笠間のやきものの界隈をぐるりと回った後、春風萬里荘へやってきた。
建物は魯山人が鎌倉でアトリエとして使用していた江戸時代の大庄屋の母屋を昭和40年に移築したもの。
玄関を入ると土間が広がり、
左手には居間があるのだが、なんと馬屋だったスペースを
魯山人が洋風の居間に改造したという。
自然木の力強いうねりを生かした梁や柱は、野趣あふれ、
床面には、大小さまざまな形の欅の木片が、タイルのように組み合わさっている。年輪がうっすら見えていて、とても味わい深い。
暖炉は自然石が積み上げられていて、豪快。
各所に古材が再利用されているそうで、ひとつひとつの素材が趣深い。
この象のようなものは、何の転用?
ベンチは座った時に、背中に背もたれがフィットするように微妙な傾斜が付けられてるそうで、実際に座ってみるとしっくりと座り心地よかった。
ベンチの両サイドは、やはり古材の扉をカットし、そのまま再利用したものだとか。その取り入れ方も斬新だなあ。
様々な種類の木が丸太のまま並べられている廊下との仕切り。
こちらのステンドグラス入りの扉も、何かの転用かと思ったら、
案内の方が言われるには魯山人の手作りのものだと。
この扉の向かいのコーナー部分は、現在はごく普通のガラス戸が入っているが、建築当初は、同じくステンドグラスの戸が入っていたと、写真を見せてくださった。残っていたら、居間の印象がまたガラッと変わっていたんだろうな。
魯山人の自作の陶製の男性用便器、「アサガオ」の展示も。
そしてお風呂場へ。
お風呂場は、タイルがびっしり。
床面と腰壁には櫛目や刷毛目の入ったタイルが貼られ、
間に入れられたタイルは竹風の立体感があり、魯山人の自作のものだとか。
織部釉が微妙に変化して、リアルな竹感がでていて、とても風流だった。
二間続きの客間。
家具調度品などは、全て魯山人がしつらえたものかと思いきや、
笠間日動美術館の所蔵品なども交じっているらしい。元馬屋の洋室の方も。
どおりでしっくりこない家具や照明もあったのか、、
牡丹や桜、ツバメなどが描かれている花鳥杉戸絵。
書院の組子細工。
釘隠しが各部屋バラエティに富んでいて楽しかった。
襖の引手。
魯山人が設計したという茶室、「夢境庵」は裏千家の名茶室「又隠」を手本としたのだそう。
黒柿の自然木を使用したという床柱が存在感を放ってた。
窓の外は、京都の龍安寺を模したという枯山水の石庭が広がっている。
敷地内は、ゆったりと広大な庭園になっていて、散歩できる。
移築された豪農屋敷の長屋門も。
長屋門から母屋を望む。
春風萬里荘をゆっくり楽しんだ後、駅へ向かい、笠間を後にした。