多治見のモザイクタイルミュージアムで開催されている「金型の精緻・精巧美の世界」展へ訪れてきた。
この日は展覧会に企画協力された加藤さん(コロナの関係で今回延期に)と、豊山先生の講演もあるということで楽しみにしていた。
講演はインドの壁画の美術史の研究をされていた豊山先生がインドで偶然日本製のタイルを見つけられたところからタイルを追う旅が始まったいきさつや、日本からマジョリカタイルの海外輸出先NO.1がインドだったこと、インドでどのように日本製のマジョリカタイルが浸透していったかなど、政治面や経済面など歴史的なさまざまな要因についてとても興味深いお話をお聞きすることができた。
当初はイギリスの植民地時代、イギリスからもたらされたマジョリカタイルだったが、日本ではイギリスでは作られなかったヒンドゥー教の神様をデザインしたものや、インド好みの鮮やかな色彩、更にイギリスより安価に売り出すといったことで徐々にインドでのマーケットを広げていったという。
イギリスではもう少しやわらかいパステル調の色彩のタイルが作られていたそうだが、インドではこのようなはっきりとした色彩のものが好まれたという。
日本のメーカーはそんなインドのニーズに合わせてタイルをデザインしていったのだとか。
6枚組の組タイルの金型。
こちらの広正製陶以外でも佐治タイルや複数のメーカーがインド向けの
タイルを作っていたそう。
細かい部分まで丹念に彫り込まれた金型は本当に美術品のように美しい。
なぜ宗教的に忠実にタイルへ再現することができたのかというと、
このようなインドの絵画やポスター、カレンダー、マッチ箱など一般に流通していたものが情報源とされていたという。
インドの伝統的な住居でハーヴェリーといわれるもの。
玄関周りにびっしりと貼られたマジョリカタイルが見える。
こちらのタイルの剥がされた跡の刻印から日本製のタイルが使われていることが判明したのだそう。
展示の写真を見ると、ほんとに多くのマジョリカタイルが建物に貼られてる。
今まで台湾やマレーシア、シンガポールでは見てきたけど、
インドでこんなにマジョリカタイルが使われているなんて・・
行ったことがないので全く知らなかった。
インドでは、マジョリカタイルは伝統的住居の他にも祠やモニュメントの台座、肉屋など町中に一般的にあるらしい。
商売の神様で人気のガネーシャ。
クリシュナ
タージマハールが描かれた金型も。
真鍮の金型は薄いものだけど、重量は1.3kgもあるのだそう。
これらの金型を63枚も丁寧に保管してこられたという広正製陶さんのおかげで
素晴らしいコレクションを見ることができ、インドとのタイルを介した交易の歴史も知ることができて、とても充実した展覧会&講演会だった。