急に道が険しくなってきました。立ちはだかる障碍。
嬉しいいやな予感です。近代文学の予感である。
はい、「暗夜行路」きました。長すぎて何が書いてあるのか分かりません。右下方を見ると……
↓
志賀のプチブルっぷりとは対照的な
転落人生の専門家林芙美子登場。
近づいてみたが足場が悪い。後ろに転落しそうになりつつ斜にシャッターを切る。さすが林芙美子にとって最高最悪の思い出がつまった尾道。上に志賀、下に林という格差、滑り落ちそうな足場──意図的な「文学のこみち」のつくり、まことにお疲れ様です。
……「貴女お一人ですか・・・」事務員の人たちは、みすぼらしい私の姿をジロジロ注視ていた。「え、そうです。知人が酒屋をしていまして、新聞を見せてくれたんです。是非、乗せて頂きたいのですが・・・国では皆心配してますから。」「大阪からどちらです」「尾道です」・・・・・・ツルツルした富久娘のレッテルの裏に、私の東京の住所と姓名と年齢と、行き先を書いたのを渡してくれた。これは面白くなってきたものだ。何年ぶりに尾道へ行くことだろう。あああの海、尾の家、尾の人、お父さんやお母さんは、借金が山ほどあるんだから、どんなことがあっても尾道へは行かぬように、といっていたけれど、・・・・(「放浪記」)
ここらへんをちゃんと彫った方がいいと思うよ。
すると、上をロープウェイが通り過ぎていった。
ああ全世界はお父さんとお母さんでいっぱいなのだ。お父さんとお母さんの愛情が、唯一のものであるということを、私たちは生活にかまけて忘れておりました。白い前垂れをかけたまま、竹藪や、小川や洋館の横を通って、だらだらと丘を降りると、蒸気船のような工場の音がした。おお尾道の海。私は海近いような錯覚を起こして子供のように丘を駆け下りていった。・・・・・・・(「放浪記」)
危ないので駆け下りるのは止めた。
緒方洪庵……尾道の道が狭いと言っている。
更に転落人生だ……
巖谷小波「大屋根はみな寺にして風薫かおる」……だから風速を書けというとるのに。
昇り調子は信用できない。
あれ?今来た道を、もう一回行くの?騙されんぞ。
わたくしのひねくれた心
(つづく)