経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

最初は グー : 日米貿易交渉 (下)

2019-04-17 07:54:25 | 貿易
◇ 殺し文句は自動車の輸入規制 = アメリカ政府が農産物の次に関心を持っているのは、自動車である。日本側の通関統計でみると、18年の日本の対米輸出は175万台。一方、アメリカ車の輸入は2万台。金額にすると、4兆5000億円と1000億円という完全な片貿易になっている。トランプ大統領としては、来年の選挙を前に支持基盤である農業と自動車産業のテコ入れを図っておきたいところだ。

貿易の不均衡を是正する目的で、アメリカ側が為替条項の設定を要求してくることは確実。為替相場を「下落に誘導するような政策は禁止する」という趣旨だが、これが曲者だ。政府が市場に直接介入することだけでなく、日銀のマイナス金利政策にまで適用されるようだと、日本側は反論の仕様がない。

交渉が行き詰まったとき、アメリカ側がちらつかせるのは日本車の輸入規制だろう。輸入台数の上限を設定する方法と、高い関税を課するやり方がある。トランプ大統領がメキシコや中国との交渉で使った“奥の手”だ。これを実施されると、日本側の被害はきわめて大きい。対抗しようにも、アメ車の輸入はないに等しいから出来ない。

日本側の強みは、アメリカ産のシェール・ガスと防衛装備品の輸入を急増させていることだ。この結果、たとえば18年の対米貿易黒字は8.1%減少している。ことしの黒字も減る見込みだ。日本としてはこうした実績を背景に交渉し、できるだけアメリカ側に自動車の輸入規制を言わせないようにする。そこがポイントになるだろう。

       ≪16日の日経平均 = 上げ +52.55円≫

       ≪17日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

最初は グー : 日米貿易交渉 (上)

2019-04-16 07:15:36 | 貿易
◇ 始まった閣僚級の折衝 = 茂木経済財政相とライトハイザーUSTR(通商代表部)代表は15-16の両日、ワシントンで貿易問題を話し合う。これにより日米が二国間貿易協定を結ぶ交渉が、正式にスタートした。トランプ政権は発足以来、カナダとメキシコ、中国、EUと精力的に交渉してきたが、今後は最後に残った日本との貿易協定成立に全力を傾けることになる。

まず決めなければならないのは、今後の交渉の範囲。日本側はモノの貿易だけに限る方針で、協定の名称もわざわざTAG(物品貿易協定)と呼んでいるほどだ。これに対してアメリカは「サービス部門も含めたい」意向。だが、この点については、そんなに揉めることはないと予想される。

というのもアメリカ政府にとって、当面の関心事は農産物だ。TPP(環太平洋経済連携協定)が発効したことで、たとえば日本のオーストラリア産牛肉の関税は段階的に9%まで引き下げられるが、アメリカ産は38.5%の関税がかかったまま。農業団体から「何とかしろ」と突き上げられている。日本側も「TPPと同じ水準に下げること」に異論はない。また日本側には、サービス部門でも通関手続きの簡素化ぐらいは受け入れる用意がある。

今月26-27日には、安倍首相とトランプ大統領が会談する予定。常識的に考えれば、その前に無用な衝突は避けるはずだ。だから今回の閣僚会議では、波風は立たない。しかし最初はグーでも、その後の交渉ではアメリカは強く出てくるに違いない。まず農産物の輸入関税をTPP以上に下げる。さらに自動車の輸入を増やせ。円相場の下落を導くような政策の規制などなど。本当の真剣勝負は、5月以降にやってくる。

                              (続きは明日)

       ≪15日の日経平均 = 上げ +298.55円≫

       ≪16日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2019-04-15 07:51:38 | 株価
◇ カベにぶつかった株価 = 日経平均は先週63円の値上がり。週の終り値は2万1871円となり、なんとか年初来高値に到達した。しかしTOPIXは5日間の続落。これからどんどん値を上げて行く雰囲気ではない。どうやら2万2000円が、手ごわいカベになってきたようだ。このカベを突き抜けるにはかなり大きな材料が必要だが、いまのところ視界には何も入ってこない。

ダウ平均は先週13ドルの値下がり。史上最高値の更新を目前にしながら、こちらも2万6500ドルがカベになっているようだ。それでもダウは年初来12%の上げ。上海総合の28%には及ばないが、日経平均の9%よりは大きい。こうした年初からの株価上昇率は、各国の景気対策と相関している。日本の財政支出増は、消費税による収縮を相殺するだけの効果しかない。

日米間の貿易交渉が、いよいよ始まる。今週15-16日の閣僚級会議で、アメリカ側がどんな要求をしてくるか。市場は聞き耳を立てるだろうが、あまり表面には出てこないかもしれない。一方、日米ともに企業の3月期決算発表が始める。経営者がことしの業績を、どう予想するのか。市場は一喜一憂しながら眺めることになる。

今週は16日に、2月の第3次産業活動指数。17日に、3月の貿易統計と訪日外国人客数。19日に、3月の消費者物価。アメリカでは16日に、3月の工業生産と4月のNAHB住宅市場指数。17日に、2月の貿易統計。18日に、3月の小売り売上高とカンファレンス・ボード景気先行指数。19日に、3月の住宅着工戸数。また中国が17日に、1-3月期のGDP速報と3月の鉱工業生産、小売り売上高、固定資産投資額を発表する。

       ≪15日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

大統領の 火遊び? ⇒ 原油の高騰

2019-04-13 07:40:54 | 原油
◇ 計算違いで自身が火傷も = 原油の国際価格が、また急騰している。ニューヨーク市場のWTI(テキサス産軽質油)先物相場でみると、昨年末には1バレル=40ドル強だったものが、今週は64ドル台まで上昇した。最近の要因は、リビア国内での軍事衝突。OPEC(石油輸出国機構)とロシアなどが減産を継続し、アメリカのシェール生産は増加している。にもかかわらず価格が上昇した背景には、トランプ大統領の思惑的な戦術が隠れているようだ。

サウジアラビアなどOPEC諸国とロシアは、全体で日量120万バレルを減産する協定を守り続けてきた。その一方、アメリカのシェール生産は増加し続け、ついにアメリカはロシアやサウジを抜いて世界一の産油国となっている。このため原油の国際価格は昨年を通じて下げ続けていた。それが急反発したのは、イラン、ベネズエラ、リビアという産油国が、立て続けにアメリカから経済制裁を受けたためである。

トランプ大統領はしばしば「原油価格は高すぎる」と批判しており、原油価格の高騰を嫌っていることは明らかだ。ガソリンが値上がりすると消費者の不満が高まり、その矛先は政府に向けられる。来年の大統領選挙を控えて、その思いは強まっているに違いない。その一方で反アメリカ的な国は敵国とみなし、経済制裁を徹底する外交戦略も重視している。

イラン、ベネズエラ、リビアに厳重な経済制裁を科せば、原油の国際価格は押し上げられる。しかし世界一の産油国になったアメリカが増産すれば、価格の上昇は抑えられる。トランプ大統領は、こう考えたに違いない。だが現実の価格は65ドルにまで上昇してきた。これが80ドルにもなったら、トランプ大統領は計算違いをしたことになる。何か新たな手を打ち出すのだろうか。

       ≪12日の日経平均 = 上げ +159.18円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】  

イギリスの離脱は ない?

2019-04-12 06:59:33 | EU
◇ EUが「10月末までの延期」を認めた真意 = EUは10日の首脳会議で「イギリスの離脱期限を10月31日まで延期する」ことを承認、イギリス側に通達した。ただし5月下旬に開くヨーロッパ議会に、イギリスが議員を送り込むことが条件になっている。このため今後の可能性としては①イギリス議会が10月末までに協定案を批准し、その時点で離脱する②ヨーロッパ議会に議員を送らず、6月1日に“合意なき離脱”となる――の2つに絞られたとみられている。

だがアイルランドとの国境問題を巡って、イギリス議会がまとまる気配は全くない。しかしイギリス議会は「合意なき離脱には反対」の決議をしている。すると①も②も実現する可能性はゼロに近い。残された道は、国民投票によって“残留”を決めるしかないのではないか。EUはそのために必要な時間を、イギリスに与えたのではないか。

いまのイギリス議会は離脱派と残留派が伯仲しており、メイ首相がどんな提案を出しても否決されてしまう。だが“合意なき離脱”の恐ろしさが判ってきたので、これだけは避けたいという主張が多数を占める。この点は一般国民も同じで、いまもし国民投票を実施すれば“残留”票が過半数を占める確率はきわめて高い。

EUはこの方向を、最も望ましいと考えている。イギリスには大きな貸しを作れるし、他の加盟国に対する“みせしめ”にもなる。経済に及ぼす悪影響も、最小限度に抑えられる。もっとも、その場合でもイギリス国内での離脱派と残留派の激しい対立は続くだろう。しかし分裂はイギリスの国内問題に限定されるから、EUとしては傍観していればいい。

        ≪11日の日経平均 = 上げ +23.81円≫

        ≪12日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

Zenback

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