ELEVEN HOUSE

北海道だ~い好き❤バイクはカワサキ☆クルマはレクサスCTとタウンエース(キャンカー)とジムニー☆キャンプと鉄道も好き

北海道ツーリング2013;レンタルバイク2泊3日宗谷岬弾丸ツーリング

2013-09-16 00:52:54 | 北海道ツーリング2013宗谷岬

<プロローグ>
 4月に転職し、新入社員待遇の僕は、今年は夏休みを1日も取ることができなかった。毎年、お盆休みの1週間は妻と2人でキャンプをしながら北海道をバイクで旅しているが、今年はあきらめていた。妻も、
「1回くらい、こういうDscf3031 年があってもいいよね。」
と、言ってくれていた。
 ある日、中日新聞で「LCC(格安航空)を使えば1泊2日で札幌へ旅行に行ける。しかも、東京1泊旅行より安く、今後はLCCや値下げした航空料金でこうした旅行が増えるだろう」という記事を目にした。そこで思い立ったのが「1泊2日で札幌に行けるなら、2泊3日で旭川を拠点にレンタルバイクを使って宗谷岬まで行けるはず」ということだった。7月のある日、そんな話を妻にすると、
「1泊で札幌なら、2泊で宗谷岬・・・。すごい思考回路してるね。」
と、感心された。
 さっそく飛行機やレンタルバイクについて調べてみると、中部空港から1日1往復だがANAの旭川便があった。旭川市内のバイクショップにレンタルバイクがあることも分かった。
 その夜、妻はわくわくして眠れないと言っていた。口ではあきらめているように言っていたものの、本当はすごくがっかりしていたのだろう。8月23日の金曜日が休日出勤の代休日となったため、23日のANA中部空港発旭川行きと25日の復路の中部空港行きを予約した。次に、レンタルバイクとして、僕用の400(カワサキ・ニンジャ400R)と妻用の250(ホンダVTR250)を予約した。僕は普段は大型バイクに乗っているが、1日だけなら中型でいいだろうと思い、ニンジャ400Rを選び、妻も普段は400に乗っているが、慣れないバイクだから軽いバイクがいいということでVTRにした。宿は、旭川から100㎞ほど北の美深町にある「びふか温泉」に2泊することにした。こうして、今年も北海道をバイクで走れることになった。

<8月23日>
 ニュースでは毎日のように全国至る所で天気が不安定な日が続いていることを報じている。予報では、北海道はこの先3日とも雨で、しかも局地的な豪雨が予想されるとのことだった。それでも、今年は行けないはずだった北海道に行けるのだから、雨が降ろうが何が降ろうが、楽しみの大きさは変わらない。
 中部空港発の飛行機の時間に合わせ、愛車Cクラスに乗って午前10時に豊田の自宅を出た。Cクラスのリアシートには、バイク用のタンクバッグ、リアシートバッグ、そしてヘルメDscf3003 ットがそれぞれ2つずつ載せてある。慣れないバイクで弾丸ツーリングが本当にできるのだろうかという不安もあったが、すでに気分はホッカイダー!。当然、わくわく感の方が大きかった。助手席の妻を見ると、どことなく楽しみと不安が半々のような表情をしていた。
 空港に着き、まずは早めのお昼ご飯だ。名古屋と言えばきしめんでしょうということで、僕も妻もきしめんとぜんざいのセットでおなかを満たした。
 そして、搭乗前のセキュリティ・チェック。ところが、僕は、ライディング・ブーツは脱がされるわ、ジーンズのベルトは外されるわ、もう大変。いったいなんなんだという感じ。妻は同じ装備なのにノーチェック。ベルトを外し、裸足で歩く僕を見て、妻はにやにや笑ってる。僕も、苦笑いするしかなかった。
 ANA325便は定刻どおり13時に出発した。B737の主翼の先がキュッと上がったデザDscf3006 インがかっこいい。
 窓の外は雲しか見えない。しかし、高度を下げ旭川空港に近づくと、まるで美瑛のパッチワークの丘のような景色の広がりが斜めになって見えた。
「わあ、北海道だ。」
 たった1年ぶりだが、妙になつかしい。
 旭川空港には14時45分に着いた。やっぱり涼しい。気持ちのいい涼しさだ。
 15時発の連絡バスに乗り、小雨の降る旭川駅に着いたのが15時40分だった。
 レンタルバイクをお願いしてあるバイクショップ「ジョンブル」は、駅から4㎞ほどのR39沿Dscf3008 いにある。駅前でタクシーに乗り、あらかじめ用意していた地図を運転手さんに渡すと、
「ジョンブル、知ってるよ。」
と、すぐにクルマを走らせた。クルマは、個人タクシーのトヨタ・プレミオ。タクシーと言えばトヨタ・コンフォートと相場が決まっているだけに、不思議な感じがした。
 混み合った市街地を10分ほど走ると、ジョンブルに着いた。小雨が徐々に本降りになってきた。
「これくらいの雨なら大丈夫だよね。」
 そんなことを言いながら店に入ると、商品の展示車ハーレー群に混じってきれいに洗車されたライム・グリーンのニンジャ400Rと、赤いVTR250が並べられていた。
 店の人から説明を聞き、書類の記入に入ろうとした時、
「こんな雨でも、行きますか。雨の場合はキャンセルもできますよ。」
と、声をかけていただいた。ここまで来てキャンセルするわけにはいかない。ただ、雨足はますます激しくなり、手続きを終えてもしばらくの間はレインスーツを着て店の中で待機するしかなかった。
 16時30分頃、それまでの土砂降りがうそのようにさあっと上がった。今がチャンスとばかり、慣れないバイクでR39に飛び出し、北に向かった。平日の都市部の市街地はずいぶん混み合っていた。信号のたびに何度も2人並んで停まる。
「どう、VTR。」
と、僕。
「全然走らん。」
と、妻。
「でも、すごく乗りやすいよ。」
 僕のニンジャも加速には不満も感じたが、愛車のダエグは1200㏄。400㏄ならこんなものかなあという印象だったが、ポジションはとても楽な姿勢になり、走り出してしまえば「このバイク、なかなかいいじゃん」と思える。
 予定よりもかなり遅い出発になったので、先を急ぐため旭川北ICから道央道を使った。再び降り出した雨も、比布あたりで小雨となり、走るにはまったく支障はない。むしろ、なぜか愉快で愉快で仕方がない。比布~和寒の間の単調な高速道路を走っている時、
「オレは『北海道を走ってる』というだけで幸せな気分になれるんだなあ。」
「北海道を走ることが、こんなに幸せな気分になれるなんて。」
と、つぶやいていた。まだ、北海道らしい道路なんて走っていないのに。
 道央道の最北のインター士別剣淵ICで高速を降りた。ETCが装着されてないので、久しDscf3009 ぶりのチケットで戸惑ってしまった。雨は、小雨が降ったりやんだりの小康状態だ。
 士別市内のR40は通勤ラッシュのまっただ中。お盆休みにしか北海道を走ってない僕には「北海道の地方都市にも通勤ラッシュがあるんだ」と意外な感じがした。新鮮な感動だった。
 信号待ちの時間だけは、妻と話ができる。
「VTR、すっごい乗りやすいよ。次、これにしようかしら。」
と、妻。軽くて、足つきがよく、ポジションが楽、カウルがなくてもほとんど変わらないと、パワーのない分を差し引いても「これがいい」になっているようだ。実は僕も、ニンジャの400でいいじゃんと思えていた。ただ、2気筒独特のポコポコいう音が、車体のデザインに似合わないとは思った。パワー不足の分は、海外向けの650㏄のニンジャにすればある程度は解消できるだろう。
 2人とも借りたバイクの良さを感じながら、名寄から名寄バイパスを走り、智恵文ICで再びR40に入り、予約しておいた宿「びふか温泉」を目指した。
 「びふか温泉」は、道の駅「びふか」と同じ敷地内にあり、一度利用したことがある温泉宿だ。目印はもちろん道の駅。分かりやすい標識で、18時20分頃「びふか温泉」の駐車場に着いた。
 「びふか温泉」は楽天トラベルで安く申し込んだが、和洋室の素敵な部屋が用意されていた。晩ご飯は、羊肉の陶板焼きがメイン料理で、量もちょうどよく、とてもおいしくいただいDscf3011 た。温泉のお湯もあっさりとしていながら肌がつるっつるになる気持ちのいいお湯だ。
 部屋でのんびり過ごしていると、妻が、
「私、北海道を走っているだけで幸せって感じがするよ。」
と、僕が思っていたことと同じことを言っていた。雨が降っていても、高速道路をただただ走っているだけでも、やはり僕たちには「北海道を走る」というのは特別なことだったのだ。
 レンタルバイクのVTR250とニンジャ400Rも、想像をはるかに超える快適なバイクで、2人ともたった100㎞ほど走っただけでお気に入りのバイクになっていた。
 明日の天気予報は雨。寝る前にもう一度温泉に浸かり、明日のツーリングを楽しみにしながら眠りに就いた。

○本日の走行     101㎞
○本日のピースサイン   2発

<8月24日>
 外は雨。雨でも楽しいのが北海道ツーリングだ。予想どおりなのだから、雨が降ったってかまわない。
 朝食のバイキングでしっかりとおなかを満たし、9時少し前に外に出た。雨は上がっていた。レインスーツを身に付けて外に出たが、降ってないのはありがたい。
 まずはR40を北に向けて走った。音威子府で右折し、R275へ。交通量は無いに等しDscf3013 い。時々小雨がパラつくが、何も走ってない道路をバイクで走るにはまったく問題はない。
 道の駅「おといねっぷ」でトイレ休憩をとった。ここまで走ると、ニンジャにもVTRにもすっかり慣れ、レンタルバイクだからこそ味わえるおもしろさを感じてきた。いつものダエグでもCBでもない特別な旅。そんな気がする。
 缶コーヒーでひと休みした後、さらに北を目指した。
 牧場や、牧草地、山裾まで広がる畑。牛の糞なのか肥料なのか、くさい臭いだがイヤでDscf3015 はない北海道の香り。雨で景色はけむっているが、それでも「いい気持ちだなあ」と思いながら走り続けた。
 次は、恒例のクッチャロ湖のトイレ体験だ。ここを通ったら、トイレでチャイコフスキーの「白鳥の湖」のメロディを聴かなければならないというのが夫婦の約束事になっている。音威子府ですませたばかりだったが、クッチャロ湖のトイレに立ち寄った。幸い、雨は上がっていた。湖畔にバイクを止めると、妻が、
「あっ、白鳥がいる。」
と、ヘルメットを被っている僕に聞こえるように叫んだ。
「わっ、ほんとだ。」
と、僕。
 すぐに2人ともカメラを手に、湖畔にたたずむ白鳥のもとに急いだ。そして、逃げていかないように、そっと近づいた。白鳥は、逃げるどころか、僕たちに気づいてもずっと湖を眺めていて、動こうとはしない。いろんな角度から写真を撮った。何枚も何枚も撮った。自分でテンションが上がているのを感じた。しかし、湖をじっと見つめる白鳥の後ろ姿にはなんとなく哀愁のようなものが感じられた。秋から冬にかけてやって来る白鳥が早く着きすぎて仲間を待っDscf3019 ているのだろうか。いや、待てよ。本当に白鳥だろうか。じっと座っているだけなので、歩く姿も飛ぶ姿も見ていない。ただの白い鳥・・・、でも、クッチャロ湖と言えば「白鳥の湖」。何度もここを訪れているが、いつもお盆の暑い盛り。今回の最北の地はもう秋なのだ。
 あぶないところだった。一番の目的の「トイレで白鳥の湖を聴く」を忘れるところだった。ちゃんとトイレに入り、せっかくだから「白鳥の湖」を聴きながらチョロチョロッと出した。
 クッチャロ湖を出てR238に入るとすぐに、農道エサヌカ線に入る小さな交差点がある。見落とさないように慎重に走ると、脇道から農業用の大型トラックが出てくるのが見えた。「ここだ」と思い、右にウインカーを出し、手で後続の妻に右折を伝えてその脇道に入った。
 道なりに進むと、一直線の道になった。それが農道エサヌカ線だ。エサヌカ線は、去年のツーリングで初めて走ってものすごく感動した道だ。地平線を見ながら走り、しかも道の先も地平線まで続いているのだ。
 直線の途中でバイクを止め、その雄大な景色をながめた。妻は、
「すげぇ。」
を連発している。そのうちに、
「すごすぎる~。」
になった。なんにもない草原に見えるのは地平線だけなのだから、本当にすごすぎる。Dscf3026 僕もいっしょに、
「すげぇ。」
を連発しながら、写真と撮りまくった。でも、どの写真も同じようなもの。道と地平線と2台のバイクしか視界にはないのだから。
 再びバイクに跨がり、地平線に向かって走った。何㎞も続く一直線の道。右に見えていた地平線がオホーツク海に変わった。オホーツク海のすぐ脇を僕たちは地平線に向かって走っている。それだけでもすごすぎることをしているのだ。
 右側の景色が再びオホーツクから草原になった辺りでクランク状に曲がる所がある。その角に、エゾシカの群れがいた。10頭以上はいるだろう。一瞬、バイクを止めて写真を撮ろうと思ったが、あまりの近さに襲われはしないかと思い、エゾシカの群れを見ながら通過した。
 エサヌカ線から国道に戻ると、猿仏村の市街地に入る。時計は11時30分を指していた。道の駅「さるふつ公園」でホタテづくしの昼食にしようと考えていたが、お昼を食べるには少し早い。
 左手に、村営牧場が見えてきた。見渡す限りの牧場で、世の中にはこんなにたくさん牛がいたのかと思えるほど、牛たちが輪になっているように見える集団がいくつもいくつも見える。ここでも、ヘルメットの中で「すげぇ」と声が出る。道の駅通過を手で妻に伝え、そのままR238を走り続けた。走りながら、
「お昼は最北端の食堂の最北端ラーメンで決まりだな。」
と、つぶやいていた。これも、去年と同じだ。ただ、日数が違う。去年は1週間の旅だったが、今年は今日1日だけの限定ツーリングだ。
 宗谷岬に近づくにつれて、何か特別に込み上げてくるものを感じていた。20数年前、初めてこの道を走った時とよく似た感情だ。宗谷の手前で上り坂を駆け上る時、もこもことした独特の地形の宗谷丘陵が見える。初めてその景色を目にした時、「この世の景色とは思えない」とツーリングレポートに書き記した記憶がよみがえってきた。去年は丘陵の中を走っているのに、まるで初めて目にした時と同じような気持ちになっている。途中のパーキングで、何度も見ている宗谷丘陵を改めてながめた。小雨の降りしきる丘陵は、白い景色になっていた。
 宗谷岬まであと数㎞。昨日の昼には名古屋にいたのに、今まさに最北端の地にさしかかろうとしている。そう思うから、今日がとびっきりのスペシャルな日に思えるのだろう。
 ついに、最北端の地にたどり着いた。小雨は本降りになり、風も強まってきた。いつもはDscf3029 行列ができている最北端の碑も、今日は誰もいない。初めて碑の前で写真を撮った。カッパ姿で傘をさしてピースサイン。いい写真ではないが、僕にとっては特別な写真だ。
 強風で傘が壊れ、すっかりずぶ濡れになって最北端の碑から戻り、大急ぎでどこかで雨宿りしなくてはと思っていたところへ、1人のチャリダーがやってきた。
「すみません。碑の前にチャリを運ぶから、碑の前で写真を撮ってくれませんか。」
 ゲッと思ったが、心とは裏腹にニコッとして、
「いいですよ。」
 ますますずぶ濡れになって、碑の前でシャッターを切ってあげた。
 僕たちはすぐに駐車場を出て、道路を横切り、小走りで最北端の食堂に向かった。べたんこのレインスーツを脱いでも、中のTシャツもジーンズも濡れている。ブーツの中は水がチャプチャプしているくらいに感じる。なんとも気持ちの悪いものだが、少しもイヤではない。
 お昼はもちろん最北端ラーメン。1300円でホタテ、エビ、タコ、イカ、カニ、サザエと盛Dscf3032 りだくさんの具がてんこ盛りになっている。サザエの苦手な妻は、ホタテみそラーメンだ。やっぱりうまい。海のいろんな味がスープに溶け込んでいる。そして、となりの店では去年とは違う柄の最北端宗谷岬Tシャツを買った。妻にないしょで「宗谷岬どら焼き」もこっそり買い、あとでびっくりさせようと思った。
 そんなこんなで13時45分になっていた。雨の中を日本海側を目指して宗谷岬を後にした。
 稚内市街地から道道106に入った。丘を越えると、大きく広がる海が見えた。坂を下ればオロロンラインだ。
 雨はしだいに小雨になり、坂を下りた時にはやみ、薄日も射すほどになってきた。西の空には青空も見え隠れするくらいに天気は回復してきた。それでも、向かう先の南の空はどんよりと曇っている。路面がウェットから徐々にドライになってきたものの僕たちはレインスーツを着たまま走ることにした。時期外れのオロロンラインはほとんどクルマもバイクも走っていない。左はサロベツ原野、右は日本海、あとはただただ草原だけの景色が続く。時々すれ違うラDscf3037 イダーとは大きく手を振る大袈裟なピースサインを交わす。そこが、ピースサイン連発のお盆休みとは大きく異なる。それが延々と50㎞くらい続く。まさしく北海道の道だ。N字を模した北緯45度のモニュメントを過ぎた辺りで、道道972へと左折した。サロベツ原野の南端辺りを横切る道だ。今までに走ったことのない道だ。沼を跨ぐ小さな橋を渡ると、北側は沼になった草原が広がっている。サロベツ原野を間近に見ていることになる。そして南側は牧場と牧草地。絵になる風景だ。
 ビジターセンターで休憩をとった。道路の向かい側に、骨組みだけの高い展望台がある。センターの建物の2階も展望室になっていた。1階でサロベツ原野の動植物の写真などの展示物を見て、2階に上がった。2階だからそれほど高くないが、原野が低地だから十分見渡せる。無料の望遠鏡を覗くと、遊歩道が見えた。いつかゆっくり訪れ、原野の湿原の中を歩いてみようと思った。
 外に出て、バイクの横のブロックに腰を下ろすと、妻の、「えっ、なにっ、それっ」という反応を期待しておもむろに「宗谷岬どら焼き」をタンクバッグから取り出した。
「それ、袋の中に入ってるの、見えてたよ。」
 2人でペットボトルのお茶を口にしながら「宗谷岬どら焼き」を頬張っDscf3038 た。
「来て、よかったね。」
「赤のVTR、おしゃれでいいなあ。」
 いつもの妻より、よくしゃべる。思いっきり北海道を走れるのは今日1日だけしかないけれど、それでも十分満足できる。ぼくも、今回の強行ツーリングを決行して本当によかったと思っている。妻はVTRがよほど気に入ったらしい。たぶん、北海道を満喫しているからだと思う。家に帰って愛車CB400SBに乗れば、きっと「やっぱりCBの方がいい」ということになると思う。軽いこと以外は、すべての性能でBCの方が優れているのだから。僕も次は中型のニンジャでいいと思えていたが、帰ったらきっと「やっぱりダエグの方がいい」と思うだろう。
 妻とバイクの話をしているうちに、16時近くになっていた。高くて怖そうな展望台に登るのはパスして、宿のある美深に向かうことにした。
 R40も中川までは初めて走る道だ。この道も北海道を十分に感じながら走ることができる。幹線国道とは思えないくらい交通量は少なく、景色も見渡す限りの草原、牧場、牧草地、時々白い花が一面に咲いているソバ畑。こうして、北海道を走っていることの幸せを感じ続けていた。中川を過ぎれば、天塩川に沿ったワインディングロード。小さなコーナーが連続する林の中の道になった。雨は上がっても、路面はウェット。慎重にコーナーをクリアしながら走る。ミラーに映る妻のライディングは、とても慣れないバイクを操っているようには見えなかった。妻の言う「乗りやすいバイク」が、妻のフォームに表れていた。
 すでにサロベツのビジターセンターから80㎞以上走り続けている。音威子府のセイコーマートでコーヒーブレーク。
 音威子府から「びふか温泉」までは近い。R40をほんの10数㎞ほど走り、17時30分に宿に着いた。
 さすがに1日で300㎞以上走るのは中年にはきつい。レインスーツを脱いで部屋に入るDscf3039 とすぐにつるっつるの温泉に入り、雨で冷えた体を温めた。冷えたと言っても、この日の気温は20℃から25℃という快適な温度だ。これで天気が良ければバッチリだが、雨が降っていても北海道は楽しい。温かいお湯が心地よい。
 チャンチャン焼きのおかずでおいしい晩ご飯を食べ、寝る前にもう一度温泉に浸かり、僕たちのスペシャルな日が終わった。
 明日の天気も雨。旭川までの100㎞ほどのツーリングを楽しもうと思った。

○本日の走行     322㎞
○本日のピースサイン  27発

<8月25日>
 「あれっ、雨が降ってない。晴れ間も見える。」
 朝食をいただき、チェックアウトをすませて外に出た。初めてレインスーツを着ずにバイクDscf3043 に跨がった。
 まずは、お土産を買うために、宿泊した「びふか温泉」と同じ敷地内にある道の駅「びふか」に行ってみた。僕と妻の両方の両親へのお土産、職場の仲間へのお土産などを買い込み、宅配で送った。その多くは「氷点下41℃」というお菓子だ。そして、「びふか」に来たら羊乳アイスは欠かせない。暑くはないので、1個のアイスを2人で食べた。牛の乳とはひと味違うおいしさだ。濃い味だがあっさりしている。うまく言い表せないがおいしい。
 まだ10時前なので、朱鞠内湖から幌加内を経由して旭川に戻ろうとも思ったが、万が一飛行機に乗り遅れたら大変なことになる。明日は仕事なのだ。空港に早めに着いた方が安Dscf3044 心と思い、往路と同じように一直線で旭川まで走ることにした。
 青空のもと、R40を南に走り、名寄バイパスを快走し、名寄から再びR40に入って士別市に入った。やっぱり天気のいい日の北海道はいい。そう思っていた矢先、士別市の市街地あたりで雲行きが怪しくなり、市街地を抜けたところでザアッと雨が降り出した。
「やっぱり雨か。」
 道の端でレインスーツを取り出しながら、
「とうとう3日ともカッパを着ることになっちゃったね。」
と言いながら、慣れた手つきでレインスーツを着た。
 士別剣淵ICから道央道に入り、北海道の空気をかみしめながら雨の高速をひたすら走った。
 比布で雨は上がり、最後の休憩場所の比布大雪PAでは青空が見え隠れしていた。缶コーヒーを飲みながら、レインスーツを脱ごうかどうか迷った。空は明るくなってきたが、これまでのツーリングで学んだことの一つに「迷ったら着る」という判断がある。レインスーツを着たまま、旭川北ICを目指した。
 ETCが無いと本当に不便なものだ。一旦停まって、サイドスタンドを出し、ヘルメットのバイザーを上げ、べったり濡れた右手のグローブを外し、タンクバッグのポケットから湿ったチケットとカードを出して手渡す。処理が終わったら、また一連の動作を逆の順で行う。ツーリングライダーにとって、ETCは必需品だということを身をもって実感した。
 旭川市街に向かうR39は渋滞気味だった。ENEOSのスタンドで燃料を満タンにし、レンタルバイク店の「ジョンブル」に向かった。
 「ジョンブル」に着いたのは11時30分。返却の手続きを終え、しばらく店の人と雨の宗Dscf3048 谷岬ツーリングの話をした。そして、そろそろ帰る時間になってきたので、タクシーをお願いすると、
「うちのお客さんに運転手をやってる人がいるから。」
と言って、すぐに呼んでくださった。
 旭川駅に向かうタクシーの中では、運転手さんから北海道の楽しい話をいっぱい聞かせてもらった。なかでも、北海道のすべての岬を制覇した話など、うらやましい限りだ。6月に「ジョンブル」でハーレーの新車を買ったとのことで、まだまだ行きたい所がいっぱいあると言われていた。
「働いているうちに欲しい物を買い、やりたいことをやっておかないと。」
 僕も同じことを思っている。
 タクシーを旭川駅の空港行きバス停前で停めてもらった。運転手さんの、
「また、ぜひ来てください。」
の言葉に見送られ、バスの時刻表に目をやった。
 13時発のバスがある。今の時刻は12時20分。バス停のすぐ先に凝った店構えのラーDscf3050 メン屋が見えた。旭川と言えばラーメンでしょう。
 ラーメン屋「山頭火」で食べたのは、塩ラーメン。塩味なのになぜかちょっとくどい。ちょっとくどいが、うまい。あっという間に食べ終わった。すると、店の外に人が並んでいるのが見えた。のんびりしていては申し訳ないので、すDscf3051 ぐに店を出て、店の外で一服。これで北海道から離れるのだと思うと寂しさが込み上げてきた。
 旭川空港に向かうバスの車窓から見える一面の畑。来年も、いくら仕事が忙しくてもこの風景の道をバイクで走ろうと心の中で誓った。
 空港に着き、ターミナルビルから滑走路を眺めながらコーヒーを飲んだ。2人で話すのは来年のコースのことばかりだった。来年も2泊3日しか夏休みが取れないかもしれない。そうなったら、今年と同じレンタルのニンジャとVTRだ。また最北端を目指そうか、それとも東に行って美幌峠とオンネトー、新千歳を拠点にニセコと積丹。明日から仕事だというのに、のんきなものだ。このお気楽さが、僕たちのパワーの源になっているのだ。
 中部空港行きのANAは、定刻を10分遅れて15時30分に出発した。機内は満席だった。
 なぜか往路より時間がかかり、中部空港に着いたのは18時30分だった。バイク用のバッグにヘルメットを手に、駐車場まで歩く。どういうわけか、それほど暑くない。名古屋の地獄のような気温を覚悟していただけに、意外だった。
 帰りのクルマの中で、今週末は三河高原から南信州か岐阜東濃あたりにプチ・ツーリングに出かけようと決めた。今度は、愛車のダエグとスーパーボルドールで。

○本日の走行     100㎞
○本日のピースサイン   6発

<エピローグ>
 こんなに中身の濃い3日間になるとは思ってもみなかったというのが一番の感想だ。何度も訪れている宗谷岬。去年も走った農道エサヌカ線やオロロンライン。それなのに、初めてその風景を見た時とよく似た特別な感動を感じていた。旭川でバイクを借りて雨の道央道を走っている時に感じた「北海道を走っているだけで幸せ」という思い。それは、マンネリになりつつあった毎年恒例のツーリングが、実は僕たち夫婦にとってマンネリではなく特別(スペシャル)なことだったことにあらためて気づかされた瞬間だった。
 「思いついたらやってみる。」
 これこそ、僕のポリシー。今ひとつ強気になれない僕は、そう思いながらも臆病風に吹かれて「やってみる」に至らないことが多い。しかし、今回は違った。時間をかけられないのなら、旅の中身を濃くすればいい。やってみて初めて分かった感動のツーリングになった。

○日程   2014年8月23日~25日
○使用車種  カワサキNINJA400R
       ホンダVTR250
○総走行距離          100㎞
○ピースサインの総数        6発
○費用(2人分)   約230,000円
      内訳  名古屋・旭川往復    約130,000Dscf3025
       レンタルバイク2台      約50,000円
       宿泊費            約30,000円
       高速道路(含;豊田・常滑) 約4,000円
              食費                       約6,000円
              その他(バス・タクシー等)約10,000円

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2013.9 ただいまツーリングレポート執筆中

2013-09-02 23:25:56 | いろいろな旅の部屋

 8月23日から25日までの2泊3日で北海道宗谷岬まで飛行機とレンタルバイクで行ってみようというとんでもない計画の弾丸ツーリングも、無事に終えることができました。まともに走ったのは24日のたった1日だけという短期間の北海道ツーリングだっただけに、地平線を見て走ったり、最北端の地に立ったり、エゾシカの群れに出会ったり、その一つ一つが大きなDscf3029_3 感動になりました。本当に中身の濃いツーリングになったように思います。
 その感動の記録をツーリングレポートとして綴り、ブログのカテゴリーに加えようと書き始めたのですが、遠距離通勤で毎日3時間という貴重な時間を運転に費やしているため、なかなか書く時間がとれないのです。さっさと書いて、さっとブログに載せようと思っていましたが、遅々として進みません。
 初日の23日は、豊田の自宅からクルマで中部空港へ、中部空港からANAで旭川空港、旭川空港からバスとタクシーでバイクショップへ、レンタル・バイクで旭川から美深までという行程でした。
 メインとなる2日目は、美深からクッチャロ湖へ、クッチャロ湖から地平線の見える農道エサヌカ線を経て猿払へ、そのままオホーツク海に沿って宗谷岬へ、宗谷岬からオロロンラインを経由してサロベツ原野のビジターセンターへ、サロベツから美深に戻って連泊というコーDscf3037 スでした。
 3日目最終日の25日は、美深から旭川へ、バイクを返して旭川空港へ、旭川空港からANAで中部空港へ、そして中部空港からクルマで豊田に帰るという短期決戦の旅でした。あまり天気には恵まれませんでしたが、それもいい思い出になっています。
 今、寝る前の数十分、ツーリングレポートを書きながら感動の場面を反芻しています。完成したら、ブログに掲載する予定です。

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