「鉄ちゃん」第5弾は福井県えちぜん鉄道三国芦原線。これまでの4回はいつも一人旅だったが、今回は妻といっしょに二人旅。僕たちは普段からよくいっしょにBSのローカル線の旅番組を見ている。そこに僕が去年プチ「鉄ちゃん」デビューしたものだから、とうとう妻も「私もやりたい」と言い出した。こういうことは今までにもよくあった。極めつけはバイクだ。僕がバイクに乗っていると「一人だけおもしろそうなことをしてズルイ。私も免許取る!」で、二人の毎年恒例の北海道ツーリングが始まったのだった。
こうして、初めてのローカル線途中下車二人旅がスタートした。
前日の3月27日(金)に2人とも有休を取り、クルマで芦原温泉に向かった。一人旅の時は安いビジネスホテルだが、この日は特別だ。ちょっとリッチに芦原温泉政竜閣に泊まってカニ三昧に温泉三昧。実は3月27日は僕の誕生日。そして妻の「鉄子」デビューの前夜祭。おいしい料理と気持ちのいいお湯で満足、満足。
<3月28日>
芦原温泉で前泊した僕たちは、えちぜん鉄道「あわら湯のまち」駅近くの市営駐車場にクルマを置かせてもらい、途中下車の旅第5弾のスタートだ。妻も「鉄子」デビューにわくわくすると言っている。
土日だけの一日フリー切符(一人800円)を買い、9時19分発の福井行きの電車に乗った。結構乗客が多くて2人ともびっくり。薄茶色の田んぼが広がるのどかな風景の中をえち鉄は走る。
終点で始発駅の福井駅の一つ手前の「新福井」で下車した。最初の目的地は「養浩館庭園」だ。だいたいの場所はあらかじめ地図でチェックしておいたが、多少の不安はあった。妻は、
「この道で大丈夫?」
と言うが、
「たぶん・・・。」
と言いながら広い通りを北に向かって歩いた。少し不安が増したところで交番を発見した。道路を渡って交番に入ろうとしたら誰もいない。でも大丈夫。すぐ脇にちょっとした周辺地図があった。そこにはちゃんとすぐ近くに「養浩館庭園」が記されていた。
「そこを入ればすぐじゃん。」
古風な門をくぐり、庭園見学だけなら210円、JAF会員なら160円ということで320円を払って庭園に入った。
見事なものだ。池の水が川のせせらぎのように流れている。江戸時代の福井藩主の別邸の庭だったそうで、どの位置から見ても日本的な美が感じられた。
続いて、えち鉄の始発駅「福井」に向かった。
福井駅で電車を降りて最初に目に付いたのがホームのベンチに足を組んで座る恐竜。おしゃれな服を着て、電車を待っているポーズ。さすが恐竜の県・福井。
まずは南に向かって「北の庄城址」へと歩いた。戦国武将柴田勝家の居城跡で、今は柴田神社として勝家が祀られていた。お堀の跡などもあった。
次に、少し北側の繁華街に出て「百年時計」を見に行った。「百年時計」は、商店街の交差点の歩道にどっかりと据えられていた。高さが5mくらいある大きな時計で、その胴体部分に100年分の目盛りが刻まれていた。かなりカラフルでよく目立つ。2001年の大晦日と元旦の間の21世紀の幕開けとともに始動したそうだ。なんだか、そのコンセプトがおもしろい。と言うことは、ここで始動のカウントダウンをした人は、ちょうど百年後の目盛りが最後の所を指す時には誰もいない・・・ということになる。いるとしたら抱かれていた赤ちゃんくらいなものだ。この「百年時計」もおもしろかったが、気になったのは目の前を走る福井鉄道の路面電車だ。新しいデザインの車両で、今の町並みによくマッチしていた。
その次に向かったのが、足羽川緑地の桜並木。大きな橋を渡ったが、そこにも福井鉄道の路面電車が。プチ鉄ちゃん、プチ鉄子になったのだから、いつか乗ってみなくてはと思った。
川沿いの遊歩道の桜の木にはまだ花は咲いてなかった。それでも、どの枝にもたくさんの大きなつぼみが膨らんでいて、北陸にも春はもうすぐそこまで来ていることがうかがわれた。のんびりと散歩するにはすごくいい道だった。
福井駅に戻り、再び鉄ちゃん・鉄子になった。
三国港行きの電車に乗り、13駅先の「西春江」駅で途中下車した。ちょうどお昼時で、以前「ローカル線聞き込み途中下車の旅」でやっていたソースかつ丼の店に行ってみようと思ったからだ。確か、県道沿いにあると記憶していたので、ひたすら県道に沿って歩いた。ところが、歩いても歩いてもソースかつ丼の店は見当たらない。ソースかつ丼の店どころか、食事のできる店がない。だんだん足が棒のようになり、
「どこでもいいから、店があったらそこにしよう。」
ということになった。
やっと見つけたのが「梵亭」。普通の民家っぽい外観の店で、看板がなければ気づかないかもしれない。ところが、入ってみたらなかなかおしゃれでいい感じの店だった。「足、いてえ~」と思いながら時計を見ると、駅から20分ほどしか経っていない。やっぱり若い頃とは違う。
注文したふわふわ卵のオムライスもコクのあるデミグラスソースとにょろ~んとした卵が絶妙の食感で、すごくおいしかった。大きめの器のせいか見た目はちょっと少ないかなあと思ったが、食べ終わったらおなかいっぱいになっていた。妻が、
「ねえねえ、これで名所登録5つ目。あと5つで目標達成。」
と、BSジャパンの旅番組「ローカル線聞き込み途中下車の旅」をまねて言った。思わず、吹き出しそうになってしまった。
次の電車の時刻は14時04分。その時刻に合わせ、13時35分に店を出て、再び「西春江」駅を目指した。県道から駅に向かう交差点の角に「八幡神社」があった。なかなか立派な神社で、
「これで、名所登録6つ目。」
おいおい、これも入れるんかい。
「西春江」の次は「下兵庫」で下車した。ここには、歩いて2分の所に「淵竜の池」があるとのこと。駅を出ると公民館などの案内板に合わせて「淵竜の池」の案内表示もあり、分かりやすかった。2分ではたどり着けなかったが、すぐに分かった。
「なに、これ、小さな池だなあ。」
池の周りは自然の土ではなくコンクリートで固めてある。池の真ん中に碑のようなものが建てられていて、なんとなくいわれのある池っぽさは感じられる。この池は、平安時代の神社にあった池で、竜が棲んでいたと伝えられて、恐れられていたとのことだが、そう言われればなんだか背筋に冷たいものを感じるような気がした。霊感が強いわけではないが、やっぱりこの池はただの池ではない。
駅の戻る途中に大きな鳥居があったので、ちょっと寄ってみることにした。
田畑の広がる坂井平野だが、そこだけがうっそうとした森になっていて、森の中の境内も広い。きっとここも地元の人にとっては名所なのだろうと思う。
「下兵庫」の次は、前泊した芦原を通り過ぎ、終着駅の一つ手前の「三国」駅で下車することにした。北前船で栄えた町なので、名所もいくつかありそうだ。
20分ほど電車に揺られ、「三国」で下りると、そこだけは田畑が広がっていない。歴史が感じられる町並みが見える。
三国は、九頭竜川河口沿いの昔北前船で栄えた町だ。駅前通りを南に向かって歩くと、すぐに立派な神社があった。入ってみるとすぐ本殿。遠くに鳥居が見えたので、どうやら僕たちは裏から入ってしまったようだ。「氷川神社」という水運の町を守る神様が祀られているようだった。二人でお参りをし、長い境内を歩いて鳥居をくぐった。再び駅前から伸びる広い通りに出て、九頭竜川河口を目指した。
気になっていたのが「三国湊座」だが、昔の面影が残る古い通りを歩いてもなかなか見当たらなかった。きょろきょろしながら歩いていると、「三国」の文字の入った法被を着たおじさんが、
「ここは見て行った方がいいよ。」
と言って、目の前の「旧岸名家」に案内してくれた。地元のボランティア・ガイドさんで、そのまま旧家に入って説明してくださった。長い土間が通路となっていて、土間と仕切りのない商談の部屋や水場などがあり、当時の大商人の家の様子がとてもよく分かった。
三国駅周辺で最後に訪れたのが三国名物「酒まんじゅう」の老舗「にしさか」だ。三国には酒まんじゅうの店が何軒かある。ここ「にしさか」は「ローカル線聞き込み途中下車の旅」で紹介されていた店で、まんじゅうに「長」の文字が刻印されていたのが印象に残っていた。酒まんじゅうだけかと思ったら、店頭には数種類のどらやきなどの和菓子も並んでいた。もちろん、迷うことなく酒まんじゅうを2つ買い、店内で食べた。意外なことにパリッとした食感に驚いてしまった。ちょうど「長」の文字の部分だけパリッとしていて、それ以外はほどよい柔らかさ。お酒がまったくダメな僕も、お酒の風味を楽しむことができる逸品で、めったに食べ物系のお土産を買わない僕たちも両親と自分たちのために5個入りパックを一箱買った。
酒まんじゅうを食べている間に完売となり、僕たちが店を出る時に入ってきたお客さんは気の毒にも「にしさか」の酒まんじゅうを口にすることはできなかった。ぎりぎりセーフだったのだ。
駅に戻り、えち鉄三国芦原線終着駅の「三国港」に向かって電車に乗った。駅と駅の間が短いのか、あっという間に「三国港」駅に着いた。パワーが残っていれば歩いて行ける距離かもしれない。それでも、ローカル鉄道に乗ることが旅の目的なので、いくら近くても僕たちは電車には乗る。
「三国港」駅に着いてまず見に行ったのが、レールが終わっている場所だ。これまでの一人旅ではそうは思わなかったが、今回なぜか「終着」の証しを見てみたいと思った。
ホームを過ぎて数10mの所でレールは無くなっていた。旅の終着駅にたどり着いたことを実感した。
ここでの周辺探索はただ一つ、「三国温泉ゆあぽーと」。芦原温泉で前泊したとは言え、やっぱり旅に温泉は付きものだと思う。鉄ちゃんデビューの銚子電鉄の時はあまりにも遠すぎて温泉に入っているような時間は無かったが、箱根登山鉄道では強羅で、JR御殿場線では足柄、JR青梅線では奥多摩、というように旅の疲れを癒やすひとときを作ってきた。
「三国温泉ゆあぽーと」は、九頭竜川の河口にあり温泉から日本海が一望できる絶景のロケーションだった。海と川の間の美しい景色を眺めながらのんびりとお湯に浸かる。たくさん歩いた後だから、疲れがすうっと抜けていく感じがした。
16時39分、今回最後のえちぜん鉄道の電車に乗った。これで終わりかと思うと、やっぱりさびしくなる。
17時少し前にクルマを止めておいた「あわら湯のまち」駅に着き、芦原を後にした。
こうして、初めてのローカル線途中下車二人旅がスタートした。
前日の3月27日(金)に2人とも有休を取り、クルマで芦原温泉に向かった。一人旅の時は安いビジネスホテルだが、この日は特別だ。ちょっとリッチに芦原温泉政竜閣に泊まってカニ三昧に温泉三昧。実は3月27日は僕の誕生日。そして妻の「鉄子」デビューの前夜祭。おいしい料理と気持ちのいいお湯で満足、満足。
<3月28日>
芦原温泉で前泊した僕たちは、えちぜん鉄道「あわら湯のまち」駅近くの市営駐車場にクルマを置かせてもらい、途中下車の旅第5弾のスタートだ。妻も「鉄子」デビューにわくわくすると言っている。
土日だけの一日フリー切符(一人800円)を買い、9時19分発の福井行きの電車に乗った。結構乗客が多くて2人ともびっくり。薄茶色の田んぼが広がるのどかな風景の中をえち鉄は走る。
終点で始発駅の福井駅の一つ手前の「新福井」で下車した。最初の目的地は「養浩館庭園」だ。だいたいの場所はあらかじめ地図でチェックしておいたが、多少の不安はあった。妻は、
「この道で大丈夫?」
と言うが、
「たぶん・・・。」
と言いながら広い通りを北に向かって歩いた。少し不安が増したところで交番を発見した。道路を渡って交番に入ろうとしたら誰もいない。でも大丈夫。すぐ脇にちょっとした周辺地図があった。そこにはちゃんとすぐ近くに「養浩館庭園」が記されていた。
「そこを入ればすぐじゃん。」
古風な門をくぐり、庭園見学だけなら210円、JAF会員なら160円ということで320円を払って庭園に入った。
見事なものだ。池の水が川のせせらぎのように流れている。江戸時代の福井藩主の別邸の庭だったそうで、どの位置から見ても日本的な美が感じられた。
続いて、えち鉄の始発駅「福井」に向かった。
福井駅で電車を降りて最初に目に付いたのがホームのベンチに足を組んで座る恐竜。おしゃれな服を着て、電車を待っているポーズ。さすが恐竜の県・福井。
まずは南に向かって「北の庄城址」へと歩いた。戦国武将柴田勝家の居城跡で、今は柴田神社として勝家が祀られていた。お堀の跡などもあった。
次に、少し北側の繁華街に出て「百年時計」を見に行った。「百年時計」は、商店街の交差点の歩道にどっかりと据えられていた。高さが5mくらいある大きな時計で、その胴体部分に100年分の目盛りが刻まれていた。かなりカラフルでよく目立つ。2001年の大晦日と元旦の間の21世紀の幕開けとともに始動したそうだ。なんだか、そのコンセプトがおもしろい。と言うことは、ここで始動のカウントダウンをした人は、ちょうど百年後の目盛りが最後の所を指す時には誰もいない・・・ということになる。いるとしたら抱かれていた赤ちゃんくらいなものだ。この「百年時計」もおもしろかったが、気になったのは目の前を走る福井鉄道の路面電車だ。新しいデザインの車両で、今の町並みによくマッチしていた。
その次に向かったのが、足羽川緑地の桜並木。大きな橋を渡ったが、そこにも福井鉄道の路面電車が。プチ鉄ちゃん、プチ鉄子になったのだから、いつか乗ってみなくてはと思った。
川沿いの遊歩道の桜の木にはまだ花は咲いてなかった。それでも、どの枝にもたくさんの大きなつぼみが膨らんでいて、北陸にも春はもうすぐそこまで来ていることがうかがわれた。のんびりと散歩するにはすごくいい道だった。
福井駅に戻り、再び鉄ちゃん・鉄子になった。
三国港行きの電車に乗り、13駅先の「西春江」駅で途中下車した。ちょうどお昼時で、以前「ローカル線聞き込み途中下車の旅」でやっていたソースかつ丼の店に行ってみようと思ったからだ。確か、県道沿いにあると記憶していたので、ひたすら県道に沿って歩いた。ところが、歩いても歩いてもソースかつ丼の店は見当たらない。ソースかつ丼の店どころか、食事のできる店がない。だんだん足が棒のようになり、
「どこでもいいから、店があったらそこにしよう。」
ということになった。
やっと見つけたのが「梵亭」。普通の民家っぽい外観の店で、看板がなければ気づかないかもしれない。ところが、入ってみたらなかなかおしゃれでいい感じの店だった。「足、いてえ~」と思いながら時計を見ると、駅から20分ほどしか経っていない。やっぱり若い頃とは違う。
注文したふわふわ卵のオムライスもコクのあるデミグラスソースとにょろ~んとした卵が絶妙の食感で、すごくおいしかった。大きめの器のせいか見た目はちょっと少ないかなあと思ったが、食べ終わったらおなかいっぱいになっていた。妻が、
「ねえねえ、これで名所登録5つ目。あと5つで目標達成。」
と、BSジャパンの旅番組「ローカル線聞き込み途中下車の旅」をまねて言った。思わず、吹き出しそうになってしまった。
次の電車の時刻は14時04分。その時刻に合わせ、13時35分に店を出て、再び「西春江」駅を目指した。県道から駅に向かう交差点の角に「八幡神社」があった。なかなか立派な神社で、
「これで、名所登録6つ目。」
おいおい、これも入れるんかい。
「西春江」の次は「下兵庫」で下車した。ここには、歩いて2分の所に「淵竜の池」があるとのこと。駅を出ると公民館などの案内板に合わせて「淵竜の池」の案内表示もあり、分かりやすかった。2分ではたどり着けなかったが、すぐに分かった。
「なに、これ、小さな池だなあ。」
池の周りは自然の土ではなくコンクリートで固めてある。池の真ん中に碑のようなものが建てられていて、なんとなくいわれのある池っぽさは感じられる。この池は、平安時代の神社にあった池で、竜が棲んでいたと伝えられて、恐れられていたとのことだが、そう言われればなんだか背筋に冷たいものを感じるような気がした。霊感が強いわけではないが、やっぱりこの池はただの池ではない。
駅の戻る途中に大きな鳥居があったので、ちょっと寄ってみることにした。
田畑の広がる坂井平野だが、そこだけがうっそうとした森になっていて、森の中の境内も広い。きっとここも地元の人にとっては名所なのだろうと思う。
「下兵庫」の次は、前泊した芦原を通り過ぎ、終着駅の一つ手前の「三国」駅で下車することにした。北前船で栄えた町なので、名所もいくつかありそうだ。
20分ほど電車に揺られ、「三国」で下りると、そこだけは田畑が広がっていない。歴史が感じられる町並みが見える。
三国は、九頭竜川河口沿いの昔北前船で栄えた町だ。駅前通りを南に向かって歩くと、すぐに立派な神社があった。入ってみるとすぐ本殿。遠くに鳥居が見えたので、どうやら僕たちは裏から入ってしまったようだ。「氷川神社」という水運の町を守る神様が祀られているようだった。二人でお参りをし、長い境内を歩いて鳥居をくぐった。再び駅前から伸びる広い通りに出て、九頭竜川河口を目指した。
気になっていたのが「三国湊座」だが、昔の面影が残る古い通りを歩いてもなかなか見当たらなかった。きょろきょろしながら歩いていると、「三国」の文字の入った法被を着たおじさんが、
「ここは見て行った方がいいよ。」
と言って、目の前の「旧岸名家」に案内してくれた。地元のボランティア・ガイドさんで、そのまま旧家に入って説明してくださった。長い土間が通路となっていて、土間と仕切りのない商談の部屋や水場などがあり、当時の大商人の家の様子がとてもよく分かった。
三国駅周辺で最後に訪れたのが三国名物「酒まんじゅう」の老舗「にしさか」だ。三国には酒まんじゅうの店が何軒かある。ここ「にしさか」は「ローカル線聞き込み途中下車の旅」で紹介されていた店で、まんじゅうに「長」の文字が刻印されていたのが印象に残っていた。酒まんじゅうだけかと思ったら、店頭には数種類のどらやきなどの和菓子も並んでいた。もちろん、迷うことなく酒まんじゅうを2つ買い、店内で食べた。意外なことにパリッとした食感に驚いてしまった。ちょうど「長」の文字の部分だけパリッとしていて、それ以外はほどよい柔らかさ。お酒がまったくダメな僕も、お酒の風味を楽しむことができる逸品で、めったに食べ物系のお土産を買わない僕たちも両親と自分たちのために5個入りパックを一箱買った。
酒まんじゅうを食べている間に完売となり、僕たちが店を出る時に入ってきたお客さんは気の毒にも「にしさか」の酒まんじゅうを口にすることはできなかった。ぎりぎりセーフだったのだ。
駅に戻り、えち鉄三国芦原線終着駅の「三国港」に向かって電車に乗った。駅と駅の間が短いのか、あっという間に「三国港」駅に着いた。パワーが残っていれば歩いて行ける距離かもしれない。それでも、ローカル鉄道に乗ることが旅の目的なので、いくら近くても僕たちは電車には乗る。
「三国港」駅に着いてまず見に行ったのが、レールが終わっている場所だ。これまでの一人旅ではそうは思わなかったが、今回なぜか「終着」の証しを見てみたいと思った。
ホームを過ぎて数10mの所でレールは無くなっていた。旅の終着駅にたどり着いたことを実感した。
ここでの周辺探索はただ一つ、「三国温泉ゆあぽーと」。芦原温泉で前泊したとは言え、やっぱり旅に温泉は付きものだと思う。鉄ちゃんデビューの銚子電鉄の時はあまりにも遠すぎて温泉に入っているような時間は無かったが、箱根登山鉄道では強羅で、JR御殿場線では足柄、JR青梅線では奥多摩、というように旅の疲れを癒やすひとときを作ってきた。
「三国温泉ゆあぽーと」は、九頭竜川の河口にあり温泉から日本海が一望できる絶景のロケーションだった。海と川の間の美しい景色を眺めながらのんびりとお湯に浸かる。たくさん歩いた後だから、疲れがすうっと抜けていく感じがした。
16時39分、今回最後のえちぜん鉄道の電車に乗った。これで終わりかと思うと、やっぱりさびしくなる。
17時少し前にクルマを止めておいた「あわら湯のまち」駅に着き、芦原を後にした。