研究室で猛烈に雑用を片づけるわたくし……を照らすお日様
野上彌生子の「海神丸」が映画化されたとき、そこには「人間」という題名がつけられていた。どうもこの映画はあまりしっくりいかぬ。原作には明らかに人間の存在感があるのに、映画には案外ないのだ。映画では、漂流して飢餓に襲われた男女二人が同乗していた少年を撲殺するが、罪の意識かなにかで物語の最後に発狂、自殺してしまう。これが、なぜか「たぶん、それは現実にはない」と思わせてしまうのである。「人間」ではなく「ヒューマニズム」に引っぱられた映画だろう……
右は、ちょっと読んでみたくて、つい読んでしまったもの。これも、当世流行のグローバリズムの一種というやつか、──仏陀も「人間」でした、妻に浮気されて女嫌いになってしまいました、故に仏教には禁欲の掟が……という、まるで、新興宗教の教祖やヒーローの自我の起源をすべて彼の中学校時代のトラウマにもとめてしまうような