温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯ノ花温泉 舘岩老人福祉センター ことぶき荘

2017年07月13日 | 福島県

福島県南会津町の湯ノ花温泉は昔ながらの素朴で鄙びた共同浴場が有名ですが、共同浴場の他にも外来者利用可能な温泉浴場があると聞き、実際に行ってみることにしました。その場所とは、温泉がある集落からちょっと離れたところにある「舘岩老人福祉センター ことぶき荘」。地方によくある温泉浴場併設の老人福祉施設です。


 
玄関ドアに提げられている「営業中」の札を確認してから館内に入り、玄関ホールの右手にある事務室窓口で料金を支払います。


 
玄関ホールから左手に進んで大きな暖簾をくぐると、リハビリ器具が置かれた広間に出ました。そして広間の先に男女浴室それぞれの出入口が並んでいました。たしかに館内にはお風呂の場所を案内する張り紙が掲示されているのですが、ひとむかし前の公営の福祉施設や保健所のような無機質な佇まいなので、本当にこの先で温泉に入れるのかちょっと不安になってしまいました。



脱衣室も病室のように無機的で温泉風情はないのですが、古い建物をこまめに手入れして綺麗に使っており、昭和の匂いを漂わせながらも綺麗に維持されている設備を目にすると、スタッフの皆さんの努力が伝わってきました。



浴室は内湯のみで露天はありません。また、ここまでの館内の様子からも容易に想像できる通り、浴室内も実用本位のタイル張りで、温泉浴場らしい風情も特に感じられません。でも室内の2方向には窓ガラスになっているので、日中は陽光がたっぷり降り注ぎ、明るい環境の中で湯浴みすることができました。ちなみに、窓ガラスの下半分が白く染まっているのは、雪で覆われているわけではなく、白いスプレー塗料で塗りつぶされているためです。おそらく目隠しの目的で白く塗ったのでしょうけど、あまりに手作業感が強いため、目隠しで塗ったというより、渋谷あたりで夜な夜な現れる自称アーティストのヒップホッパー兄ちゃんが手当たり次第にスプレーで落書きした跡のように見えなくもありません。


 
洗い場は出入口の左右に分かれて配置されており、計7基のシャワー付きカランが設置されていました。


 
2方向に設けられた窓の下に浴槽が据えられています。野球のホームベースを拡大したような形状をしており、最も長い辺で3mほど。このお風呂で唯一温泉をイメージさせてくれるのが、浴槽の隅に積み上げられた石積みの湯口。上に石のカエルがちょこんと載せられていますが、石積み自体からお湯が出ることはなく、石積みの前に突き出た配管からお湯が注がれていました。湯口から出てくるお湯はちょっと熱く、湯船の温度も一般的なお風呂より若干高めでした。この施設のメインユーザーである爺様たちは熱い風呂の方が好まれるのでしょうけど、でも年寄りにとって熱い風呂は体に毒ですよね。もうちょっとぬるめにした方が良いような気もしますが・・・。


 
館内表示によれば加水加温循環消毒の無い完全掛け流しとのことですが、私が入室した時には若干加水して湯加減を調整していましたので、状況に応じて加水は行われているのでしょう。老人向けの施設ですから、お風呂には手すりや段差の低いステップが設けられており、湯船のお湯はそのステップから洗い場へと溢れ出ていました。
お湯は無色透明で湯の華などもなく、ほぼ無味無臭です。これといったクセがないアッサリとしたお湯で、正直なところ掴み所がなく、あまりの没個性ゆえ何と表現したらよいのか困惑してしまうほどでした。なお室内にはシップのような臭いが充満していたのですが、おそらく温泉由来ではなく、先客の爺様の残り香だったのかもしれません。


 
「ことぶき荘」で使われてるお湯は「湯の倉湯」という源泉で、源泉で汲み上げたお湯を一旦タンクでストックし、それから男女各浴槽へと振り分けています。共同浴場「湯端の湯」の真ん前には源泉ポンプや受水槽があり、送湯設備の系統図が掲示されているので、送湯系統がどのようになっているのか一目瞭然です。浴場のお湯は、源泉からわざわざ800mの隔たりをやってきたものだったんですね。

共同浴場より料金が高いため、外来の利用者はあまり多くないかもしれませんが、ボディーソープやドライヤーなどの備え付けがありますので(共同浴場は備え付けが全くありません)、そうした設備面に期待したい方や、近隣の山に登った後に下山後の汗を流して身支度を整えたい方などには、こちらのお風呂がよろしいかと思います。


湯の倉湯
単純温泉 59.4℃ pH8.1 32.2L/min(自然湧出) 溶存物質910.0mg/kg 成分総計910.0mg/kg
Na+:200.0mg(67.01mval%), Ca++:78.9mg(30.30mval%),
F-:6.0mg, Cl-:320.8mg(69.37mval%), Br-:0.9mg, SO4--:154.5mg(24.54mval%), HCO3-:27.5mg,
H2SiO3:98.0mg,
(平成27年6月8日)
加水加温循環消毒なし

福島県南会津郡南会津町湯ノ花647  地図
0241-78-2430

9:00〜16:30 第4月曜定休
600円(入浴料450+入湯税150円)
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み;★★




コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

玉梨温泉 せせらぎ荘(2016年9月リニューアル後)

2017年07月11日 | 福島県
福島県会津地方は湯めぐりを趣味とする者にとって天国のようなエリア。そんな会津でも私は特に只見川流域が大好きなのですが、近年この流域の温泉浴場の一部ではリニューアルが図られており、今回記事で取り上げる金山町の「せせらぎ荘」も旧施設が解体されて新しく建築し直し、2016年9月にリニューアルオープンしました。拙ブログでは2014年4月9日付でリニューアル前の様子を紹介していますが(当時の記事はこちら)、はたして新しい「せせらぎ荘」はどのように生まれ変わったのでしょうか。


 
私が訪れたのは今年(2017年)4月。同じ福島県でも市街地では桜が満開でしたが、会津の山奥にはまだ桜前線が届いておらず、野尻川の川岸には雪が残っていました。


 
「せせらぎ荘」はその名の通り、野尻川のせせらぎを目の前にした川沿いに位置しているのですが、昭和風情が濃く残っていた旧施設の建物は完全に姿を消し、すっかり別の新しい建物が同じ位置に建てられていました。いや、厳密に言えば、以前は川に対して並行に建てられていましたが、新しい建物は垂直方向になっており、施設名と後述する椎名誠の碑文以外にかつての面影を偲ばせるものは無いと表現しても良いでしょう。


 
建物の裏手ではお風呂の余り湯と思しきお湯が排出されており、黄土色に濁った温泉の溜め池が出来上がっていたのですが、これは一体何のために溜めているのでしょうか?


 
さて、表に戻って玄関から館内へと入りましょう。玄関前には真新しい毘沙門天の石像、そして旧施設時代の名残である椎名誠の「いい湯だあ!」という碑文が埋め込まれた岩が設置されていました。玉梨温泉はかつて椎名誠が足繁く通ったことで知られていますね。
以前の館内は、向田邦子脚本のドラマに出てきそうな骨董品クラスの什器が使われていましたが、さすが完全リニューアルしただけあって、新しい館内は昔の面影は皆無。本当にここは「せせらぎ荘」なのかと我が目を疑ってしまいました。木材のぬくもりが伝わる玄関ホールに入り、作務衣を着た会津美人のスタッフさんに湯銭を直接支払います。


 
脱衣室もウッディーで温かみが感じられる内装です。特に棚には福島県内産の木材が使われており、地産地消が実践されていました。また棚やロッカー、そしてドライヤーなども多く、空間としても広いので使い勝手良好です。新しくなったばかりではなく、利便性もはるかに向上しました。この脱衣室で私が目を惹かれたのは、浴室出入口の左側に設置されている2つの温度計。後述するようにこちらには源泉別に2つの浴槽があるのですが、それぞれの浴槽には別源泉が張られており、それぞれの分析書と温度計が掲示されているのです。
ひとつは旅館や共同浴場にも引かれている町有源泉、もうひとつはこの施設ならではの源泉である大黒湯という源泉です。この大黒湯は貴重な炭酸泉であり、しかもそのお湯がかけ流されているため、炭酸泉の特徴を存分に享受することができるんですね。そこで室内には
大黒湯に関する説明書きも掲示されていました。入浴前に目を通してから湯浴みすると、その有り難さがよく分かるかと思います。


 
曇っている画像で申し訳ございません。お風呂は内湯のみですが、浴室は旧施設時代よりも格段に広くなり、石板タイルと木材のマッチングによる落ち着いた色調も相まって、のびのび且つゆっくりと湯浴みできる環境がつくられていました。その一方、窓は川に面しているのですが、目隠しのためか(あるいは冬の雪囲いのためか)すだれのようなものが掛かっており、景色が眺められないのはちょっと残念。


 
窓と反対側の左右に分かれて洗い場が配置されており、計9基のシャワー付きカランが設置されていました。シャワーから出てくるお湯はボイラーの沸かし湯です。


 
2つある浴槽のうち、主浴槽は(目測で)2.5m×5mというとても大きなもので、こちらには旅館や共同浴場にも引かれている町有源泉のお湯が張られています。お湯は緑色や赤みを帯びた黄土色に濁っており、浴槽の縁からしっかりと溢れ出ていました。紛うことなき放流式の湯使いです。まだリニューアルオープンして半年ほどしか経っていないのに、オーバーフローのお湯が常に流れている浴槽縁やグレーチングの周りは、すでに温泉成分の付着によって赤茶色に染まっており、早くも奥会津の温泉らしい貫禄を漂わせていました。


 
主浴槽の湯口からは熱い温泉がボコッボコと気泡や音をたてながら噴き上がっており、その飛沫が及ぶ周辺は赤黒く染まっていました。お湯の濃さがビジュアル的によくわかります。この濁りの強さはお風呂のみならず入浴者にもその影響が及ぶらしく、室内にはタオルが金気で染まっちゃうという旨の注意書きが張り出されていました。私は予め染色されているタオルで体を拭ったために、実際に金気色で染まったのか確認できませんでしたが、もし白いタオルで入浴なさる場合はちょっと留意した方がよいのかもしれません。
湯口のお湯を口に含んでみますと、塩味と出汁味、金気味、そして弱い炭酸味が感じられ、弱い金気臭が香ってきました。


 
主浴槽の左側にある小さな副浴槽は、主浴槽の3分の1ほどの大きさ(おおよそ4人サイズ)しかありませんが、こちらに張られているお湯は炭酸泉の大黒湯源泉であり、これが白眉で実に素晴らしい。お湯はほぼ無色透明ですが、わずかに金気色を帯びているように見えます。こちらの浴槽も完全放流式の湯使いなのですが、お湯を噴き上げている主浴槽に対し、こちらでは浴槽内でお湯を供給しています。こちらの炭酸泉はその名の通り遊離炭酸ガスを多く含むのですが、湯面上の湯口から落とすようなスタイルでお湯を注ぐと、せっかくの炭酸ガスが飛んでしまうため、このように浴槽内供給のスタイルを採用しているものと思われます。



槽内供給のおかげでお湯に含まれる炭酸ガスは飛ぶことがないため、湯船に浸かると全身が炭酸の泡だらけになりました。アワアワなお湯が好きな方ならば興奮すること間違いありません。遊離炭酸ガス1121.0mgという数値は伊達じゃありませんね。しかも湯船の温度は35℃という不感温度帯に近いぬる湯ですから、入りしなはちょっぴりヒヤっとするかもしれませんが、一旦肩まで浸かると全身が爽快感に包まれ、あまりの気持ち良さのため、私は誇張表現抜きで本当に微睡んでしまいました。ぬるいとはいえ、炭酸ガスの温浴効果がしっかりと効くため、たとえ寒い時期でも長湯をすれば体の芯からポカポカしっかり温まり、私の実感を申し上げますと皮膚の内側からポッポッと発熱するような感覚が得られました。また、暑い夏にはぬる湯ゆえの極上な清涼感をもたらしてくれるでしょう。こんな素晴らしい浴槽を設けてくださった関係者の方々には心から感謝です。

大黒湯は強い炭酸味を有しているほか、薄い塩味と出汁味、そして弱い金気味が得られますが、まだ酸化が進んでいないためか、金気臭(鉄錆感)はあまり現れていませんでした。もしこのお湯を加温したり、あるいは外気に長い時間触れさせ続けたら、ガスが飛び、鉄錆感が強く出てしっかりと濁ることでしょう。扱い方が難しい天然の炭酸泉を、良好な状態で楽しむことができるこちらのお風呂。再訪必至です。


 
玄関ホールや受付の奥には軽食がいただける食事処があるので、お風呂上がりに肉うどん(650円)を注文し、入浴欲求のみならず胃袋も満足させました。

古くからある温泉浴場がリニューアルされると、ノスタルジーや感傷が働いてしまうため、どうしてもその結果に対して賛否が分かれてしまいがちですが、少なくともこの「せせらぎ荘」に関しては、私は完全にポジティヴ評価です。リピート必至のこの施設がオープンしてくれたおかげで、また奥会津へ旅することが楽しみになりました。


大黒湯
含二酸化炭素-ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩温泉 36.8℃ pH6.4 61.5L/min(動力揚湯) 溶存物質2.976g/kg 成分総計4.097g/kg
Na+:649.7mg(68.33mval%), Mg++:60.0mg(11.94mval%), Ca++:150.2mg(18.13mval%), Fe++:3.7mg,
Cl-:542.7mg(38.07mval%), Br-:1.5mg, SO4--:414.1mg(21.43mval%), HCO3-:991.0mg(40.38mval%),
H2SiO3:135.2mg, CO2:1121.0mg,
(平成26年1月10日)

玉梨温泉町営源泉
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩温泉 45.9℃ pH6.4 294L/min(動力揚湯) 溶存物質3.536g/kg 成分総計3.972g/kg
Na+:790.8mg(69.29mval%), Mg++:66.6mg(11.04mval%), Ca++:179.9mg(18.08mval%), Fe++:1.7mg,
Cl-:669.8mg(39.29mval%), SO4--:488.4mg(21.15mval%), HCO3-:1159.2mg(39.51mval%),
H2SiO3:145.1mg, CO2:436.0mg,
(平成20年8月18日)

JR只見線・会津川口駅より会津バスの大芦(昭和温泉方面)行バスで「玉梨八町温泉」バス停下車、徒歩2~3分(バスは一日3往復のみ)
福島県大沼郡金山町大字玉梨字新板2049-1  地図
0241-54-2830
紹介ページ(金山町公式サイト内)

9:00〜21:00 無休
500円
ロッカー(有料100円)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

鳥取温泉 丸茂旅館

2017年07月09日 | 鳥取県
※2019年にお風呂が完全リニューアルされました。本記事で取り上げているのは以前の浴場の様子です。あしからずご了承ください。現状のお風呂の様子は公式サイトをご覧ください

 
温泉大国日本といえども、県庁所在地でかつ県の最主要駅の駅前なのに掛け流しの温泉がある都市は決して多くありません。山陰本線の鳥取駅はそんな条件に全てあてはまる極めて稀な存在ですが、昨年(2016年)某日にたまたま鳥取で一晩越す機会がありましたので、その時にお世話になった「丸茂旅館」についてレポートさせていただきます。鳥取駅前から徒歩5分という好立地にあり、市街地のど真ん中であるにもかかわらず掛け流しの温泉に入れるというとても珍しいお宿です。



日本旅館らしく敷地内には庭園が設けられていました。この庭園だけ見ていると、とても駅近の市街地とは思えません。
なお、こちらのお宿は日本海の幸を活かしたお料理も美味しいらしく、本来ならばお宿ご自慢のお食事もいただきたかったのですが、この時は旅程の都合で夜遅くにチェックインし、早朝に出発しなければならなかったため、残念ですが素泊まりで利用させていただきました。


 
今回通された客室は8畳の和室です。室内にはテレビやエアコンなどひと通りの設備が揃っているほか、トイレや洗面台もあるので、温泉入浴以外は全て室内で完結することができました。


 
客室にはお風呂が付いていましたが(温泉ではなく普通の沸かし湯です)、夜も翌朝も温泉の大浴場に入ったため、お部屋のお風呂は使っておりません。
お部屋の卓袱台の上にはお茶のセットのほか、冷水も用意されていました。後述するようにこちらの温泉は塩気が強く火照って汗が引きにくいため、こうして冷たい水をたくさん用意してくださると、風呂上がりには非常に助かります。小さなサービスかもしれませんが、お宿の優しい心配りが感じられました。


 
廊下をどんどん進んでいった突き当たりに浴場があります。男女の入れ替えは無いらしく、男湯は突き当たりの左側で固定されていました。脱衣室内にはタオルがたくさん用意されていますので、部屋からタオルを持参する必要はなく、手ぶらで入室しても大丈夫です。


 
細長い脱衣室の奥にあるドアを開けると浴室の湯気がお出迎え。お風呂は内湯のみです。ちょっとレトロな空気感を漂わせる浴室内には大きな浴槽がひとつ据えられ、それを囲むように洗い場が配置されていました。浴槽の周りは石庭風に設えられており、露天風呂がない分、大きな庭石や石灯篭などによって温泉らしい雰囲気を醸し出そうとしているようでした。


 
ベージュとグリーンの豆タイルによって独特な模様が描かれた壁のうち、一部には裸婦のタイル絵が施されていました。そしてその裸婦に見つめられるような形で洗い場が設けられており、シャワー付きカランが2つ、そして水道の蛇口が3つ(うち1つは浴槽の加水用)、それぞれ一列に並んでいました。いくら絵だとわかっているものの、シャワーで体を洗っている時にちょっぴり恥ずかしい思いをしたのは、私が自意識過剰だからでしょうか。


 
浴槽は小文字のbみたいに左側がちょこんと突き出ている変則的な形状で、左側の最長辺は約3m、手前側の幅は約2.5m。浴槽内は赤茶系の石板張りですが、縁は温泉成分のこびりつきによってアイボリー色にコーティングされていました。温泉は底にあけられた穴から供給されており、その真上に湯面はこんもりと盛り上がって小さな波を描いていました。


 
 
このお風呂でマニア的に目を奪われたのが、お湯の排水路です。湯船から溢れ出たお湯は小さなせせらぎをなして石庭の中を流れてゆくのですが、その流れの周りには温泉成分がこってりとこびりついて、サンゴ礁のような細かなトゲトゲや、石灰華の千枚田が形成されていました。県庁所在地且つ駅前市街地のお宿で温泉が掛け流されているだけでも驚きなのに、まさか石灰華まで現れているだなんて奇跡のようです。

お湯に関してですが、こちらでは宿の名前を冠した「丸茂泉源」という源泉を使っています。湯船のお湯は無色透明ですが、湯中では赤茶色の細かな浮遊物が無数に舞っており、その影響で僅かに霞んでいるようにも見えました。お湯を口に含むと、甘塩味のほか薄いパラフィンの風味が感じられましたが、匂いはあまり無かったように記憶しています。肩まで湯船に浸かると、食塩泉のようなツルスベと硫酸塩泉らしい引っかかりやトロミが混在して肌に伝わり、やや熱い湯加減も手伝って、大変強く温まりました。そして湯上がり後もなかなか汗が引かず、それゆえ上述した客室に用意されている冷水が非常にありがたかったのです。
館内表示によれば、源泉の湧出温度が熱すぎる時以外は、加水加温循環消毒の無い完全放流式であり、加水する場合でも最大加水率6%という上限を定めています。私が利用した時には非加水の源泉100%であり、お湯の濃さとフレッシュさを存分に味わうことができました。
今回は慌ただしい旅程で利用したため、ゆっくり過ごすことができませんでしたが、次回利用する機会があれば、食事もいただいてのんびり宿泊したいものです。スタッフの方も接客も良く、お湯も良質でかけながし、しかもリーズナブルという、とても利用価値の高いお宿でした。


丸茂泉源
ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉 47.7℃ pH6.8 42.5L/min 溶存物質4.447g/kg 成分総計4.467g/kg 
Na+:1293mg(87.48mval%), Ca++:128.8mg(10.00mval%),
Cl-:919.5mg(40.06mval%), Br-:2.1mg, SO4--:1427mg(45.87mval%), HCO3-:534.1mg(13.51mval%),
H2SiO3:60.8mg, HBO2:33.1mg, CO2:20.2mg,
(平成16年1月20日)
加水あり(源泉の温度が高くなった場合のみ。最大加水率6%)
加温循環消毒なし

JR鳥取駅より徒歩5分(約400m)
鳥取県鳥取市永楽温泉町458  地図
0857-23-1311
ホームページ

日帰り入浴不可?
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山口県の目次

2017年07月08日 | 山口県
2017.7.8作成

当ブログで記事にしてきた山口県の温泉を一覧にしました。
【路線名・駅名】:駅から徒歩圏内の温泉とその路線名・駅名


●山口市
湯田温泉 亀乃湯および温泉舎  【山口線・湯田温泉駅】
湯田温泉 西村屋(2016年9月宿泊)  【山口線・湯田温泉駅】
柚木慈生温泉

●長門市
俵山温泉 町の湯
俵山温泉 白猿の湯
湯免温泉 湯免観光ホテル 公衆浴場うさぎの湯
長門湯本温泉 旅館一福  【美祢線・長門湯本駅】
長門湯本温泉 恩湯  【美祢線・長門湯本駅】
長門湯本温泉 礼湯や足湯など  【美祢線・長門湯本駅】

●萩市
阿武川温泉

●下関市
川棚温泉 玉椿旅館
川棚温泉 小天狗
 前編(客室・奥の浴室)
 後編(手前の浴室)
川棚温泉 ぴーすふる青竜泉

●宇部市
持世寺温泉 杉野湯
持世寺温泉 上の湯(温泉センター) 【山陽本線・厚東駅】

.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

阿武川温泉

2017年07月06日 | 山口県
 
毛利の城下町である萩から山へ入った旧川上村に掛け流しの温泉施設「阿武川温泉」があると知ったので、どんなお湯に巡り会えるのか確かめるべく、実際に行ってみることにしました。場所は阿武川ダムの下流にあり、ダムに向かう一本道を車で走ってダムの手前で看板に従い左手に逸れると、容易にたどり着きことができました。


 
施設前のロータリーの真ん中に泉源があり、石碑の裏に小さな屋根がかけられたポンプがお湯を汲み上げられています。ダム工事の際、このあたりだけ雪が積もらなかったので、試掘したら温泉が見つかったんだとか。つまりダム工事の副産物と言えそうですね。


 
施設の裏手には阿武川が流れており、山の緑を川面に写した静かな川では、太公望たちが釣竿を垂らしていました。山の空気も川の水も綺麗で清々しい環境です。


 
玄関を入って左手にある受付で料金を支払い、湯銭と引き換えに脱衣室のロッカーキーを受け取ります。
館内には大・中・小という3つの浴場があり、「小浴場」は貸切専用ですが、「大浴場」と「中浴場」は曜日によって男女が入れ替わり、私が訪れた日は「中浴場」が男湯になっていました。このため、今回の記事では「中浴場」のみのレポートとなりますので、あしからず。


 
「中浴場」という名称なので、それなりの狭さを覚悟していましたが、決して中規模ではなく、むしろ一般的な大浴場と比べても遜色ないほど、広くて立派なお風呂でした。お風呂は内湯と露天に分かれており、内湯にはL字を逆さにしたような形状の浴槽がひとつ据えられ、その反対側に洗い場が配置されていました。洗い場にはシャワー付きカランが計5基並んでいます。浴槽は壁側および窓側の最長辺で5m弱ある大きなもので、赤系の御影石で縁取られ、槽内は水色のタイル張り。壁側にはゴツゴツとした岩が積み上げられており、川の上流にある長門峡をイメージしていると思われます。浴槽のお湯は40〜41℃という長湯仕様。窓に面した浴槽側面からはジェットバスがブクブク噴射されており、ちょっとぬるめの湯加減とジェットバスの気持ち良さが相まっているためか、内湯ではお爺さんたちが「あれ?昇天なさった?」と周囲を勘違いさせてしまうほど時間を忘れて延々と長湯していました。



浴槽のお湯は無色透明で、加温循環消毒の各処理が実施されており、浴槽内でしっかり吸引され、また一定時間毎に浴槽内から加温されたお湯が投入されています。この影響を受け、湯船のお湯からは特にこれといった特徴を得ることができませんでした。
しかし、これのみならず、非加温の生源泉も同時に投入されているのが素晴らしいところ。壁側に積み上げられている岩の間から石樋が突き出ており、そこからほんのりヒヤッとする源泉が注がれていました。この源泉からはゆで卵の卵黄を思わせる匂いと味が感じられ、ツルスベの滑らかなフィーリングも伝わってきました。繊細なお湯なので何らかの手を加えてしまうと途端に個性が失われてしまうのでしょうけど、生のままですとアルカリ性単純泉らしい個性がはっきりと確認できるのですね。


 

つづいて露天風呂へ。
露天ゾーンも「中」とは思えないほど広く、石材が多用された日本庭園風の落ち着いた設えで、内湯側にサウナと水風呂、ゾーンの中央に加温浴槽、そして最奧に非加温浴槽といったように、複数の浴槽類が設けられています。加温・非加温両浴槽とも10人サイズの岩風呂ですが、単に岩で囲われた非加温浴槽に対して、加温浴槽の真ん中には島のような岩が置かれており、これを背もたれ代わりにして入ると、丁度良い姿勢で湯浴みすることができました。
加温浴槽は内湯と同じく加温循環消毒が行われているとともに非加温の生源泉も注がれており、お湯の状態も内湯とほぼ同様で、湯加減は良いのですが、浴感は正直なところ掴みどころに欠け、温泉マニア的にはあまり面白くありません。その一方、奥の非加温浴槽はまさに源泉のありのままの浴感を体感できる貴重な浴槽です。湯口の時点で30℃前後のぬるいお湯であり、しかも浴槽の表面積が広いため、湯船のお湯はすっかり熱を奪われて水風呂状態になっていましたが、実際に入ってみますとアルカリ性泉らしいツルスベ浴感がしっかりと肌に伝わり、湯口ではタマゴ感もはっきりと得られました。尤も、生源泉のありがたみが理解できないと、この非加温浴槽は単なる水風呂にすぎませんから、私が訪れた時でもこの非加温浴槽に入ろうとする人は私以外にいませんでしたが、浴感はこの非加温槽の方が良いので、マニア的には白眉の浴槽と言っても過言ではないかと思います。暑い日に入れば爽快なこと間違いなし。わざわざ手を加えない源泉の浴槽を用意してくれている施設側の姿勢に感謝です。


アルカリ性単純温泉 32.3℃ pH9.4 溶存物質0.6004g/kg 成分総計0.6004g/kg
Na+:208.4mg, Ca++:14.6mg,,
F-:8.5mg, Cl-:296.1mg, Br-:0.7mg, HS-:0.9mg, S2O3--:0.8mg, OH-:0.4mg, CO3--:12.1mg,
H2SiO3:40.4mg,
(平成26年9月29日)
加温あり(入浴に適した温度に保つため)
循環ろ過あり(衛生管理のため)
消毒あり(衛生管理のため、塩素系薬剤及び光触媒装置を併用)

萩バスセンターより防長バスの阿武川温泉行もしくは惣良台入口行の路線バスで「阿武川温泉」バス停下車すぐ
山口県萩市川上4892-1  地図
0838-54-2619

10:00~21:00(受付終了20:30) 火曜定休 (祝日の場合は営業)
410円(サウナ別料金)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする