さきち・のひとり旅

旅行記、旅のフォト、つれづれなるままのらくがきなどを掲載します。 古今東西どこへでも、さきち・の気ままなぶらり旅。

オンボロ機でアラン島へ

2011年04月23日 | アイルランド



 ゴールウェイは特徴のない街だった。とある街角を通ると、異様な雰囲気のオヤジたちがたむろしていた。目つきが悪い。出入りしているところを見てわかった。「馬券売り場」なのだ。アイルランドは競馬が盛んなのである。ああなつかしや。浅草の場外馬券売り場と全く同じ空気だ。貧乏人ほどなけなしの金を失うところ。そして世の中に対する恨みと敵意を増殖する悲しい場所なのである。

 
翌日には大西洋に浮かぶアラン島へ渡る。離れ小島だ。実に大きな岩礁といってもいいような辺境の離島なのである。ジョン・ミリングトン・シングというアイルランドの作家が100年ほど前に滞在し、その作品に描いた場所なのだ。連絡船で渡るのが普通の方法だが、ダブリンへ渡る連絡船で揺れる航海にはすっかりうんざりしていたから、奮発して空路で行くことにした。といっても、小さいプロペラ機なのだが。

 チケットを買うと、ワゴン車でゴールウェイの街からかなり離れた海岸の空港へ連れてゆかれた。といっても、小学校の校庭ぐらいの大きさなのであるが。乗客は9人。パイロットを入れて10人乗りだ。飛行機が小さいのは構わないが、ひどくオンボロだ・・・w(゜゜)w 機体の継ぎ目が錆びている。ネジが錆び落ちているところがある。少々不安になった。

 パイロットが乗客を並ばせ、ひとりひとり座るべき席の指示をする。どうやら機体のバランスを保つため、体重をみているのだ。次々に客は座っていったが、わたしは最後に運転席の横を指示された。これが操縦席だった。となりと同じように、操縦桿とスロットルが並んでいる。飛行中にパイロットが心臓発作を起こした場合、わたしが操縦することになるのだ。栄誉あるこの席に座るべく選ばれたのは、非常事態に操縦を任せるためなのか。体重が一番軽そうだったからか。唯一子供に見えたせいなのか・・・。

 滑走路は異様に短い。こんなに短くていいのかというくらいだ。しかもプロペラ機が走ってゆく方向は大西洋が待っている。プルプルプル・・・とプロペラは回り、飛行機は走り出した。滑走路はすぐに終わりに近づき海が見えたが、この程度で飛ぶものか(?)と思うようなスピードでプロペラ機はフワリと浮いた。何もない海面の上に飛び上がったので、前に進んでいる実感がない。そう、まるで宙に舞い上がる凧に乗ったような気分だ。

 飛行機は快調に飛んでいた。操縦席なので前方の見晴らしは最高だ。海面から50mくらいの高度だったであろうか。この程度なら不足の事態に陥って着水しても死ぬことはなさそうだ。ネジのとれたオンボロプロペラ機が空中分解した場合の不安が払拭されると、短い空の旅を操縦席に座って十分に満喫したのであった。