「ぶらっと京都を歩きたいね」という妻のひと言と、またグランパスのサッカーをアウェーで観てみたいなあという僕の思惑が一致し、ゴールデンウィーク前の土日を使って京都ぶらり旅と大阪サッカー観戦に出かけた。
<4月24日>
妻はほとんど電車に乗る機会がない。休日にどこかに行くにしても、ドライブかツーリン グで、街並みを見に行くようなこともほとんどなかった。
新幹線に乗るのも何年ぶりか分からないくらいだった。
「のぞみに乗るの、私、初めてかもしれない。」
なんて言ってたが、どうやら本当みたいだ。
豊田からは8時半頃の都市間高速バスを使って名古屋まで行き、そこから新幹線のぞみで京都に行った。11時には京都に着き、定期観光バスの手続きを済ませた。これも妻のリクエストだ。バスの出発が12時30分なので、早めの昼食をとることにし た。
京都駅の地下街で京都らしい食事をということにした。食べたのは「豆腐御膳」。とってもヘルシーな昼食になった。
京 阪観光バスに乗り、最初に向かったのが金閣寺だった。金閣寺は何度見ても美しい。駐車場から歩き、金閣が見えた瞬間、思わず「わあ」と声が出て しまうほどだ。ゴールデンウィーク前だというのに、観光客も驚くほど多く、すごく混雑していた。さらに、もっと驚いたのが、韓国語やら中国語やらポルトガル語やら、もちろん英語も聞かれたが、外国人の多さだった。これは、金閣に限らず、その後どこへ行っても多かった。
次に向かったのが清水寺だった。混雑した清水坂を上ると、仁王門が見える。おきまりの階段のところで記念写真を撮り、舞台へと進んだ。金閣にし ても、清水にしても、修学旅行の引率では何度も来ているが、プライベートで訪れることはほとんどなかった。それだけに、本当に京都を楽しんでいるという感じがした。
清水を一回りすると、「みたらし」の看板が目に入った。おなかがすいていたわけではないが、なんとなく茶店っぽい店でだんごを食べたくなった。みたらし は僕の住む三河地域のものよりも薄味だったが、とろっとしたタレがすごくおいしかった。
今日のメインは三年坂と二年坂だ。ここは修学旅行のコースには入っていない。だから、二人にとっては初めて歩く道だ。
清水坂を下り、右に折れると三年坂があり、その先が二年坂だ。狭い通りだが、京都らしい味がある。昔ながらの店に混じり、おしゃれな店も混在 し、いい雰囲気だ。おしゃれな店も、店構えはどこも和風で、売られている商品さえもおしゃれな感じがしてくる。僕は、布のバッグを買い、ここからはそれまでしていたトヨタF1のポシェットから京都のバッグに替え、ますますいい気分になった。バッグを買った店の近くでコーヒーを飲み、一休み。屋外のテーブルで道ゆく人をながめながらのんびりと過ごした。
二 年坂を過ぎると、高台寺の脇の「ねねの道」に入る。そこには出店が並んでいた。土壁も、高台寺の建物も、周りの景色も、絶対に普段は味わうことのできない雰囲気で、本当にここに来てよかったと思った。
高台寺の駐車場からは巨大な霊山観音が目の前に見えた。巨大すぎて、なんとなく御利益は薄いような気はしたが、大きさには圧倒される。
バスの旅はここまでで、高台寺駐車場から京都駅に戻り、そこで解散と なった。定期観光バスは、コースの設定がいい。次は庭園巡りのコースで回ってみたいなあと思った。
時間は5時を回っていた。地下鉄で烏丸御池に行き、この日の宿の六角通りにある旅館「こうろ」に向かった。
予 約は「こうろ鍋コース」で、晩ご飯は京都のなべ料理だ。野菜やら肉やら盛りだくさんの具だったが、特に緑色をしたつくねがおいしかった。
おなかも超満腹になり、腹ごなしと食後のコーヒーを飲むために新京極へと繰り出した。京都の夜の繁華街はやたらと明るく、9時近い時間というこ とを忘れてしまいそうなくらいだった。
<4月25日>
「こうろ」では、朝食も部屋食だった。しかも、京料理の朝食で、鍋料理の晩ご飯よりも京都っぽい献立だ。特に、湯豆腐がすごくおいしかった。これが「こうろ」の売りかもしれない。
のんびりと9時半頃にチェックアウトし、寺町通りの昔ながらの喫茶店でコーヒーを飲んだ。こういうひとときも楽しいものだ。
寺 町通りを北に進み、まずは本能寺に行った。信長が明智に殺された有名な寺だ。本堂は耐震工事中で一部しか見られなかったが、今はそれぽど大きな寺ではない。安土時代はもっと西側にあり、厳重な警戒がなされた丈夫な塀に囲まれた大きな寺だったそうだ。本堂は見られなかったが、境内にある別の建物の中でちょうど本能寺宝物展が開催されていたので、信長にまつわる多くの品々を見ることができた。中でも、3本足のカエルの文鎮はかなり貴重な 物で、普段は見られないそうだ。
本能寺を後にし、次の目的地は二条城だ。バスの路線がよく分からなかったので、タクシーを使ったら、たったの570円だった。バスでも一人200数十円するだろうから、2人ならそれほど大きな差にはならない。しかも、門の前まで行ってくれるのだからお得かもしれないと思った。
二条城に入ると、今まで気づかなかった門のすばらしさにびっくりした。と言うのも、例によっ てここも修学旅行の引率でしか来たことがなく、門を見ることなど一度もなかったのだった。全員の子どもを二の丸御殿の入口に誘導している時に通るのだから、門には目がいかなかったのだろう。
門をくぐり、二の丸御殿の入り口に行くにも、つい団体入口に向かってしまった。10回以上引率で来ているので、団体入口が本物の入口だと信じ切っていたのだ。
二の丸御殿に入ると、すぐにうぐいすばりの廊下を歩くことになる。黒書院、大広間など 、「ここで大政奉還があった部屋なんだ」とか、「ここが天皇家の人と会う部屋で、ここでは将軍が下座になるんだ」とか、なんだか夢中になってしまった。
二の丸御殿を出て、美しい庭園をながめ、二条城を出た。計画ではJR二条駅に行く予定だったが、タクシーが案外リーズナブルだということが分かり、タクシーに乗ろうとした。ところが、初乗り640円となっている。通りに出て、「小型」と表示のしてあるタクシーを止めて乗ったら、やっぱり初乗り640円。いったい、さっきのタクシーの料金570円はなんだったのだろう。結局、思いのほか遠かったため、1120円になってしまった。
次の目的地は大阪長居陸上競技場だ。サッカーの試合観戦も、今回の旅のメニューにしてある。あらかじめ調べておいたのが、11時45分発の新快速姫路行きに乗れば1時くらいには長居スタジアムに着くことができるはずということだった。京都駅構内で昼食のサンドイッチを買い、新快速を待った。
新 快速に乗ったら、すごく込んでいて座ることができなかった。重い荷物を背負ったまま大阪駅に行き、環状線でさっと座って天王寺へ、そして阪和線で長居へと乗り継いだ。
長居駅を降りるとすぐに長居スタジアムが目に入った。5分も歩けばスタジアムに着く。そして、表示に従ってアウェー席に入った。ここで、グランパ ス・サポーターの多さに驚いてしまった。すぐに、名古屋グランパスのTシャツに着替え、京都駅で買ったサンドイッチを食べた。
2時にキックオフで、前半はグランパスが押し気味で試合が進んでいったがなかなか得点できず、ややいらつくような試合展開になっていた。後半もグランパスが押し気味の試合展開だったが、その分ディフェンスが手薄になり、セ レッソのカウンターに何度もひやっとさせられた。しかし、そこは日本一のゴールキーパー楢崎の好セーブで何度もしのいでいたが、このまま0対0の引き分けではもったいなさすぎる。
後半終了間際に、玉田のフリーキックが決まり、結局1対0でグランパスが勝ち、なんとかほっとできた。これで、グランパスは2位に浮上。いらつくような試合でも、勝てば気分がいい。帰りは、セレッソ・サポーターの中を堂 々とグランパスTシャツを着たままスタジアムの外に出た。
JR長居駅から長居スタジアムはよく見えたが、スタジアムから長居駅は見えず、サポーターの行列もなかったため、少し道に迷ってしまったが、大回りはしたものの無事に駅に着くことができた。
帰りは、天王寺で乗り換え、鶴橋から17時36分発の近鉄特急で名古屋に向 かった。1時間ほど経ってから鶴橋で買った駅弁を食べたが、電車の中で食べる弁当はすごくおいしく感じる。旅番組好きな僕は、こういうのにあこがれていた。
19時少し前に名古屋に着き、地下鉄と名鉄豊田線を乗り継いで豊田に帰ってきた。
旅と言えばクルマかバイクの僕たちだが、こういう交通機関を使った旅が楽しくて楽しくてたまらなかった。ゴールデンウィークはきっとバイクを使ってどこかへ行くだろう。でも、またきっと電車やバスの旅をしたくなると思う。