欵冬(ふき):民間に云ふ わたぶき又山のふき 葉及び茎味甘く温(うん) 毒無し 花も糧(かて)とすべし 花は苦く辛し煠熟(ゆびき)て煮水に漬けさわし置て後 流水に一宿浸せば苦味を去る葉茎は煠熟(ゆびき)食すれば苦味なし 解毒(どくけし)の法前のごとし(「民間備荒録」より)
訳:一般に「わたぶき」または「山のふき」という。葉と茎の味は甘く、薬物としての性質は「温」。毒はない。花も食べられる。花は苦く、辛い。よく茹でて、その茹で汁に浸けておいた後流水へ一晩浸せば苦味がとれる。葉や茎はよく茹でて食べれば苦味はない。解毒の方法は前と同じ。(「飢饉を救った野草たち」より)
2013年4月5日(金)、釣山公園(一関市釣山)に行ってきました。朝から暖かい日で、日中は上着がいらないほどでした。東側の正面出入り口から陣太鼓橋を渡って田村坂を上り、藩主の井戸・清庵ケ池から右側の方に進むと「備荒・清庵野草園」というのがあるのですが、草花は未だほとんど見当たらなかったのですが、植栽されたフキ(蕗)が花を沢山咲かせていました。
(上)清庵野草園:は、釣山公園中腹に拠点園があります。この公園は一関青年会議所を中心とする市民の労力奉仕や善意の寄付で作られたそうで、植栽された植物は、昭和60年9月現在で約80種。その後、同園斜面や池などにも植栽されて約110種ほどもあったようです。
(下)「飢饉を救った野草たち~清庵野草園の植物」:この清庵野草園については、昭和60年9月15日初版発行の「清庵野草園をつくる市民の会」(会長・八巻一雄)編集・発行の冊子に詳しく記載されていますが、江戸時代中期に一関藩医として活躍した建部清庵という人を顕彰してつくられたものです。
建部清庵という人は、当時、凶作飢饉が続き、多くの人々が餓死したそうですが、そのほとんどの人は五穀以外の植物の食べ方を知らなかったり、食料の代わりに有害な草木を食したためであったことから、これを憂い、人々の病気や飢饉の苦しみからいかに救うかという大きな課題に取り組み、研究努力された偉大な先覚者であります。
(下)一関市博物館編集・発行の「民間備荒録~江戸時代の飢饉と救荒書」には、この建部清庵という人が著した食用植物と施薬調合の仕方などを紹介する「民j間備荒録」と、「備荒草木図」とが掲載されています。
フキ(蕗) / フキノトウ キク科 フキ属 Petasites japonicus
山野に生える多年草。淡緑色の苞に包まれたつぼみ(蕾)がフキノトウで、ほろ苦い早春の味として人気がある。葉や葉柄も食べられる。葉は幅15~30cmのほぼ円形。花期は3~5月。雌雄別株。雄株の頭花は黄色っぽく、花が終わると枯れる。雌株の頭花は白っぽく、花の後高さ50cmほどになる。果期のフキは白い冠毛が目立つ。
北海道や東北地方に分布するアキタブキ(秋田蕗)var.giganteusは葉が直径1.5mと大きく、葉柄は長さ2mにもなる。しかし、アキタブキも本州の中部地方やより暖かい地方で栽培すると、自生地のものほど巨大にはならないとのこと。市販のフキはほとんどがアキタブキの栽培品。フキノトウは食用として賞味されるほか、昔から薬用としても利用されてきた。セキ止めやタン切りなどに効果があり、特有の苦味には消化および食欲促進作用がある。分布:本州~沖縄。[以上、山と渓谷社発行「山渓ポケット図鑑1・春の花」&同「山渓カラー名鑑・日本の野草」より]
https://app.blog.ocn.ne.jp/t/app/weblog/post?id=33600351&saved_changes=1&blog_id=82331
[peaの植物図鑑:一関市東山町「唐梅館森林公園」のフキ(蕗)/フキノトウ]
フキ キク科:雪解けとともに、あちらこちらで顔をのぞかせるフキノトウは、食卓に春の香りを運んでくれる。岩手では、フキノトウよりも「バッケ」の名でおなじみだ。
このフキノトウ、言うまでもなくフキの花である。運よく摘まれずに残ったものは、その後グングンと茎を伸ばし、下の写真のようになる。
筆者にとっても耳の痛い話だが、年ごろを過ぎても結婚しない女性のことを「トウが立つ」と言うのは、このような様子を指しているのだろう。しかしフキのほうは、ちゃんと種子を実らせているのだから、立派なものである。
大きなフキの葉は、急な雨降りのときに傘がわりにしたり、お面を作ったりして遊ぶ。山間の湧き水を、フキの葉をクルリと丸めたコップで味わうのも、また格別である。[岩手日報社発行「岩手の野草百科(澤口たまみ・著)」より]
https://app.blog.ocn.ne.jp/t/app/weblog/post?__mode=edit_entry&id=39924937&blog_id=82331 [peaの植物図鑑:奥州市埋蔵文化財調査センターのフキノトウ(蕗の薹)]
https://app.blog.ocn.ne.jp/t/app/weblog/post?__mode=edit_entry&id=37121165&blog_id=82331 [peaの植物図鑑:岩手県立磐井病院のフキノトウ(蕗の薹)]