紅蓮(ぐれん)のポケット

子どもの本の作家・三輪裕子のふつうの毎日
2015年夏。三宅島で農業を始め、東京と行ったり、来たりの生活になる

おぼん  ふるさとへ帰る夏 (吉田智彦・著)

2009-07-09 12:05:06 | 13・本・映画・演劇・音楽など
 


「今から約30年前の夏休み、ぼくが小学校4年生のときのこと。ぼくのはじめてのひとり旅の話をしよう。」

という出だしで始まる吉田智彦さんの福音館書店から刊行された絵本第二弾(月刊絵本「たくさんのふしぎ」)。
山形の庄内の田舎に1人で遊びに行く少年の物語。


田舎で智彦少年を待っていたのは、おじいちゃん、おばあちゃん。仏壇のある家。畑と畑でとれた野菜。魚釣りのできる川。




そして、田舎での最大のイベント、お盆に、お墓参りに、盆踊りや花火もあるお祭り。

お盆の前には、ご先祖様が迷わず家までたどり着けるように準備をする。ナスやキュウリで、乗り物である馬や牛を作って。
お盆の最後には、灯ろうを流してご先祖様を送る。

この絵本には、お盆を中心とした夏の行事が、初めて1人で田舎にいった少年の目を通して描かれている。


前回の「海と山をつなぐ川のお祭り」同様、地域や家に根ざして、ずっと引き継がれてきた日本人が大切にしてきたもの。
今では、だんだんとすたれつつある、そういうものを伝えていきたい、という思いがあふれる物語である。


私は子どもの頃から、「田舎」という言葉を聞く度に、田舎のある人が、なんともうらやましい気持ちになった。
親の代から東京生まれ、東京育ちの私には、帰る「田舎」がなかった。
私の父が亡くなって初めてのお盆。伯母などに教わりながら、見よう見まねで、新盆をしたことを思い出した。

 


トモさんのやわらかな筆づかいで、今や都会の人達の間ではなくしつつある世界が、やさしく、ていねいに描かれている。


◆吉田智彦さんのブログ「て to て」