式サイト内)

6:00〜22:00
200円(現金利用不可。あらかじめ地区内の商店・飲食店・旅館などで各共同浴場共通の入浴券を購入)
備品類無し

私の好み:★★★
コメント (2)
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湯ノ花温泉 弘法の湯 2017年4月再訪

2017年07月17日 | 福島県
 
引き続き福島県会津・湯ノ花温泉の共同浴場を取り上げます。今回はガイドブックにもよく紹介されている「弘法の湯」です。この浴場に関しても拙ブログで2011年に取り上げており(当時の記事はこちら)、今回はそれ以来の再訪です。木造で趣きのある湯屋は前回訪問時と変わっておらず、記憶通りの姿が保たれていたことに感謝しながら訪いました。なお「弘法の湯」という名前は、弘法様が祀られていた場所に浴場が開かれたことに由来しているんだそうです。現在その観音様はどこにあるのかわかりませんが、通りから浴場へ上がる石段の上には馬頭観音の石碑が立てられていますから、少なくともこの浴場前の通りは古くから人々の往来があったことが偲ばれます。


 
「弘法の湯」の湯屋は天高く伸びる槇の巨木を囲むように建てられているのですが、この槇は樹齢120年と言われている高野槙で、根周り3メートルで高さ15メートル。明治33年に紀州の高野山から持ってきた苗を植栽したもので、湯ノ花集落のシンボル的な存在として古くから親しまれているんだそうです。


 
「弘法の湯」は当地区の他共同浴場と同じく無人施設であり、木造で渋い佇まいが郷愁をそそらせてくれますが、比較的新しい建物であるため、外来者でも戸惑うことなく利用できるような設備が整えられており、10畳ほどあるフローリングの玄関ホールには休憩用の腰掛けが置かれ、コインロッカーも設置されていました。
脱衣室はシンプルながらもカゴがたくさん用意されており、広さもそこそこあるので、ストレスなく着替えることができます。なお脱衣室と浴室を隔てる壁にはガラスの小窓が設けられているのですが、相互に目が届くようにすることで防犯対策を図っているのかもしれません。


 
浴室の様子も前回訪問時と変わりありません。上屋は総木造で足元はモルタルですが、単なるモルタルではなく、細かな砂利を混ぜて洗い出しのような仕上がりになっていました。室内の窓側には浴槽が据えられている他、その反対側には洗い場が配置され、シャワー付きカランが2基設置されていました。シャワーが備え付けられている共同浴場は、当地ではここだけです。湯銭200円という廉価ですし、カランのハンドルを回したらすぐにお湯が出てきましたので、シャワーから出てくるお湯は温泉なのかもしれません。


 
モルタルむき出しの浴槽は2m×2.5mで5〜6人サイズですが、コーナーが大きなRであるため扇形のようにも見えます。浴槽内は薄い緑色に染まっているように見えたのですが、私の気のせいでしょうか。あるいはそもそも浴槽の材質がそのような色をしているのか、はたまた藻類がこびりついていてしまったのか・・・。
壁から突き出た短いパイプよりお湯がトポトポと注がれており、浴槽を満たしたお湯は縁の上から溢れ出ていました。加水加温循環消毒の無い完全放流式の湯使いなのですが、湯加減調整のためなのか、投入量がやや絞り気味であり、それゆえ(あくまで私の体感ですが)お湯が若干鈍っていたように感じられました。浴槽の容量に対して投入量が少ないのかもしれません。でもそのおかげで万人受けするちょうど良い湯加減が維持されていました。熱い源泉を加水なしで温度調整することは、素人が考える以上に難しいことなのですね。

こちらに引かれているお湯は、前回取り上げた「天神の湯」と同じく「清滝の湯」源泉であり、当然ながら無色透明でほぼ無味無臭である点は同じなのですが、「天神の湯」で得られた大変滑らかなツルツルスベスベ感がこちらのお風呂ではなぜかパワーダウンしており、同じ源泉であるとは信じられないほど、没個性なお湯と化していました。あくまで私の勝手な推測ですが、「清滝の湯」源泉は相当デリケートであり、お湯の鮮度やコンディションがちょっとでも変わると、すぐ浴感に響いてしまうのかもしれません。源泉完全掛け流しであることには違いありませんので、今回はたまたまコンディションがいまいちなタイミングに遭遇してしまっただけなのでしょう。
しかしながら、湯ノ花温泉の共同浴場は、混浴だったり、古くて使い勝手の感じ方に個人差があったりと、昔ながらのお風呂に慣れていない一般的な観光客にとっては使い辛いため、ロッカーやシャワーなどが完備されている「弘法の湯」は、多くの外来客を満足させてくれるはずです。


清滝の湯
単純温泉 60.5℃ pH8.2 31.1L/min(自然湧出) 溶存物質575.7mg/kg 成分総計575.7mg/kg
Na+:146.3mg(73.27mval%), Ca++:40.2mg(23.15mval%),
Cl-:210.7mg(67.66mval%), SO4--:102.0mg(24.15mval%), HCO3-:17.4mg, CO3--:5.7mg,
H2SiO3:34.9mg,
(平成17年5月18日)

会津田島駅や会津高原尾瀬口駅より会津バスの檜枝岐行で「湯ノ花石湯前」下車すぐ
福島県南会津郡南会津町湯ノ花321番地  地図
紹介ページ(南会津町観光物産協会公式サイト内)

6:00〜22:00
200円(現金利用不可。あらかじめ地区内の商店・飲食店・旅館などで各共同浴場共通の入浴券を購入してください)
ロッカー(100円有料)あり、他備品類無し

私の好み:★★+0.5


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湯ノ花温泉 天神の湯 2017年4月再訪

2017年07月16日 | 福島県
 
前回に引き続き福島県湯ノ花温泉の共同浴場を巡ります。当地にある4つの共同浴場のうち、2つは一般的な男女別ですが、残る2つは昔ながらの一室のみの混浴で、いずれも川のそばに位置しているという共通点も持っています。湯ノ花地区の中心部を貫く県道350号線は「湯ノ花大橋」で湯ノ岐川を跨ぎますが、この大橋の橋詰の真下で、橋桁に隠れるようにして頭部だけをちょこんと覘かせている浴場が、今回取り上げる「天神の湯」であり、昔ながらの混浴スタイルを護っている共同浴場の一つでもあります。なお拙ブログでは2011年にこの浴場を一度取り上げたことがあります。その時の記事はこちらですので、宜しければご覧ください。前回訪問時には浴場の存在を知らせる標識類はありませんでしたが、いつのまにかわかりやすい標識杭が立てられており、また浴場名がプリントされた暖簾も提げられ、以前よりはるかに見つけやすくなっていました。


 
引き戸を開けるといきなり目の前にお風呂が現れる造りは以前と全く変わっていません。つまり脱衣室と浴室が一体化している昔ながらのスタイルなのです。「湯端の湯」と同じく、上屋は総木造で床などはモルタルという渋くて素朴な構造ですが、湯気抜きがある「湯端の湯」とは違ってこちらは天井が低く、それが余計に室内を狭く見せています。しかしながら、川に面して窓が連なっており、窓を開ければ川を見下ろすことができるので、意外と開放的です。また、もし湯気が篭っても窓を開ければ川風の力で容易に換気ができるでしょうから、高い湯気抜きなんて不要なのかもしれません。


 
下足場の左右に脱衣ゾーンがありますので、どちから自分の相性にあった方で着替えて、そのまま入浴ゾーンへと進みましょう。なお脱衣ゾーンには料金入れのような箱がありますが、これは入浴券入れであり、他の共同浴場と同じく現在は現金での利用を受け付けていませんので、入浴の際には事前に地区内の商店や旅館などで共同浴場共通の入浴券を購入しましょう。


 
手書きの注意喚起が共同浴場らしい味わい深い風情を醸し出しています。なおこちらの浴場は夜10時から翌朝5時まで地元の方専用になるんだとか。ということは、朝5時という早朝から外来者も入れるってことですね。


 
モルタル塗りの浴室には2つの浴槽があり、中央に据えられている浴槽は2人サイズ(詰めれば3人入れるかも)、その奥で申し訳なさそうにひっそりと佇んでいる小さな浴槽は1人サイズです。床も浴槽もモルタルなのですが、浴槽に関しては表面が滑らかに仕上げられており、特に底部は洗い出しのような施工がなされていました。一見地味に見えるお風呂ですが、実は細部に趣向を凝らしているのですね。


 
主浴槽は表面の仕上がりに凝っているだけでなく、コーナー(四隅)がRなので、より一層見た目に優しい印象を受けます。
白いトゲトゲした析出が付着している湯口から、トポトポと熱いお湯が注がれており、湯船を満たしたお湯は後述する小さな浴槽へと流下していました。前回訪問した時にはこの主浴槽のお湯が篦棒に熱く、懸命に湯もみをしてから歯を食いしばって熱さを怺えながら入ったのですが、今回の湯船は文句のつけようがない適温が維持されており、湯もみをすることなく、そのまま難なく入浴することができました。



主浴槽からのお湯を受けている下流の小さな浴槽は、前回訪問時には適温でしたが、今回は上流の主浴槽が適温だったからか、こちらはかなりぬるくなっていました。



このお風呂に引かれているお湯は「清滝の湯」源泉。無色透明でほぼ無味無臭ですが、ツルツルスベスベの浴感が比較的強く、湯船の中ではまるで化粧水の中に浸かっているかのような、しっとり且つ滑らかなフィーリングに包まれ、適温であることも相まり、極上の湯浴みを堪能することができました。あまりに素晴らしいお湯だったため、時間を忘れていつまでも入っていたくなり、後ろ髪を引かれて湯船から出るのが躊躇われたほどです。そんな気持ち良さをお伝えできればと思い、湯船で快楽に浸っている私を自撮りしてしまいました。本当に素晴らしいお風呂でした。私個人の評価で申し上げれば、湯の花温泉の共同浴場の中で最も気に入っています。


清滝の湯
単純温泉 60.5℃ pH8.2 31.1L/min(自然湧出) 溶存物質575.7mg/kg 成分総計575.7mg/kg
Na+:146.3mg(73.27mval%), Ca++:40.2mg(23.15mval%),
Cl-:210.7mg(67.66mval%), SO4--:102.0mg(24.15mval%), HCO3-:17.4mg, CO3--:5.7mg,
H2SiO3:34.9mg,
(平成17年5月18日)

会津田島駅もしくは会津高原尾瀬口駅より会津バスの檜枝岐行で「湯ノ花石湯前」下車、徒歩1分
福島県南会津郡南会津町湯ノ花382番地  地図
紹介ページ(南会津町観光物産協会公式サイト内)

5:00〜22:00
200円(あらかじめ地区内の商店・飲食店・旅館などで各共同浴場共通の入湯券を購入する必要あり)
備品類無し

私の好み:★★★
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湯ノ花温泉 湯端の湯 2017年4月再訪

2017年07月15日 | 福島県
 
前回記事に引き続き福島県会津の湯ノ花温泉を巡ります。せっかく当地に来たので、久しぶりに共同浴場にも入ってみることにしました。湯ノ花の共同浴場は4つありますが、はじめに訪れたのは中心部から最も離れている「湯端の湯」です。なお湯ノ花温泉の共同浴場は拙ブログで2011年に取り上げたことがあり、その時の「湯端の湯」の記事はこちらですので、よろしければご参照ください。
鄙びた温泉地にある共同浴場のイメージにぴったりな総木造の外観は前回取り上げた時とほとんど変わっておらず、敢えて違いを指摘すれば新たに暖簾が掛けられた点でしょうか。なお、湯小屋の目の前には車2台分の駐車スペースがありますが、このスペースは路線バスの折り返し場所にもなっているため、バスが来る時間帯は駐車禁止です。その時間帯は目の前に大きく掲示されています。
湯小屋の目の前には源泉ポンプと受水槽が設置されていますが、これは前回記事で取り上げた老人福祉センター「ことぶき荘」のお風呂へお湯を送る設備であり、今回の記事で取り上げる「湯端の湯」の湯船には、湯小屋の後背に鎮座している神社の境内で湧出している湯本の湯が引かれています。



湯ノ花温泉の共同浴場はどこも無人ですが、利用の都度現地で料金を支払うのではなく、あらかじめ集落内の商店・飲食店・旅館などで入浴券を購入してから利用することになります(各浴場での現金支払いは不可です)。ちなみに私は「湯端の湯」の右隣にある旅館「湯元屋」で購入しました。
従いまして、下足場にある小箱は料金入れではなく入浴券入れですので誤解なきよう。


 
一般的な共同浴場は男女が分かれているので、ひとつの棟で二つの浴室を擁しますが、こちらの浴場ではその2つのほか、地元民専用の浴室も設けられています。つまり一つ屋根の下に3つの浴室を抱える珍しい浴場です。


 
私は地元民ではないので、普通の男湯を利用しました。
渋い佇まいの浴室内部も以前とほとんど変わっておらず、記憶と合致する光景に再び会えて安心しました。上屋は総木造で湯気抜きがある分、天井が高く感じられます。一方、床や壁はモルタルそのまんまで装飾性はなく、同じくモルタル造の浴槽にお湯がかけ流されており、まさに質実剛健といった趣きのお風呂です。なお浴場内にはシャワーなどのカランは無く、浴槽加水用の水道蛇口があるのみですから、体を洗う際のお湯は湯船から直接桶で汲むことになります。


 

手前側が大きな曲線を描いている浴槽は5〜6人入れそうな容量があり、その曲線の途中に浅く刻まれた切り欠けよりお湯が溢れ出ています。お湯は壁に突き出たパイプから供給されているのですが、壁から突き出たパイプは2本あり、窓に向かって右側からは熱い温泉が、左側の塩ビ菅(VU管)からはぬるいお湯がチョロチョロと注がれていました。この両者は同じ源泉なのか、はたまた違うのか、そのあたりはよく分かりません。この他、浴槽の隅にも湯口の跡らしき構造が残っているのですが、そちらは現在使われていませんでした。

お湯は無色透明でほぼ無味無臭ですが、いまいち掴み所が無かった前回記事の「せせらぎ荘」のお湯に比べ、湯船に入った時に肌へ伝わる浴感がはっきりしており、具体的にはアルカリ性泉のような滑らかなツルスベを実感することができました。浴槽の大きさに対してお湯の投入量が今ひとつなような気もしますが、訪問したタイミングが良かったのか、お湯の鮮度感も良く、しかも終始独占できたので、存分に湯本の湯を堪能することができました。共同浴場のお風呂はやっぱり良いですね。


湯本の湯
単純温泉 58.6℃ pH8.2 13.0L/min(自然湧出) 溶存物質548.8mg/kg 成分総計548.8mg/kg 
Na+:141.5mg(73.04mval%), Ca++:39.2mg(23.28mval%),
Cl-:201.8mg(67.90mval%), SO4--:95.3mg(23.62mval%), HCO3-:18.3mg, CO3--:5.4mg,
H2SiO3:29.1mg,
(平成17年5月18日)
加水加温循環消毒なし

会津田島駅か会津高原尾瀬口駅から会津バスの檜枝岐行で「湯ノ花清滝前」下車すぐ
福島県南会津郡南会津町湯ノ花1229番地  地図
紹介ページ(南会津町観光物産協会公式サイト内)

6:00〜22:00
200円(湯ノ花温泉の商店・飲食店・旅館などで共同浴場共通の入浴券を購入してから利用してください)
備品類無し

私の好み:★★+0.5
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