『ばらフェスタ駆けめぐり』
四月から五月の終わりにかけては、あまりのんびりとしていられない。
さくら、ツツジ、ばら、藤の花が矢継ぎ早に咲き、人間の都合などお構いなしに季節を駆け抜けてしまうからだ。
今年も神代植物園の人出を横目に、それぞれの花の最盛期を見逃してしまうんじゃないかと半ばあきらめていた。
仕事の関係で時間がとれなかったり、天候に恵まれなかったり、けっこう条件が整うのは難しいところがある。
というなかで最も華やかなバラの季節、先週の日曜日わずかな時間をみつけて大忙しの駆けめぐりをやってみた。
人さまも同様で、バラをめがけて多くの客が入場していた。
ちょうど<ばらフェスタ>の最中で、園内で日替わりのイベントが行われるという。
赤いバラ、白いバラ、黄色いバラ、みな競うように咲き誇る中、バラ園の一画からボサノバの演奏が流れてきた。
ベルサイユ宮殿の庭園を模したとか聞く西洋風あずまやの下に、もうたくさんの聴衆が席を占めていた。
おそるおそる背後に回り込みながら、写真を撮らせてもらった。
ガンガン押し込んでくるポップス調の歌と違って、抑えたトーンのギターと柔らかい歌声が心地よかった。
歌は人びとの心を和ませ、ひととき幸せな気分を運んでくる。
老若男女だれひとり、歌の嫌いな人も花の嫌いな人もいないだろう。
みな楽しげに旋律に耳を傾け、一曲終わると控えめな拍手を送る。
そして思い立ったように腰をあげ、ふたたびバラの花を愛でに動き出す。
汗ばむような午後の日差しを受けて、ぼくも対面する位置にある温室の方向へ歩きはじめるのだった。
時を告げる小人のお出ましはなかったが、このシンボル的な時鐘の仕掛けはいかにも西洋風だ。
この下に新聞紙を敷いて小一時間の昼寝ができればいうことはないのだが、限られた時間での駆けめぐりだから贅沢はいっていられない。
急ぎ温室に入って、多湿を好む植物を見てまわる。
だいたいは見知った植物が多いが、世界遺産になった関係か小笠原の植物という一角が設けられ、シダ類などが集められていて目新しかった。
ほかにスイレン、エンゼル・トランペット、ランなどがきれいな花を咲かせていたが、楚々とした睡蓮のたたずまいが気に入っている。
温室を出ると、あとは芍薬に人だかりがしていた。
こちらも赤あり白あり、薔薇とはちがった魅力に満ちている。
とにかくあわただしい行程であったが、とりあえず今年のバラの記録はカメラに残せた。
あれはいつだったろう七、八年まえの記憶だと思うのだが、バラが輝くばかりに咲き誇った年があった。
毎年そのときの光景を思い描いて出かけるのだが、それ以降その年に匹敵するバラを見たことがない。
まあ金環日食ほど間遠ではないだろうから、ドンピシャのタイミングで花盛のバラに遭遇する日を夢見ている。
(おわり)
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小生、行ったことがあるような、ないような感じですが、一連の画像を見せてもらい、何か記憶が蘇るような気がしました。
各種の季節ものの花たちが競演しているようですが、晩春には真っ赤な花が似合うようです。
小笠原の湿性植物まで栽培されているなんて嬉しくなります。
多くの画像が身近に語りかけてくるように感じるのは、画面の背景が真っ黒だからでしょうか?
それには特殊な技術を要するのでしょうかね。
いやはや慰めてもらいました。
あるいは、当ブログで何度も見て記憶に残っているとか。
画像の背景が黒っぽいのは、gooブログで用意されるフレームを使っているからで、特別な技術はありません。
コメントありがとうございました。
いつだったか仲間数人が窪庭さんの引率で神代植物園のバラ園を見に行ったことがありましたが、残念ながらそのときは盛りが過ぎていてちょっとしょぼくれた薔薇でしたっけ。
そのためか人の姿もほとんどなく寂しかったですが、今回のように人が多いと活気があって花も「皆もっと寄ってしっかり見てよ」と胸を張っているみたいだ。
新緑を背景にしたシンプルな歌と演奏も気持ちよさそう!
人の後ろから撮ったという写真はそれを見るこちらも一緒に覗き込んでいるような気分にさせてくれていいですねー。
まだこれからというような蓮の葉もなんとなく惹きつけられます。
植物園などずいぶん行っていないのでどの写真も繰り返し見て楽しませていただきました。
これからも出来るだけたくさんの写真をよろしくお願いしま~す。
みんなで行ったのは記憶にありましたが、盛りを過ぎていたとのこと、すっかり忘れていました。
ボサノバの女性歌手さんは、普段ひっそりとライブをやったりしているんでしょうか。
バラを見に出かけた客との何気ない出合いが、新緑の下で静かにシンクロしている感じでした。
「覗きこむ・・・・」気づきませんでしたが、なるほど。コメントありがとうございました。
コメント欄に数年前にお亡くなりになった彼のコメントがちゃんとあって、何かとても懐かしく、戻って追う一度その写真を見直しました。
あのころ僕らももう少し若かったんだなー
いや―こうなると過去のブログも貴重ですね!
シダ好きの栗田さん、懐かしいなあ。
ということは、まだ一緒に出かけたりしていたんでしょうか。
若い、若い、江ノ島の民宿や花火の思い出が次々と浮かんできます。
そういえば鴻本さんのことも、昨日のことのように思い出されます。
過去ブログの効用ですかね。