経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

浮足立った政界 : 萩生田発言で

2019-04-23 07:51:52 | 消費税
◇ 観測気球か失言か? = 安倍首相の側近中の側近といわれる自民党の萩生田幹事長代行。この人の不規則発言が、政界に大きな波紋を投げかけている。萩生田氏は先週18日、インターネット番組で「日銀が7月に発表する短観の結果しだいでは、消費税引き上げに別の展開もありうる」と述べた。さらに「増税を延期するとすれば、国民に信を問う必要がある」とまで踏み込んでいる。

この発言について、政府首脳は直ちに否定。菅官房長官、麻生財務相、安倍首相の順で「リーマン・ショック級の不況が来ない限り、消費増税は予定通り実施する」と言明。萩生田氏も「全くの個人的見解だ」と釈明した。この結果、波紋はいったん鎮まり、株式市場などでも冷静に受け止めたようだ。

だが野党の間では、疑念が再燃した。ふつうは、いくら側近中の側近でも総理大臣の解散権にまで触れることはありえない。しかも政府・自民党内からは、そのことに対する批判が全く聞こえてこない。これは安倍首相も承知のうえで、衆参同日選挙に対する観測気球を上げたのではないか。それに違いない、と野党は信じ始めたようだ。同日選挙で野党が騒ぎ出し、補欠選挙では敗北。与党の衆院議員も心穏やかではいられない。

真相は判らない。だが安倍首相が14年11月に消費増税の延期を決めたとき、日銀短観の大企業・製造業DIはプラス13。この3月のDIはプラス12で、6月にはそれを下回る公算が大きい。そんな“裏付け”の数字も飛び出して、政界は騒がしくなってきた。リーマン級の不況なら、DIはマイナスまで落ち込むはず。はたして、どういう展開になるのだろうか。

       ≪22日の日経平均 = 上げ +17.34円≫

       ≪23日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2019-04-22 07:38:36 | 株価
◇ ダウ平均は新高値に挑戦 = ダウ平均株価は先週147ドルの値上がり。昨年10月に付けた史上最高値まであと270ドルに迫っている。4月に入って3週とも新高値を狙ったが、いずれも失敗。今週は4度目の挑戦となる。トランプ大統領に対するロシア疑惑が“灰色に近い白”で決着したことも、プラス要因に働いたようだ。市場では恐怖指数も極端に低下していることから、今週中の新高値に期待する見方は広がっている。

日経平均も先週は230円の値上がり。こちらは昨年10月の高値から、まだ2070円も低い。ニューヨークが上がると割安感が改めて意識され、買いが増えるようだ。円相場が112円前後で安定していることが、大きなプラス材料になっている。自民党の萩生田幹事長代行が「次の日銀短観しだいで、消費税引き上げは違う展開になるかも」と発言したが、市場はあまり動揺しなかった。

IMF(国際通貨基金)が世界経済の見通しを再び下方修正したように、市場を取り巻く環境は明るさを失いつつある。だが株価は、それを無視して上げている。景気は下向きだが、底割れするような心配はないからだ。むしろ新たな景気対策をアテにしているようにも見受けられる。だが、こうした感覚は好調な企業業績が続かなければ維持できない。この意味で、今週から本格化する3月決算の結果が重要になってくる。そして10連休。

今週は24日に、3月の企業向けサービス価格、2月の全産業活動指数。26日に、3月の労働力調査、鉱工業生産、商業動態統計、住宅着工戸数。アメリカでは22日に、3月の中古住宅販売。23日に、3月の新築住宅販売。26日に、1-3月期のGDP速報が発表される。

       ≪22日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

最悪のバラマキ : 大学無償化

2019-04-20 08:52:03 | 無償教育
◇ 日本の将来を危うくする = 低所得世帯の学生に大学教育を受けさせるため、授業料を免除する。こういう触れ込みの「大学等就学支援法案」が衆院で可決され、参院に送られた。必要な財源は年7600億円。消費税引き上げによる増収分で賄う方針。一見すると良さそうな内容だが、考え方はズサン極まりない。下手をすると、日本国の将来に大きな悪影響を及ぼしかねない危険性を持っている。

法案によると、対象となるのは年収が380万円未満の世帯。具体的には、国公立大学の学生には最大年54万円、私立大学の場合は70万円の給付型奨学金を支給する。実施は来年4月からの予定。本人の学力や学習意欲、進学目的などで奨学金に差を付けるというが、いったい誰がどんな基準で審査をするのだろうか。

いま日本には768の大学が存在する。そのうちの約8割が私立大学だ。この私立大学のうち300校近くが赤字経営で、学生の数が定員に達していない。つい最近も定員不足を補うため、外国人留学生を大量に入学させて問題を起こした大学もあった。こんな大学なら、勉強しなくても入学できる。そして奨学金をもらって、遊んで暮らす。こんな若者が増える可能性は否定できない。

日本の伝統技術を継承して行くためには、高校出の若者も必要だ。そういう人たちが奨学金につられて、大学に進学したら。大学無償制度が普及しているヨーロッパ諸国の例をみると、中学・高校の時代から生徒の選別が始まる。その過程で選ばれた若者に奨学金を与えている。今回の法案とは、全く考え方が違う。今回の法案は選挙を控えたバラマキであって、若者を重視した政策ではない。

       ≪19日の日経平均 = 上げ +110.44円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】   

対中輸出・対米黒字・燃料輸入の動向

2019-04-19 07:16:22 | 貿易
◇ トランプ大統領は納得しない = 財務省は17日、3月分の貿易統計を発表した。それによると、輸出は7兆2000億円で前年比2.4%の減少。輸入は6兆6700億円で1.1%の増加だった。この結果、貿易収支は5300億円の黒字となっている。いま貿易に関して重要な視点は、対中輸出、対米収支、燃料輸入の3点だろう。季節的な変動をならすために、1-3月期の数字を前年同期と比較してみた。

まず対中輸出。3月の輸出総額が減少したのも、中国向けが9.4%も減ったため。1-3月期でみると、輸出額の合計は3兆6800億円。前年に比べて7.6%の減少だった。1月に大きく減少したあと2月はプラスになったが、3月には再び落ち込んでいる。中国政府は1-3月期の成長率が下げ止まったと発表したが、日本の輸出にはまだその影響が現われていない。

次は対米収支。1-3月期の収支は1兆6000億円の黒字だった。前年同期比では4.4%の増加となっている。日米間の貿易交渉を控えて日本はシェール・ガスや防衛装備品の輸入を増やす努力をしたが、その効果は数字に出なかった。トランプ大統領も、これでは納得しないだろう。5月以降の本格的交渉で、アメリカ側はこの数字を持ち出して厳しい姿勢をみせるのではないか。

もう1つはエネルギーの輸入額。1-3月期に輸入した原油など鉱物性燃料の総額は4兆7600億円だった。前年比では4.2%減っている。これは原油などの国際価格が下落したためで、輸入数量は減っていない。最近は原油価格が急騰しているから、4月以降の輸入額は増加に転じるだろう。政府は早急にエネルギー計画を立て直す必要がある。

       ≪18日の日経平均 = 下げ -187.85円≫

       ≪19日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

習マジック? : 成長率が底入れ

2019-04-18 07:22:34 | 中国
◇ 1-3月期は前期と同じ6.4%に = 中国統計局が17日発表した1-3月期のGDP速報によると、前年同期に比べた実質成長率は6.4%だった。この成長率は、昨年10-12月期と同じ。したがって昨年1-3月期の6.8%成長から減速していた中国の成長率は、ちょうど1年で下げ止まったことになる。米中貿易戦争の影響で輸出は大きく減退したが、習政権の景気対策が功を奏して生産や消費が回復した。

同時に発表された経済指標をみると、1-3月期の輸出は1.4%の増加。18年の9.9%増加から大幅に減少している。その半面、鉱工業生産は6.5%の増加。18年の6.2%増加を上回った。また固定資産投資も6.3%増加し、18年の5.9%増加より改善。小売り売上高は8.3%と18年の9%には及ばなかったが、3月だけをみると8.7増加に回復している。これらはいずれも、政府による巨額のインフラ投資に刺激された結果だという。

アメリカやEUの景気見通しに陰りが見えてきたいま、中国経済が一足先に回復すれば、世界同時不況は免れる。その意味では喜ばしいことだが、この先も成長率が順調に上昇して行くという見方は少ない。米中貿易戦争が終わらない限り、輸出の減退が続き、政府のインフラ投資も息切れになると考えられるからだ。

さらに数字そのものに対する疑問が、またまた出始めている。たとえばシカゴ大学と香港中央大学の共同研究では「08-16年では成長率に年平均1.7ポイントが上乗せされた」という結論を出した。地方政府が過大に報告した数字を「統計局が適正にチェックしていないため」だと分析している。そう言えば、集計が異常に速い。1-3月期のGDP速報はアメリカが4月26日、日本は5月20日の予定なのだ。

       ≪17日の日経平均 = 上げ +56.31円≫

       ≪18日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

Zenback

<script type="text/javascript">!function(d,i){if(!d.getElementById(i)){var r=Math.ceil((new Date()*1)*Math.random());var j=d.createElement("script");j.id=i;j.async=true;j.src="//w.zenback.jp/v1/?base_uri=http%3A//blog.goo.ne.jp/prince1933&nsid=145264987596674218%3A%3A145266740748618910&rand="+r;d.body.appendChild(j);}}(document,"zenback-widget-js");</script>