神奈川県南足柄市大雄町、箱根山・明神ケ岳の山麓に全国に4千余りの門流をもつ修行専門道場で曹洞宗寺院の「大雄山最乗寺」(道了尊)はある。応永元年(1394)了庵慧明が草創(開山)、東国における通幻派の拠点となる。開創以来600年の歴史を持つ関東の最大霊場である。本尊は釈迦牟尼仏。当寺にはこの地で土木工事に尽力した了庵法嗣の「妙覚道了」を祀っている。境内山林は130町歩(東京ドーム27.5個分)、老杉茂り霊気は満山に漲り、堂塔は30余棟に及ぶ大寺院の威容である。朱色の門「仁王門」、参道3kmには樹齢500年超えの杉並木、「三門」から「瑠璃門」=「碧落門」まで苔むした参道・石段が続く。大雄川の潺の音、滝の音を耳にし辿り着いた「瑠璃門」を抜けると最乗寺の堂塔群が建ち並ぶ本堂境内である。右側に総受付の「白雲閣」、正面に「書院」、その左に昭和を代表する仏教建築、本尊を祀る「本堂」、その左隣に総檜造りの「開山堂」、本堂左には根本道場の「僧堂」、開山堂の背後には当寺最古の方形層上円形木造二重の塔「多宝塔」が建ち並ぶ。滝きが流れ落ちる「不動堂」、唐獅子や竜の彫刻を施した「鐘楼」、「鐘鼓楼」、霊泉が湧出する「金剛水堂」などの堂塔の数々である。「結界門」を抜け石段を上ると妙覚道了大薩を祀る「御真殿」がある。その脇には当寺のシンボルの天狗が履くのであろうか大小のたくさんの「下駄」が奉納されている。一番大きいものは高さ2メートルほど、重さ3tある「赤い大下駄」である。その先には「天狗の像」がある。右方向に350段の石段を上ると十一面観世音菩薩を祀る「奥之院」がある。稲荷信仰では豊川稲荷と善宝寺(山形)とともに曹洞宗の三大祈祷所である。山内の各所に龍、像、唐獅子、さい、狛犬などの霊獣が祀る当寺は関東三十六不動霊場第2番札所である。まさしく山内全体が「最乗寺」であり、天狗伝説が息づく寺域には600年の歴史と自然が織りなす荘厳さの中に凛とした霊場の世界である。(2011)
奥の院
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