経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

株価を 動かしている力 (下)

2019-04-11 08:08:54 | 株価
◇ 怖ろしいのは金融不安だけ? = 世界中に投機資金がどのくらいあるかは、計測できない。環境しだいで同じおカネが投機に向けられたり、安全資産になったりするからだ。だが投機を主な目的としているヘッジファンドは世界でおよそ1万。その運用資産は350兆ドルに達するという試算もある。こうした巨額の資金が、常に株式市場への参入を狙っているわけだ。

かつては景気の見通しが悪化すると、株価は値下がりした。しかし現在はコンピューターによる売買で、瞬時に売り抜けられるから早めに手を引く必要がない。しかも最近の景気下降は、きわめて緩やかだ。たとえばIMFが予測する先進国のことしの成長率は2.0%だが、昨年との比較では0.1ポイントの下方修正にしかすぎない。だから株価が下がると、すぐに買いが出てくる。

米中貿易戦争にしてもイギリスのEU離脱にしても、道のりが長かったために株価はかなり織り込み済み。したがって結論が出るぎりぎりまで、様子をみる傾向が強まっている。その間にも株価は変動を繰り返すから、投機筋としては儲けるチャンスが多い。こうして株価と景気の関連性は、少しずつ薄まってきたように思われる。

要するに市場は“リスク慣れ”したのだろう。しかし怖ろしいのは、金融不安の再来。リーマン・ショックのような不安が再来すれば、投機資金はほとんどが市場から姿を消す。株価は暴落するわけだ。だから市場は金融不安の兆候には、きわめて神経質にならざるをえない。その小さな芽は、中国やアメリカ、ヨーロッパや日本にも点在しているのが現状だ。

       ≪10日の日経平均 = 下げ -115.02円≫

       ≪11日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

株価を 動かしている力 (上)

2019-04-10 09:00:18 | 株価
◇ 景気動向との乖離が目立つ = 株価は政治・経済・社会面で生じる雑多な出来事が影響して、連続的に形成される。なかで最も連動性が強いのは、景気動向との関連だろう。景気の上下動で、企業の収益が変動する。株価は基本的に企業価値を表しているから、景気との関連は常に最も深い。ところが最近の株価は一時的にもせよ、景気との関連性を薄めているように見受けられる。どうしてだろう。

世界経済の動向をみると、昨年秋からは明らかに勢いを弱めている。中国やEU経済の減速。アメリカ経済の先行きにも、警戒論が広がっている。ことしの予測については、国際機関も民間の研究所も「成長率の鈍化」で一致している。たとえばIMF(国際通貨基金)は、先進国の成長率を2.0%に下方修正した。しかし株価は下がらない。

最近の事例をみても、アメリカでは2月の雇用情勢が大幅に悪化。景気後退の前兆といわれる長短金利の逆転も、11年半ぶりに出現した。だがダウ平均株価は、いま史上最高値に接近中だ。日本でも3月の日銀短観では、経営者の業況感が大幅に悪化。政府も月例報告で「景気の弱さ」を3年ぶりに認めた。しかし日経平均は上昇基調にある。

その最大の原因は、やはり膨れ上がった投機資金にあるだろう。企業や個人が金融資産を貯め込んだところへ、中央銀行による膨大な資金供給が重なった。08年のリーマン・ショック後に、米欧中日の中央銀行が放出した資金量は20兆ドル(2200兆円)に達したとみられている。これらの資金の大半が、常に株式市場への参入を狙っているわけだ。

                                (続きは明日)

       ≪9日の日経平均 = 上げ +40.94円≫

       ≪10日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

景気後退の懸念が消滅? / アメリカ

2019-04-09 07:44:09 | 景気
◇ 雇用状況は回復したが = 米労働省が発表した3月の雇用統計によると、非農業部門の雇用者増加数は19万6000人だった。前月は2万人(改定値でも3万3000人)しか増えなかったため景気後退への懸念が高まっていたが、この発表で懸念は吹き飛んだと考える人が多いようだ。株式市場も好感し、ダウ平均株価は史上最高値にあと400ドルの水準に到達した。だが雇用統計の中身をみると、心配な点もないではない。

回復したと言っても、ことし1-3月の平均増加数は18万人。昨年の平均22万3000人に比べると、明らかに増勢は弱まった。また業種別では、製造業の雇用者が減っている。医療・介護やIT技術部門で雇用者数が増加したなかで、製造業だけが6000人減少した。それも自動車と同部品業に集中している点が目立つ。

小売り売上高も昨年12月に1.2%減少したあと、ことし1-2月も増加していない。アメリカの個人消費はGDPの7割を占め、景気を支える最大の要因だ。自動車関連の雇用者が減り、小売り売上高も伸びない状況は、個人消費の変調を示唆しているのかもしれない。トランプ大統領による大型減税の効果が、息切れしてきた可能性もある。

トランプ大統領もこの点を気にして、FRBへの露骨な介入を始めている。利下げをするよう強く要請し、空白となっている2人の理事に利下げ派の人材を指名する方針だ。しかし数字のうえでは雇用者の増勢が回復したため、FRBとしては利下げの理由がない。この大統領とFRBの対立も、おそらくは4月の雇用統計が決着させることになるのだろう。

       ≪8日の日経平均 = 下げ -45.85円≫

       ≪9日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2019-04-08 07:45:38 | 株価
◇ 悪材料は無視した株式市場 = 株価は予想以上に大きな反発をみせた。ダウ平均は先週602ドルの値上がり。終り値で2万6800ドル台に載せ、昨年10月の最高値まであと400ドルの水準に迫っている。中国のPMI製造業景況指数が5か月ぶりに50%を回復、半導体市況の好転、アメリカの雇用者数が大きく改善。これらの好材料に対して、きわめて敏感に反応した。

その一方、イギリスの合意なきEU離脱の可能性が高まり、米中貿易交渉も難航している。アメリカの小売り売上高が伸び悩み、非製造業のISM景況指数も低下した。だがニューヨーク市場は、これらの悪材料は全く無視した形。市場では「今月中に史上最高値の更新を期待する」声が、じわじわと広がっているようだ。

ニューヨークに引きずられて、東京市場でも楽観的な空気が強まっている。日経平均は先週496円の値上がり。日銀短観では企業の業況判断が大きく下がったが、株価は新年号・令和に敬意を表してむしろ上昇している。今週は12日がイギリスにとっての最終期限。その前にEUが離脱期限の再延長に応じるかどうか。そんななかでも、株価はいぜん上を目指せるのか。

今週は8日に、2月の国際収支と3月の消費動向調査、景気ウォッチャー調査。10日に、3月の企業物価と2月の機械受注。アメリカでは10日に、3月の消費者物価。11日に、3月の生産者物価。12日に、4月のミシガン大学・消費者信頼感指数。また中国が11日に、3月の消費者物価と生産者物価。12日に、3月の貿易統計を発表する。

       ≪8日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

健康寿命オリンピックは いかが

2019-04-06 08:16:16 | 高齢者
◇ 優秀な自治体に金・銀・銅メダル = 「日本人の健康寿命を2040年までに、男女とも3年延ばす」目標を、厚生労働省が掲げることになった。朝日新聞が、こんな記事を掲載した。健康寿命というのは、介護や入院の必要がなく、自力で生活ができる年齢の上限。16年の平均は男性が72.14歳、女性が74.79歳だった。この健康寿命が延びれば、幸せな生活を送れる人が増えるだけではなく、介護費や医療費が減って国や自治体の財政にも大きなプラスとなる。

ただ目標を掲げるのは簡単だが、どうやって健康寿命を延ばすのかが難題。残念ながら、この記事は全く触れていなかった。おそらく厚労省が打ち出せるのは「バランスのとれた食事、適度の運動」ぐらいなものだろう。しかし地域によって、不健康の原因は塩の摂り過ぎ、砂糖の摂り過ぎ、酒の飲み過ぎ、医療施設の不足など、いろいろある。結局、健康寿命を延ばす対策は、国よりも地方が行うべきなのだろう。

そこで提案。まず健康寿命の算出を、地方自治体に移管する。健康寿命は出生数と死亡数、それに要介護者と入院患者数が判れば、すぐに算出できる。そして、これらのデータはすべて自治体が握っているからだ。つまり平均寿命と健康寿命は、自治体の作成に任せる。厚労省はそれを管理し、合計するだけでいい。

自治体がこうした作業をするには、それなりの予算が必要だ。その分は国が補助すればいい。そして毎年、優秀な成績を残した自治体には、金・銀・銅メダルを授与する。こうして住民の競争意識が高まれば、健康寿命も延びて行く。その結果として介護費や医療費が削減されるから、国は補助金を出しても元がとれることになる。

       ≪5日の日経平均 = 上げ +82.55円≫

       【今週の日経平均予想 = 3勝2敗】   

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