行きつけの図書館で申し込んでいた「からくり人形の世界」というイベントへ行った。
からくり人形というのは江戸時代の中期以降に庶民に親しまれてきた木製のロボットで今のロボットの原点と言える日本の伝統技術なのだそう。
現代のからくり人形師を目指されている細井清司さんという方に自作の江戸座敷からくり人形の実演を見せていただけた。
今回は「座敷からくり」の江戸三大座敷からくり、「茶運び人形」「段返り人形」「弓曳童子」の実演を。
日本ではこの三つを一度に見れるというのはまずないらしい。
まずは「茶運び人形」の実演から。
動力はぜんまいで、中の機械を見れるように裸になっている。
更にこの細井さんの工夫により言葉も話せるようになっていた。
お茶をお客さんに運んで行って、湯飲みを持ち上げて再びお盆に置くと又人形が戻ってくる。
そして「段返り人形」
動力は水の13倍の重さという水銀が使われているのだそう。
階段を上から回転しながら降りていく人形。
スローな動きがいい感じ。
気温や服の重さなどちょっとしたことに動きが左右されるという微妙なものなのだそう。
今回のこの実演のために年末からお正月を三が日を人形の調整のため費やしたと言われていた。
段返り人形の顔は唐人をモデルにしているという。
顔も洋服もなかなか味わい深い。
そして最後は「弓曳童子」
動力はぜんまいで11本の糸で顔や手の細かい動きが作られる。
幕末に現在の東芝の創設者である田中久重が物理の応用から作り出したという「弓曳童子」は日本で二体だけしかないという。
細井さんはこの田中久重の弓曳童子のDVDを見て、それを手本として作られたのだそう。
人形は弓を手に取り、的をめがけて放つ。それを4回繰り返す。
弓を絞って打つまでの人形の手や首の動きがとてもなめらかで繊細。
手に弓を持たせるにもほんとに高度で微妙な調整が必要なのだそう。
二度目の実演は箱の下の扉を開けて。
箱の中にも素敵な演出があり、弓を1本引く度に小さな唐子の人形が上へ上がっていく仕組みになっている。
このからくり人形というのは造りだけではなく日本の伝統技術が結集した芸術性の高いものでもあり、使われている素材ひとつひとつにこだわりがあるのだそう。
小さな矢、一つにしても素材に柳の木、象牙を使用し、羽の部分はイヌワシと黒鷹の羽を手に入れるためにモンゴルまで剥製を買いに行かれたのだとか・・
スローで微妙な動きをするこのからくり人形、とても味わい深いものだった。