旧約聖書のエピソードを元に改作した短編物語集。
古代の話でもあり戦いや暴君の話が続くのですが、平和的な解決に導かれているものが目を引きます。征服された部族の出の娘が妃となって暴君を目覚めさせて平和主義者にし、被征服者たちの武力蜂起にも話し合いで応じ、民衆が反乱軍を取り囲んで追い返すという「エステル」が、その典型。平和路線とそれを支持する民衆という構図が感動的です。武力蜂起して王に迫って民衆に追い返されるのがかつて王の侵略を受けた被征服者というのが、ちょっと複雑な気持ちになりますが。
ところで、最初の「ノアの箱舟」。人間たちが神の怒りを買った理由が自然破壊で、「美しい森を荒らし、仕事中毒のビーバーみたいに木を伐りまくった。」(10頁)とされています。それなのに、ノアが「とにかくものすごく大きく、まるごと一個の世界と言ってよかった。」(12頁)くらい大きな箱舟を木で造って救われるのはなぜ?
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原題:THE HONEY AND THE FIRES : ANCIENT STORIES RETOLD FOR OUR TIMES
ロジャー・パルバース 訳:柴田元幸
集英社 2007年12月20日発行 (原書は2006年)
「すばる」2006年1月号~12月号等連載
古代の話でもあり戦いや暴君の話が続くのですが、平和的な解決に導かれているものが目を引きます。征服された部族の出の娘が妃となって暴君を目覚めさせて平和主義者にし、被征服者たちの武力蜂起にも話し合いで応じ、民衆が反乱軍を取り囲んで追い返すという「エステル」が、その典型。平和路線とそれを支持する民衆という構図が感動的です。武力蜂起して王に迫って民衆に追い返されるのがかつて王の侵略を受けた被征服者というのが、ちょっと複雑な気持ちになりますが。
ところで、最初の「ノアの箱舟」。人間たちが神の怒りを買った理由が自然破壊で、「美しい森を荒らし、仕事中毒のビーバーみたいに木を伐りまくった。」(10頁)とされています。それなのに、ノアが「とにかくものすごく大きく、まるごと一個の世界と言ってよかった。」(12頁)くらい大きな箱舟を木で造って救われるのはなぜ?
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原題:THE HONEY AND THE FIRES : ANCIENT STORIES RETOLD FOR OUR TIMES
ロジャー・パルバース 訳:柴田元幸
集英社 2007年12月20日発行 (原書は2006年)
「すばる」2006年1月号~12月号等連載