それは寒い冬の季節でした。英国を旅行中、男3人でアイルランドまで行こうと計画し、ロンドンを出発。日曜はどこもかしこも閉まっているので、ぼうっと過ごすしかないのが英国。だからそれを移動日に利用するのが賢いと考えた。
しかしそれは失敗だったかもしれない。日曜は列車が遅いのだw(゜益゜)w 丘陵地帯が続くイングランドの田舎を、かけっこをしたら負けないのではないかというノロノロ運転。途中線路を工事していたりする。こういうことに関しては、英国は日本の数倍の時間がかかるものだ。のんびりしているのです。
やがて列車はウェールズの森を突き抜け、視界が開けてくると西海岸だ。大きな鉄橋を渡り、いよいよブリテン島最西端のアングルシー島に渡る。朝9時にパディントン駅を出発したというのに、昼をまわり、岬の突端ホーリーヘッドに到着したときは、もう午後もいい時間になっていた。
↓見て下さい。さ・い・は・て♪
この港町で、なつかしいフィッシュ&チップスの店を見つける。船に乗る前に、遅い昼飯で腹ごしらえをしておかねばならぬ。店に入ると大きな油の槽に、次々に粉をつけた魚とじゃがいもが入れられるのが見える。並んでいる連中は、紙に包まれた揚がった魚と芋を次々に受け取ってゆく。片田舎なので、むかしながらの雰囲気が残っている。
この料理(?)は、かつては英国の代表的な手軽な食べ物であった。しかし近年食材の中心であるタラが乱獲のため取れなくなり、さらに米国からあの恐るべき冷凍バーガーのチェーン店が、ガン細胞のように国中すみずみまで侵食したため、どこの街角にもよく見かけたF&Cの店が、いまはほとんど消滅してしまっているのである。
さて黒板に書かれた魚のメニューを見る。それは真ん中で大きく二つに分けられており、半分は魚が「生」で値段が高く、残りの半分は「冷凍もの」で安い。もちろん迷わず「生」を選択だ。冷凍物はビチャビチャかつフニャフニャだ。いけませーん!そしてさすが港町だけあり、魚の種類も豊富だ。高級魚のヒラメが手ごろな値段であったりするが、決してそれほど旨くない。一方で食べられるのか?と思われるサメやエイなどが、意外に悪くなかったりするのである。しかし何と言っても、一番人気のタラが、こちらではもっともおいしいようだ。
さて店員にF&Cを包んでもらうとき、塩とビネガー(醸造酢)を振りかけるか尋ねられるときがある。自分で好みの量をかけるのが一番なのだが、やはりそうすると消費量が増えてしまうのだろう。ここは店員が振り掛けるシステムだった。こんなときは、「ビネガーを沢山と、塩を少しね」と頼むことにしている。ビネガーはよかった。値段の関係で(?)こちらは控えめだ。しかし塩の缶がでかかった。直径10cmというところか。その上部に、無数の穴が空いている。私の不安は的中した。バッバッっと2~3回控えめに(?)振りかけると、カキ氷の機械を回したように真っ白な塩が降り積もった。「少し」の概念にかなりの相違があるのだ…。
しかし潮風に吹かれながら揚げたてのF&Cをもしゃもしゃと食べるのはじつに旨い。しびれる塩分を乗り越えれば、サクサクした衣の中には湯気を立てて白身魚が顔をのぞかせている。やわらかいジャガイモも香ばしい。そう、英国にもうまいものはあるのです。すっかり食べ終わり、油のついた指を包み紙のはじっこで拭き、それを丸めて捨てるとき、しみじみ英国にいるんだなあ、と感じるのであった。さあてアイルランド島に渡る連絡船に乗船だ。